ある屋敷の選択ミス。
翌日、シーカレド邸でも私の家と同じような話題だったらしい。今日は朝から御一家そろって「皇太子様と会う時には粗相がないように!」と釘を刺していた。場面は変わって今はお嬢様の朝の支度中だ。何やら香水の匂いを変えるらしい。何の香水だったか⋯えっと⋯忘れた。
とにかく、朝からレディな香水の匂いが漂っている。化粧は薄めが良いらしい。お嬢様は元から顔が整っているから、とのこと。シーカレド邸はいつも朝から大忙しだ。
しかし私の仕事は変わらず掃除、洗濯だ。変わることといえば仕事量くらい。正直に言うともう少し面白いこと、非日常がほしい。 まあ簡単に言うと仕事内容に飽きてきたということだ。仕事に飽きるも何も無いとは思うがそれでも飽きるものは飽きる。仕方がない。
「せんぱーい!って、どうしてんですか?ぼーっとして。」
「ああ、後輩ちゃんか。否、何か仕事内容が飽きてきたなあ、と。」
「何言ってるんですか⋯っていうか私にはナゴミって名前があるんですよ!ちゃんと名前で読んでください!ここに何人の後輩がいると思ってるんですかー⋯」
「⋯でも後輩ちゃんは後輩ちゃんって感じだしねぇ。」
後輩ちゃんはナゴミちゃんという名前だ。周りが和む、ナゴミちゃん。私はそう考えている。この子ほど名前と性格が会う人はいないと思う。
「⋯もう、仕方ないですねえ。」
怒ってる姿もかわいいなあ。⋯何か変態みたいな考えだな。やめよう。私は断じて変態などではない。断じて。
「⋯まあ確かにこの仕事内容は空きますよねぇ⋯私達はもう何年もこの作業をしていますし。」
「だよねぇ⋯お給料貰ってるから文句は言えないけど。」
「あー⋯でも侍女の方々は最近いい思いしてるらしいですよぉ⋯」
後輩ちゃんは少し眉を顰めながら言う。しかし侍女がいい思い、何のことだろう。
「いい思いって?もしかしてお嬢様が関わってるの?」
「そうです、そうです!何でもお菓子やら宝石やらを褒美に貰ってるらしいですよ!良いですよね⋯位の高い人は!」
「えぇー⋯」
お嬢様なりの償いなのだろうか。今までの。後輩ちゃんは原作を知らないからお嬢様の償いだとは思いつかないだろう。元の性格じゃあ償いも謝罪もありえない。
「何でいきなり物を渡そうなんて思ったんでしょう⋯うーん⋯」
後輩ちゃんは目を閉じ顎に手をそえ考え始めた。うん⋯考える姿も可愛いな。って、私は変態などでは無いのだ。うん。ていうか、この世界の人は顔面偏差値が高いなぁ⋯
「⋯買収?」
「いやぁ⋯それはないので⋯いや、有り得る⋯」
思い浮かんだのは過去の記憶。あの頃のお嬢様の事を考えるとどうしても有り得ないとは考えられない。うーむ⋯しかしお嬢様が前世の記憶を持っているんだから買収は無いだろう。⋯多分。」
「ですよねぇ!?やっぱりお嬢様は何も変わってないじゃないですか!暴力的だったのが腹黒に変わっただけです!」
お嬢様の評判が⋯やばい、選択をみすった。




