16 鳥とトランプ(5日目)
小樽の朝はルームサービスで始まりました。
前日に欲しいものの個数を書き注文用紙をドアにかけておくと翌朝希望の時間に運ばれてくるのです。
電話やアプリでもできますが、そちらは有料になります。
7時から7時半の間と希望していましたが6時50分過ぎに来ました。このくらい早くてもいいでしょう。持って来たスタッフに少しですがチップを渡しました。
メニューはベーコンエッグマフィン、パン、バナナ、ヨーグルト、リンゴジュース、デカフェ。自室だと気兼ねなくのんびりと食べられます。マフィンは温かいし、コーヒーはポットで来るからたっぷりあるし。野菜をビュッフェでみつくろってサラダにして持ってくれば完璧でしょう(ホライゾンコートの食事は部屋に持って行っても大丈夫です)。
今日もいい天気です。風もそんなにありません。バルコニーのある人はそこで食べるんでしょうけれど窓付きでも十分です。港に近づく様子が見えるんですから。
実はその頃、世間では大事件が起きていたのですが、私やほとんどの乗客はまだ何も知りませんでした。
9時過ぎに船を降りました。ぶらぶらと歩いていると運河クルーズの近くまで来ました。場所を確認した後、運河に沿って歩きました。すると子ガモを率いた親ガモが泳ぐのに遭遇。可愛いので皆カメラを向けていました。勿論、私も。
有名なかまぼこ屋さんの前を通って堺町通りへ。たくさんの観光客向けの店が並んでいます。北海道物産展でお馴染みのお菓子屋さんのお店もあります。そこには入らず向かったのは北一硝子。風格の感じられる石造りの建物の中にはたくさんのガラス製品が並んでいます。息を呑むような美しい器を見ると、これに載せられるような料理はうちでは作れないなと思います。
目の保養をした後は耳。小樽オルゴール堂へ。入ってびっくり。オルゴールの種類と量の多さもさることながら、人が多いのです。耳に飛び込んで来るのは中国語と思われる言葉。オルゴールは人気のお土産なのでしょうか。
そこを出てスヌーピーヴィレッジに行きグッズを見ました。
最近は観光地に行くとキャラクターショップがあります。そういえば由布院にもスヌーピーあったような。
そこで土産を買ったところで少々空腹に。お昼前ですが近くにあったコーヒーショップに入りました。
頼んだのは紅茶とカルボナーラスパゲティ。
小樽に来たんだから海鮮食べろ、釧路でも函館でも食べてないだろと思われる向きもあるかもしれませんが、なんだか食べる気になれないのです。
私も船に乗る前は勝手丼とか寿司とか食べようかと思ったのですが、観光客向けのものなんだよねと思うとなんとなく気が進まないのです。むしろ普通の物が食べたくなってきます。船の食事が御馳走ばかりだからかもしれません(それに新鮮な魚ならいつでも食べられるし、海鮮丼は北海道物産展で食べられるし)。
釧路のインデアンカレー、函館の蕎麦ときて今回はスパゲティ。スパゲティ自体は船の有料イタリアンレストランにあるかもしれませんが、喫茶店のスパゲティってなんとなく心惹かれるものがあります。
理屈はともかく、おいしいスパゲティでした。
コーヒー飲まなかったので申し訳なくてレジ横で売ってた店オリジナルのレギュラーコーヒーを買いました。帰宅後飲んだら飲みやすくて美味しかったです。
堺町通りをぶらぶらしてから運河クルーズへ。
ここで電子バウチャーを見せチケット購入。並んで船を待ちました。
救命胴衣を着けて説明を受けた後、戻って来た船に乗り込みます。20人乗りくらいの船でした。船に足を踏み入れた瞬間ガタっと揺れますが心配いりません。乗客が席につくと船はゆっくりと動き始めました。橋の上から観光客に見られるのはなんとなく気恥ずかしいものです。
運河の古い石組を見ると歴史を感じました。橋をいくつかくぐり海へ。停泊するD・Pが見えました。海から見るD・Pは巨大でした。他の観光船が出港するのも見えました。少し揺れましたが潮風が心地よく感じられました。
船は再び運河へ。北運河に向かいます。こちらは南側に比べて人が少なくひっそりしています。小休止しているカモメがいたり。
船は運河の突き当りで転回し南運河へ。そこで今朝見たカモの親子に遭遇しました。皆可愛いとスマホを向けました。私もスマホを向けました。船長さんは速度を緩め船をそっとカモ親子に少しだけ近づけました。親ガモは警戒したのか子ガモたちをかばうように運河の端へ。
船長さんは観光客を喜ばそう、カモを驚かさないようにそっと船を近づけたんでしょうけれど、カモにとっては恐怖だったのでしょう。
すぐに船はカモから離れましたが、なんだかカモ親子に申し訳ない気がしました。
観光にはこういうジレンマがつきものかもしれません。観光客を喜ばせようとしたら動物が怯えるし、動物を驚かさないようにと思うと観光客は満足できないかもしれない……。
一方、人を見ても驚かないのはハトです。橋の下を船がくぐっても平然と橋の下に渡してあるロープの上で羽根を休めていました。
船は転回して発着場へ戻りました。出発から約40分のクルーズでした。
船に戻る前に港の近くにある土産物屋で海鮮丼と寿司のマグネットを買いました。実物は持ち帰れませんが、これは持ち帰れます。
船に戻る前に港のターミナルで出国審査がありましたが、すぐに終わりました。パスポートに出国の印を押してもらい「日本出国審査完了」という小さな紙をもらいました。
船室に戻ると3時過ぎ。テレビで小樽の気温を確認すると28度。たぶん留守宅ではまだ30度を下ってはいないでしょう。
おやつを食べにデッキ14のホライゾンコートへ。クッキーとスイカを食べながら窓の外を見ると、眼下のターミナルの緑色の屋根の上に鳥がたくさんいます。よく見ると茶色い土がところどころに見え茶色い小さな生き物も見えます。どうも大きさからして雛鳥のようです。親鳥らしき鳥によりそっています。この屋根の上で子育てしてる?
色からしてカモメの仲間のようです。人間の作った建物を利用しているのでしょう。逞しいです。
デッキ7に降りて近くで見ました(このデッキは外周をウォ―キングで一周できるようになっています)。鳥たちは人間に一切構わず屋根の上を飛び交っています。
しばらく見ていると出港前の見送りの人々が岸壁に集まってきました。
華麗なフラダンスを見せてくれた後は和太鼓の演奏と、精一杯の気持ちを込めた見送りでした。エネルギーを充電されたような心地になりました。
さてこの日はこれで終わりではありません。
実は船に帰って来てからネット(日本国内停泊中はデータ通信を利用しても大丈夫)を見ているととんでもないニュースが。
アメリカ大統領選の共和党の指名候補者(当時)トランプの暗殺未遂事件です。
日本時間7時11分(アメリカ東部夏時間13日18時11分)のことですから朝食を食べている頃です。
まだ大統領候補になっていない時とはいえ、こんな大事件が起きるなんて。
夕食のダイニングで隣のテーブルのアメリカ人らしい人たちが「トランプ」と言っているのが聞こえました。
デザートの黒い森のケーキを食べながらこれからどうなるんだろうと思いました。
そんなニュースの衝撃を吹き飛ばしたのはKATEIさんというヴァイオリニストのショーでした。鬼滅の刃のテーマから始まり、ジブリやクイーンの曲まで。客席は盛り上がりました。
これまでもD・Pでパフォーマンスを披露しておりファンも多いようです。
晴れやかな気分になったせいかその夜はよく眠れました。
この日の歩数は12,889歩(スマホ計測)
次は終日航海日。