14 湿原とカレー(3日目)
翌朝、胃の調子はややよくなっていました。でもいつものように食べるのは無理。
この日の朝食はオートミールにしました。それからフレンチトースト。
ホライゾンコートはなんとなく前日の朝に比べ人が少なく席はすぐ見つかりました。昨夜遅くまで遊んだ人が多かったのかもしれません。
味のしないオートミールを口に運んでいると、近くの席のマスクをした外国人男性がくしゃみや咳をしていました。マスクはよく見ると医療用のもの。なんだか不安になってきました。
船室に戻り、上陸の支度です。すでに窓から薄曇りの釧路港が見えています。岸壁には歓迎の人々やテントが見えます。クルーズ客への期待がひしひしと感じられます。でも、私そんなにお金使わないと思うんですが。歓迎されるのがなんだか心苦しいです。
外出の際はパスポートとメダリオンを忘れてはいけません。船から出る時にメダリオンのチェックをするのです。
それからスマホの機内モードを解除しました。
今回は埠頭が市街地から離れているので、釧路市の御厚意で市街地と港を往復する無料のシャトルバスが運行されます。過去のクルーズの動画やブログではシャトルバスが有料とあったのでほっとしました。
上陸許可が出たと船内放送があり、8時40分過ぎに外に出ました。やっぱり北海道です。気温が違います。船内のエアコンの設定温度が低いのでそんなに違和感はありませんでしたが、おそらく私の住んでる地域とは10度くらいは違うでしょう。
シャトルバスにはさほど並ばずに乗れました。20分弱で釧路フィッシャーマンズワーフMOOという施設に到着しました。商業施設で土産物屋や海産物店などが並んでいました。
ここで面白いものを発見しました。お手洗いの個室に貼ってあった注意書きです。
「お願い! トイレットペーパーを持ち帰らないで下さい」
よくある貼り紙です。違うのはその下です。
「みんなのおしりを守ろう」
この発想はありませんでした。そうです。おしりを守るトイレットペーパーを盗むなんておしりの敵です。
こんなフレーズを考えださなければならなかった管理者の苦労がしのばれます。
外へ出て川沿いを歩くと大きな橋がありました。幣舞橋です。釧路の有名な橋です。それを渡らずに駅の方向へ歩きました。
さすが北海道と思ったのは道路の表示です。「根室 124km」なんていう看板を見るとスケールの違いに驚きます。
一方、歩道に設置された花壇を見ると、花が小さくて可憐です。南国の花の大きさや濃さとは全く違います。そういえば北海道の樹木の色も南国の木々と比べて淡い感じがします。新婚旅行の時もそんなことを思った記憶がありますが、改めてその印象を強くしました。
釧路駅は根室本線の駅です。札幌とは特急「おおぞら」で結ばれています。釧路湿原ノロッコ号はこの駅が始発です。
クルーズ船の乗客が来ることを見越して駅員さんが券売機の近くに待機して案内してくれたのでスムーズに発券ができました。往復とも同じ車両の同じ座席です。
乗車まで時間があるので駅に近い和商市場に行きました。すでに大勢の観光客(大半がクルーズ船の乗客)でごったがえしていました。私はカニを自宅に配送してもらいました。これで地域経済に少しは貢献したでしょうか。勝手丼という好みの刺身などを乗せた海鮮丼がありましたが、おなかのこととインデアンカレーを食べることを考えやめておきました。
駅に戻ってコンビニで足に塗る消毒薬を買いました。実はまだ足の水膨れは完治していません。破れてます。不潔にならないようにしていますが心配なので。
そろそろノロッコ号が入ってくるのでホームへ。一両しかない自由席のドア位置には人が並び始めています。
朝は雲の多かった頭上はいつの間にか澄んだ空色になっていました。
やがてノロッコ号が入ってきました。
さあ乗車です。指定席はベンチシート。もし夫との二人旅なら二人一緒だったはず。果たして隣にはどんな人が来るのでしょうか。
そこに来たのは若い女性でした。上品な人で趣味は旅行。私が行ったことのある観光地にも行ってました。しかも釧路湿原にも詳しい人でした。けっこう話が弾みました。
進行方向左側が湿原がよく見えるのでそちらにベンチを向けました。
市街地を抜けると、窓の外は淡い緑の湿原になります。南国の子どもとこの辺りの子どもの黄緑色のクレヨンの減り方は違うのではないでしょうか。
途中タンチョウヅルが池のほとりに一羽佇んでいるのを見つけ彼女は喜んでいました。私はまさかツルがいるとは思わなかったので慌てて外を見ましたが、わずかに羽根が見えただけでした。なかなか見られないそうなので羽根だけでも幸運と言えるかもしれません。
塘路駅で降り一休み。彼女とはここで別れました。
復路の出発を待つ間、駅周辺を散策しました。遠くまでは行けませんでしたが爽やかな風が吹き渡っていました。
復路の隣人は他に連れがいたので私と話すことありませんでした。それでいいと思います。人は皆それぞれですから。
隣の車両でお土産を売っていたのでノロッコ号のアクリルスタンドを買いました。
それから往路復路それぞれで乗車証明書をいただいていたので、その裏に乗車記念のスタンプを押しました。ささやかな記念品です。
インデアンカレーには駅から歩いて行きました。スマホの地図に助けられどうにかたどり着きました。南国より淡い空の色とはいえ夏の晴天の下です。汗だくです。
インデアンカレー、正確には「カレーショップ インデアン」は帯広発祥のカレー店です。夫が行きたいと言ったのはテレビで見たからです。鍋で買いに来る人がいるというのがツボだったようです。
さすがに鍋で買って船に持ち込むわけにはいきません。そこで私が写真に撮って食べてその味を帰宅後に伝えるということになりました。
店の中は満員ではありませんが午後一時を過ぎているわりには客が多いように思いました。タクシーの運転手らしき人がいました。これは当たりです。タクシーの運転手が来る店はコスパがいいのです。学生時代も大学生協の食堂にタクシーの運転手が食べに来ていましたから。
注文したのは野菜カレーのハンバーグ、辛さは普通。銀色の皿に盛られたカレーには野菜がゴロゴロ入っていました。カレーはじっくりと煮込まれたような味でした。でも家で作って一晩寝かせた味ではありません。家で作ろうと思っても作れる味と香りではないのです。それなのになんとなく懐かしい感じがします。もう一度食べたくなるような。ハンバーグはカレーとよくマッチする味です。薬味の福神漬け、緑色の漬物(青じその実・大根・きゅうりの漬物)、ガリもいい味出してます。カレーにラッキョウではなくガリというのは不思議でした。でも悪くはないんです。むしろカレーの味を引き立てているというか。やはり長年続く店はそれなりの工夫をしているのでしょう。
要するに薬味も含めておいしかった、また食べたいということです。
おいしいカレーを食べた後、フィッシャーマンズワーフに戻ることに。でも私の足は悲鳴を上げていました。
思いきってタクシーに乗りました。さっきインデアンにいた運転手さんのタクシーが近くに停車していたのです。思ったより料金はかかりませんでした。
シャトルバスで港に戻り船室に入ってすぐに足を洗って消毒しました。
船は5時前に港を出ました。地元の歌手の歌に見送られて。
「星の流れに」を船上で聞くとは思いませんでした。
夕食後マジックのショーを見ましたが、半分眠っていました。面白いショーだったのですが。
船の揺れが揺りかごのようだったからかもしれません。シアターのある船の前部は揺れやすいと後で知りました。
この日の歩数は14,063歩(スマホによる計測)
次は函館。