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夢のクルーズ珍道中  作者: 股旅の於由巳
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01 クルーズの誘惑(2023年春~夏)

まずはクルーズに行くまでのお話。

多少脱線していますが御容赦を。

タイトルだけ見て、これは自分には関係ない話だと思われた方がおいでかと思います。

はい、それは当然のことです。

私も割と最近まではそう思っていましたから。

豪華客船? 金持ちのお年寄りや海外の富裕層が乗っていて私なんかお呼びじゃないよね、そう思ってました。

また新型コロナの先駆けとなったあの船のことを思い出す方も多いでしょう。

報道を見て、お金があっても病気は誰でも平等にかかるもの、密閉された空間は怖いなあ、などと考えていました。

他人事です。

中にいる方々にとっては大変なことだったのに。

それに何といっても子どもの頃から私は乗り物酔いがひどかったので、船に乗って何日も旅をするなど想像するだけで恐怖でした。

家族で長距離ドライブする時は必ず吐瀉物を入れる小さいバケツを用意していました。

また長距離フェリーで船酔いしたこともあります。

自分で車の運転をするようになったら酔わなくなりましたが、他人の運転する車に関しては今も不安があります。

子どもの頃見たタイタニック号の映画も豪華客船への恐怖に拍車をかけました。

有名なディカプリオ出演の「タイタニック」ではなくテレビで夜9時から放送された映画です。

たぶん「失われた航海」だと思います。



余談ですが昔は夜9時から二時間枠で洋画がテレビ放映されてました。大ヒット作だけでなくどこから探してきたんだというマイナーな映画まで。興味のある物しか見ていませんが、週に2枠はあったので結構な数の映画を見たと思います。「戦場に架ける橋」や「大脱走」「ひまわり」「猿の惑星」「鳥」等ジャンルは様々でした。時間の関係でカットされているシーンもありましたが吹替のおかげで小学校高学年の私でも理解できました。もっと小さい頃に住んでいた地方では夕方に邦画が放映されていました。「社長漫遊記」「駅前」シリーズや「台所太平記」「南の島に雪が降る」なんていうのも。夏休みには子ども向けの「ガメラ」や「ギャオス」等。贅沢だったなと思います



少々話が脱線しました。映画で船が沈む時に専属のオーケストラの人々が演奏をしているのには恐怖と同時に畏敬の念を感じました。

この時、船長は船と運命を共にするのだと親に教えられました。

さらに同じく洋画劇場で放映されたパニック映画「ポセイドン・アドベンチャー」。

これは豪華客船が大波でひっくり返って上下逆さまになってしまうという大惨事のお話です。

その中で生き延びようとする人々の必死の姿を描いていました。

この映画の影響はずっと残っていて、デパートや飲食店、大きなホール等に行くと、もしこの場所が上下ひっくり返ったらどうなるんだろうという想像を社会人になってもしていました。

あの照明が落ちてきてテーブルや椅子が人間をなぎ倒し高価な壺や花瓶が粉々になり……。

ロクなことは考えてませんでした。

幸いそういう事態に遭遇することはなかったので最近は想像することも少なくなりました。




というわけでクルーズだの豪華客船だのは別世界のもの、恐怖の対象だったのです。

ところがそんな私の気持ちを揺り動かしたものがありました。

動画投稿サイトです。

動画投稿サイトは閲覧した動画を分析しておすすめの動画を表示します。

私は将棋関係や音楽関係、菓子作り、ライブカメラの動画を家事やあれこれをしながら流し見していました。

観光地のライブカメラを見ていたからでしょうか、ある時クルーズの動画がおすすめされていました。

特に何も考えずにそれを見ました。

タイトルは忘れましたが、最安料金でクルーズ船(日本船籍)に乗る内容だったと思います。

驚きました。

思っていたより安い価格でクルーズ船に乗れるのです。

無論客室は船の内側、窓すらありません。

でも食事もエンターテインメントもすべて料金に含まれています。

アイスクリームもハンバーガーもプールもジムもただなのです。

しかも移動は寝ている間。

目が覚めたら目的地です。

若い頃、寝台列車を利用して旅行していましたが、それに近いものがあります。

最近は寝台列車はずいぶんと減っていますし、あってもデザインが超豪華になり代金は桁違いで乗れません。

でもクルーズ船なら豪華な寝台列車よりも安い代金で日本一周ができてしまうのです。

ついでに韓国や台湾にも行けるなんて(外国船籍の場合)。

何より最近の大型客船は横揺れ防止装置があって船酔いしにくいらしいのです。

ちょっとだけ心が動きました。

動画を見るだけでなく旅行会社や船会社のサイトからパンフレットをダウンロードし始めました。

見ているだけで夢の世界を覗いている気分でした。

これが昨年2023年春のことでした。




さてその夏、ちょっとした生活の変化がありました。

夫が退職し年金暮らしになったのです。

万年人手不足の会社は働いて欲しかったようですが、その前年(2022年)に病気で数か月休職しており体力が以前よりも落ちているのが本人にもわかったようで。

正直ほっとしました。

年も年ですから。

せっかく時間があるのだからどこか温泉にでもと考えていました。

ちょっと前までは毎年連休に周辺の県の観光地や温泉に行っていました。

ここ数年はコロナやら何やらで旅行に行っていなかったので少し豪華な旅にと考えて候補にふと浮かんだのがクルーズです。

もう夫の仕事の休みのことを考えて旅行の計画を立てなくてもいいのです。

でも果たして行けるのか……。

夫の性格からしてこういう形の旅はどうなんだろうか。

夫は必要な物にお金を使う時は使います。

でも、普段の生活はいたって地味、シンプルです。

30代の時に買ったスーツを今でも着ています。

クルーズを無駄と考えるのではないか。

一抹の不安がありました。




クルーズ船の客室は基本的に二名で使うことになっています。

料金もその設定です。

一名で予約すると追加料金を取られます。

二名分の料金を支払うことになるのです。

夫が嫌だと言ったら諦めるか、二名分支払って一人で行くか、それとも誰かを誘うか。

そう、クルーズ旅行計画のネックは夫でした。





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