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お祭りを楽しんでもいいですか?

私の住むハーイス公国はナイディーナ帝国と長年戦争を続けていた。

公国は様々な種族が平和的に暮らしていた。

しかし、帝国の信仰する教えでは異種族は悪魔であり、自分達を惑わす存在で滅ぼさなければいけないらしい。

公国からは何度も停戦の申し込みは行なっていたが、帝国は聞く耳を持たなかった。

私の父、ハーイス公国第52代目公王も何度も停戦を申し込んでいた。

兵器と呼ばれる武器を用いる帝国と、種族それぞれで短所を補いながら戦う公国。

近年では戦場は膠着状態が続き、兵士と食糧の消耗だけが顕著だった。

誰もが、停戦をそして平和を願っていた。

それが叶ったのは私が15歳の誕生日を迎えた丁度その日だった。

長い戦争で疲弊していた帝国の国民を率いた1人の男によって、皇帝と皇后が捕われた。

革命が成った瞬間だった。

その男は1年で帝国全土を掌握し、私の16歳誕生日の1週間前に平和協定の正式な締結の申し入れの為現れた。


「鉄でできた乗り物が空を飛ぶなんて不思議な気分ね」

「姫様には翼がありますからね」

「そうだけど、人間族は自分たちが生まれた時に持ち得ない力を技術力で補ってる。私たちとは違う方法を見つけた。面白いと思わない?」

「全く興味ありません」


帝国では様々な機械と呼ばれる、生活を便利にする物が存在する。

帝国で暮らしているのは、人間族と呼ばわれる種族のみ。

私達のように翼もなければ、魚人族たちのように海の中で生活できないし、馬人族のように早く走れたりもしない。

それでも彼らは機械というものでそれを補う。

面白くして、すごい種族だと私は思っている。


「彼らはあの船という乗り物から降りてこないの?」

「公国では今、終戦記念と姫様の生誕祭の最中ですからね。終わるまで待っているのでしょう。お祭りを楽しんでいる者もいるようですが、寝泊まりはあの船で行っているようですよ」

「それでも、偉い人だけでも城で寝泊まりすれば良いのに」

「戦争が終わったのがまだ1年前です。お互いにまだ蟠りがありますからね」

「それを横に置いて、これからは仲良くしましょうってことで来ているのでしょう?矛盾してない?」

「心はそう簡単にはできていません」

「それでも、それをしていかないと何も変わらないわ」


海の真ん中で異色を放つ、船と呼ばれる乗り物。

技術も、その形すら私は魅力的に映る。


「面白いわね。あの船と呼ばれる乗り物は多くの人を乗せて海を渡り、空を飛ぶのよ」

「他にも帝国の空では飛行船と呼ばれる乗り物をあるそうですよ」

「あの船とは違うの?」

「噂では風船のような見た目だとか」

「いずれ見てみたいわね」


呆れる侍女を尻目に船を眺める。

遠くからでも大きいと分かるその風体。

その重そうな巨体は海に浮き、空も飛ぶ。

揺れる事なくその場に静止している。

そんな船から今日も一機の戦闘機が飛び立つ。

彼らがあそこに停泊してから今日で4日。

3日前から決まった時間に一機の戦闘機が飛び立つ。

衛兵が警戒していないところを見るに、お父様に話は通っているのだろう。

偵察や訓練と言うよりは、気分転換の暇つぶしだと思う。

動きをみていれば分かる。


「綺麗ね」


あの戦闘機の動きは毎日見ていても飽きない。

機械を動かしているのではなく、私たちのように自分の羽で飛んでいるような繊細で美しい動き。


「一緒に飛んでみたい」

「構いませんが、自分の仕事を済ませてからですよ」


いつの間にか背後で仁王立ちしていた侍女に、無理矢理抱え上げられる。

猿人族の侍女マーニ。

今日も茶色い長い髪をキチンと纏めて結んでいる。

45歳で娘と息子がいる。

2人とも結婚して親元を離れているが、間も無く息子の嫁が出産するとかで最近はピリピリしている。

猿人族は小さい者でも人間族の二回り以上の大きさがあり、力持ち。

大抵の物は軽々と持ち運んでしまう。

私は間も無く16歳の誕生日を迎えるが、上には5人の兄と姉がいるので公務には関わって来なかった。

兄弟とは歳が離れていて、両親がかなり高齢の時にできた子だったため、放任されて育った。

別にそれに困ったことはないし、好きなこと、興味を持った事を何でもさせて貰えた。

そのため、今回の私の仕事は平和協定制定後の、お祝いのパーティに参加すること。

今日はそのための衣装選びが私の仕事。

おしゃれに興味がない私にはしんどい。


「だから何でも良いってば」

「そうはいきません。今回のパーティではお嫁様選びも兼ねているのですから」

「それはお姉さま達でしょ。私は関係ないはずだわ」


革命の立役者である新しい皇帝に、平和の証として誰か1人嫁ぐらしい。

両親としては嫁ぎ遅れてる姉の誰でも良いがもらってくれって思っているはず。

長兄のシンラウ兄様は今年で39歳。同じ鳥人族の奥さんをもらって現在4人の子持ち。

次男のカザナフ兄様は今年で30歳。猫人族の奥さんをもらって現在6人の子持ち。

しかし長女・次女・三女のお姉様はそれぞれ37歳・35歳・32歳だが未婚。

辛い現実だ。

見た目や年齢が悪いわけではないが、姉3人は揃って男を見る目がない。

悉く顔だけの男に惚れる。

王城の金目の物を勝手に売り捌くクズ、平気で浮気を繰り返すクズ、周りにわからないように手を上げるクズ。

上げればキリがない程良く引く姉達。

その姉達の凄いところは、イケメンのクズを引く才能。

性格の良いイケメンには絶対に惚れないのだ。

その残念だが凄い才能に拍手を贈りたい。

さて、話を戻すけれど姉達は見た目や性格は悪くない。

いや、見た目だけなら絶世の美女とまで言われた母の血を色濃く受け継げた私たち兄弟だ。

謙遜せず言おう、美女だ。

なので、父も最近では姉達の意思を無視してでも嫁がせようと必死なのだ。

今回選ばれなければ、父の決めた人との結婚が待っているだろう。

父の相手選びの目は確かなので、イケメンでなくても素晴らしい相手を選んでくれるだろう。


「そういえば、新しい皇帝様はおいくつなの?」

「今年で齢22とお伺いしています。なので年齢だけなら姫様も対象だと思われますよ」

「22歳の年上の男性からしたら、16歳の女なんて子供すぎるでしょ」

「価値観は人それぞれなのでしょう。姫様の口癖ですよ」


いつもの逃げ口上をここで使われるとは不覚。


「姫様にはこちらの緑のドレスはいかがでしょう。姫様の深緑のような瞳にあっているでしょう。少し肌の露出が多い服なので、手直しすれば問題ないでしょう」

「では、それで」

「姫様!!!」


デザイナーが出した服を二つ返事で決定するとマーニが怒る。


「私は服に興味がないと言っているでしょ。拘ったところでただがしれてるの。なら、プロが決めたものが良いに決まっているでしょう」

「自分の服ですよ。パーティの服装はこれからも直面する課題なのですから少しは自分で考えなければいずれ困りますよ」

「じゃあ、困ってから考えるわ」

「姫様!!」


マーニに怒られるのは日常茶飯事なので聞き流しながら、その他の装飾品も全てデザイナーのおすすめしてくれる物を選んだ。

その後もサイズ確認だとかで結局夜まで時間がかかってしまった。

今回のお祭りは私の生誕祭の他にも終戦記念も合わせて行われているので、後7日間は続く。

王家出店の出店も多く、経済のためにもワザと大々的に行われている。

ドレスを脱ぎ去り、普段から愛用している簡素な服に着替える。

白のシャツに短い丈のスカート、ロングブーツを履いて長いコートを羽織る。


「お祭りに行かれるのですか?」

「ええ。もうすぐ花火も上がるし、今なら露店も人が少ないでしょうからゆっくりできるでしょ」

「あまり遅くならないで下さいよ」

「はーい」


最後にメガネをかけて部屋を出る。

一応の変装道具のメガネ。

公務をしていないし、今回が帝国とのパーティが初めての出席となるので、顔を知る者は少ないけれど一応。

正面から出ると後で家族から順番に説教されるので、裏口から衛兵にお願いしてこっそりと出掛けた。

少し歩いてからひとっ飛びで街まで向かい、人気のない所に降り立つ。

その後はフードを目深に被って、出発。

案の定、花火を見るために街から少し離れた丘に移動している者が多いようで露店がある通りは人が少ない。

食べ歩きを満喫してると、装飾品の露店の前で仮面をした男が立ち尽くしていた。

顔全体を覆う仮面は黒く、男性の服装も黒のため同じ匂いを感じた。

この男もおしゃれに興味なさそう。

服の上からでも分かるがっしりとした体格なので、ちゃんとした服装をすればモテそう。

お祭りではみんな想い思い好きな格好をしているので、全身黒一色でもさほど目立たないが、立ち尽くす姿が綺麗で通り過ぎる女性陣から熱い視線が送られている。

しかし、向かいに立つ店主は困り顔。

露店を覗き込むと、様々な装飾に加工された煌びやかなアクセサリーが並んでいる。


「どれも綺麗で悩みますね」


店主が可哀想なので一応話しかけて見るが、男性からの返答はなし。


「ええ、当店自慢の商品をお持ちしております。今回は多くの方がお求めやすい値段の物を、厳選してお持ちしております」


店主からはとても嬉しそうな笑顔を頂けた。


「オススメはどれですか?」

「はい。鳥人族の方ですとこちらのブレスレットはいかがでしょうか?王族の方の緑の瞳に憧れる方が多く、こちらの宝石『ヨランビナ』を装飾したアクセサリーが人気です。他にも王妃様の金色の髪に似ているこちらの宝石『オポラン』なども人気です」

「鳥人族にはブレスレットが良いのか?」


こちらの話に入ってきたところを見るに、やっぱり異種族へのプレゼントで悩んでいたようだ。


「比較的にアクセサリー系ではそうですね。空を飛んで移動することが多いので、邪魔にならない物を好みます。一貫して嫌がられるので、イヤリングは絶対に贈らないように注意してください」

「ネックレスはどうなんだ?」

「真っ直ぐ飛ぶ時やゆっくり飛ぶときは問題ないですが、邪魔になる時もあるので、贈るなら短いタイプのがオススメです」

「そうか」

「贈られるのは鳥人族の女性なのですか?」

「ああ」


一目惚れか何かで相手のことを詳しく知らないのかな?

それにしても返答しかしない。

情報が少ないけど、仕方ない。

言いたくない人もいるだろう。


「なら、オポランの宝石のブレスレットかアンクレットが良いでのは?ヨランビナも人気ですが、それは自分用に買う場合です。贈り物の場合は、意味合いが変わってくるので夫婦や恋人以外の関係性の方に贈るにはお勧めできません」

「アンクレット?」

「鳥人族以外の種族の方ではあまり好む方はいませんが、鳥人族は足の綺麗さも魅力の一つです。普段は他の種族のように靴を履きますが、家では裸足が当たり前ですし、パーティでは足を引き立たせる靴を履くのが当たり前です」

「そうなのか」

「それとアンクレットには心に決めた人がいるって意味にもなるので、恋人や番に贈るには最適ですよ」

「そうか」


ここまで静かに話を聞いてくれていたが、彼はオポランの宝石が付いたブレスレットを手に取る。

ということは、贈る相手は一目惚れの相手なのかもしれない。

贈る相手に喜ばれることを願う。

どのデザインのブレスレットが良いかまで聞かれたらアドバイスできなかったが、一応解決。

店主も安堵していた。


「では、私はここで」

「君は買わないのか?」

「装飾品に興味はないので」


装飾品の露店をさっさと離れて、探索を再開する。

呼び止められた気もするが、人との出会いは一期一会。

縁があればまた出会えるだろう。

お互いに顔が隠れていたので、気付けるかは分からないけれどそれも運命。

再度買い食いしながら歩いていると、簡易的な射撃場があった。

威力を抑えた銃を使って、動く的に当てることで得点を得て、得点に応じて賞品がもらえる流れのようだ。

お祭りでの今までの挑戦者の獲得順位が張り出されていた。

面白い名前が書かれている得点表の現在の暫定1位の名前は『人間様』。

分かりやすく敵意剥き出しの名前のせいか、この時間では珍しくこの場所は賑わっている。

折角なので私も参加することにした。

戦争には参加していないけれど、様々な戦闘訓練は受けてきた。

その中でも射撃には自信がある。

本当は遠距離が一番得意だけど、この距離でも問題ない。


「店主。一回分お願い」

「はいよ。弾は5発。一番奥の小さな缶が最高得点だ。あの缶に5発全部当てれば、このムカつく名前が2位に転落する。こいつはあの缶に4発当てたから、4発なら同率1位だ」

「任せな!」


前の人の挑戦が終わるのを待って、指定の位置に立つ。

的に集中する。

目を閉じて大きく深呼吸して目を開けるのと同時に右手に持った銃を肩の位置まで上げる。

うん、的だけに集中できている。

周りの音が聞こえない。

一発目。

見事缶に当たり、缶が跳ね上がる。

問題ない。

この作りのせいで落ちるのを待ったら二発目以降は多分狙えない。

意地悪な構造になっている。

再度集中。

二発目。

缶の軌道を読み切り、弾が当たった缶は更に跳ね上がる。

三発目、四発目と順調に弾は当たり缶はかなり上まで跳ね上がった。

ここまで上がると、上空の激しい風を読んで当てるか、落ちてくるまで待ってからタイミングを合わせて撃つしかない。

かなり小さな缶だ。

少しの風にも煽られて簡単に軌道を変える。

どこで狙おうと簡単にはいかない。

でも問題ない。

私は鳥人族の中で一番飛ぶのが上手い。

これは結果に基づいた事実。

風を読むなんて造作もない。

呼吸をするように簡単にやってやりますよ。

缶が落ちてくる。

五発目。

缶の真ん中を捉えて、缶は後ろの木にぶつかる。

観客から歓声が上がる。


「弾と的に変な細工してません?」

「当たり前だろ。ただクルクル回ってるだけの的を狙うなんて誰でも簡単にできちまうからな。面白くしねえと」

「意地が悪いな」

「みんな盛り上がるんだから問題ないだろう。今回は人間族の男のお陰で更に盛り上がったしな。それより、お嬢さん名前どうする?」

「別に何でも良いんだけどなぁ」

「なら、2位に下がっちまった兄ちゃんに対抗して鳥人族様にしとくか?」

「お互いに煽っていくスタイルですか?」

「あの兄ちゃんが戻ってきてそうなってたら、意地になってまた挑戦してくれんだろうしな」

「まあ、私は何でも良いから、満点の商品頂戴」

「おう。待ってろ」


店主は店の裏に消えて行ったが、大きなぬいぐるみを持って戻ってきた。

店主の上半身が隠れそうなほどの大きなぬいぐるみを両手に抱えている。

右はウサギ、左はパンダ。


「どっちもいらない」

「何でだ!どっちも可愛いぞ!」


確かに景品は大きなぬいぐるみと書かれていたが、大きすぎる。

持って帰るのも一苦労しそうな大きさのぬいぐるみなんて、可愛かろうといらない。

それにこんな物を持って帰れば、城中で話題になる。

話題になれば、絶対に父様から説教される。

怒られると分かっていて、いらない物は受け取らない。


「いらない」

「仕方ねえな」


などと言いながら、左に抱えたぬいぐるみを押し付けてきた。

危うく落ちそうになったため、慌てて抱えたのが運の尽き。


「受け取ったから持って帰れ。返品不可だ」


と押し付けられた。

その後も頑張って返品しようとしたけれど、取り合ってもらえなかった。

花火の時間も迫り、大きなぬいぐるみのせいで楽しむどころでは無くなったので、脇道に入り帰路に着くことにした。

無駄に大きいぬいぐるみを何とか持って帰ると、衛兵にはびっくりされ、侍女には冷たい目をされた。

部屋のソファに投げるように置いたが、一人分のスペースを陣取るパンダ。

存在感がすごいが、気にせずお風呂に入り、ベットにダイブする。

侍女のお小言が聞こえるが、無視して布団に潜り込む。

自分が思っていたより疲れていたのか、その日は早々に深い眠りにつけた。

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