6話 ジェル•グリズリーという男
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「何で戻ろうとするのよ!ダ・メ・な・の・よー!用があるから止めたのよ!」
わけわからんが、ジェル・グリズリーが必死に止めてくる。なんかこいつの言う用って嫌な予感する。
「で、なんだ?用って」
「お前さんたちが乗っていた馬車を俺によこすのよ!」
…は?こいつ何言ってるんだ?デントもジェル・グリズリーが突然よこせと言い出すので困惑しているようで、
「よこせって…お前にタダでこ渡せってか?」
とジェル・グリズリーに聞く。
すると、
「あったりまえなのよ!俺はあの馬車が気に入ったからよこせなのよ」
は?まるで賊だな。だんだんと腹が立ってきた。
「デントもう行くぞ。」
いちいちこういう奴に反応していると、余計に油を注ぐことになるので戻ることにした。
「そうですね。もう行きましょう」
ヴォースとデントがきた道を戻ろうとするとカイルが回り込んで、両手をかざしながら二人を止めようとする。
「ごめぇ〜ん」
「ごめぇ〜ん」
「どけ、クソ猫?おっさん?おっさん猫!」
蹴飛ばしてやろうと思ったがデントが止める。
「悪い悪い。あんまりブッサイクなもんで腹が立ったんだ」
カイルを払って戻っていこうとすると、ジェル・グリズリーが笑い出す。
「はひひひん!そうかそうか!このジェル・グリズリー様に楯突く気だな」
腹が立って振り向こうとしたが、デントが止める。
「ここで感情的になってしまうと、今回の仕事が台無しになるかもしれませんよ。なんかあいつ偉いやつっぽいし」
「そうだな。悪い」
ジェル・グリズリーが他にもごちゃごちゃ言っているようだったが、俺とデントはポーラとフランのいる鉱山の作業場へ向かった。
「ヴォース、デント遅い何してたのよ」
作業場へつくとポーラが怒っていた。
フランは今回の依頼主であるラウフェンさんの説明を聞いていた。
「あ…今二人が戻ってきました。」
フランがラウフェンさんに俺とデントを紹介する。
「ヴォースさん、デントくんはじめまして。この鉱山の掘削を行う予定のラウフェン製鉄組合の組合長ラウフェン・ルーヅです。」
ツルツルの頭を光らせて、いかにも良いものばかり食ってきたであろう恰幅の良い体格で、柔らかい笑顔をして俺達に挨拶をしてきた。
「デントです!よろしくお願いします!」
デントが挨拶しているのを隣でぼさっと見ているとポーラが後ろで睨んでいた。
作業所を出て、紹介された近くの大きな石造りの宿へついた。
「こんな大きなところで寝れるのか今日」
デントと俺で浮かれていると、ポーラが突然に怒り出す。
「もう!ヴォース!何でさっき挨拶しなかったの?そんな失礼な態度取っていたら仕事断られるかもしれないのに!」
「チッ、分かった分かった」
適当に返事をしてその場を乗り切った。
「で、今日はどうするんだ?もう寝て良いのか?」
「とりあえず今日はゆっくり休んで下さいって言ってましたよ。」
フランが言う。
部屋で休みに行こうとすると、デントが急にポーラとフランに
「あ!そうだポーラ、フラン。ジェル・グリズリーっていう太ったおっさんが魔力機動馬車欲しがってたよ。」
というと、フランが顔を引き攣らせた。
「今、ジェル・グリズリーって言った?」
「?ああ」
俺とデントが不思議そうにしていると、ポーラもフランに尋ねる。
「ジェル・グリズリーって知ってるの?フラン」
フランは顔を引きつらせながら話し出す。
「ジェル・グリズリーって……今から十年前にグエールの皇帝を殺した犯人…」
すると、ポーラとデントも思い出したみたいで、
「知ってる。当時小さかったけど騒ぎになったよね」
「俺…そんなやつに会ってたんだ」
「確かにそんな事言ってたな」
適当に聴いてそんな事を言うと、普段大人しいフランが俺に怒り出す。
「そんなくつろいでる場合じゃないです!馬車を狙っていたって事は………」
ポーラは、焦りながら俺たちに聞く。
「そういえば、あんたたち馬車は?私とフランが説明聞きに行くって言ったときに任せたでしょ?」
デントは青ざめながら固唾を飲んだ。
「忘れてた…」
「悪い、忘れてたわ」
「ごめんなさいっ」
デントが必死に謝っていると、ポーラが殴りかかろうとする。
「馬鹿!何やってるのよ!」
フランが止めにかかる
「ポーラ落ち着いて!!そんなことより早く馬車を確認しにいかないと。」
4人で魔力機動馬車を止めた作業場近くの森に向かうと、馬車は残っていた。
「はぁ…良かった良かった。残っていたな」
俺が安心していると、ポーラが小言をいう。
「ほんとに…このバカ…今度こんなことしたら許さないわよ?」
でも、少し安心しているようだった。
「とにかく馬車を動かさないとだめですね。」
デントが言う。
ポーラが馬車へ入ると、馬車の後部から猫のような手が伸びてきてポーラの口をふさぐ。
「うぐっ……ふぁ、」
「ポーラ!!」
3人で馬車へ近づこうとすると、馬車の背後からジェル・グリズリーと魔術師風の男が現れた。
「カイちゃーんよくやった!そして、お前達待ってたな・の・よ!」
「お前達がよこさないというのなら、力づくで奪ってやるのよ。」
「ポーラを離せ!カイル」
デントが馬車へ乗り込もうとすると、魔術師風の男が、指から光線を放つ。
「いっっ!!」
その場でデントが倒れ込む
「おいデント!」
「ばっかなのよぉ!ハハハ!」
フランがデントのもとへ駆け寄り、動物の骨のような笛で回復術をかけ、防護壁を張る。
「ヴォースさん!早くポーラを!」
「わかった!」
やりとりを聞いていたジェル・グリズリーが笑う。
「この男一人でなにができるって言うなのよ!」
「テルラー!こいつを消し去りなさい。」
そう言うと、魔術師風の男が詠唱する。
「テルラーこいつらを皆殺しなのよ!」
「うぃ!」
魔術師風の男が黒い矢のようなものを俺に向けて放つ。
「あ?なんかしたか?」
俺の腹を貫通したが、痛くも痒くもない。
そういえば、俺は魔法が効かないんだったな。
魔術師風の男テルラーと、ジェル・グリズリーが狼狽える。
「おい…テルラー、アイツにしっかり打ったのよ?」
「はい…撃ちました。」
テルラーが、再び黒い矢を放つ。
「さっきの見て分かっただろ、効かないってだからもうやめろ」
すると、ジェル・グリズリーが何かを悟ったかのように焦りだす。
「テルラー!いいから奴をなんとしても止めるのよぅぅ!!」
ヴォースが不気味な笑みを浮かべ始める。
「次はこっちの番だな。」
ヴォースは、足元に転がっていた小石を拾い上げて、手の上で転がす。
「もういいだろ、諦めろ」
テルラーはその間も、光線などを乱れ打ちに放って、ヴォースにぶつける。
「もういいって言ってん、だろ!」
ヴォースが手に持っていた小石を軽くテルラ―に投げると、投げた途端その小石は消える。
「?」
その瞬間、テルラ―がボワっと強い光に包まれた。一瞬にしてテルラ―は煙と化してしまった。
フランとデントも何が起こったのか分からず、目を疑って唖然としている。
「ふ、フランなにが起きたんだ?」
「わからない…ヴォースさんの持っていた小石が高速でぶつかった?みたいな?」
ジェル・グリズリーが焦りながら尋ねる。
「お前…何…何の魔法を使ったのよ?]
「え?ただ小石を投げただけだが?]
ヴォースはもう一つ小石を拾い上げ、手の中で転がす。
「お前もこれいるか?」
するとジェル・グリズリーは焦って、ポーラのいる馬車に乗り込む。
「そ、その石を投げたらお前の仲間に当たるのよ!」
「チッ…」
案の定、ポーラを人質にジェルは馬車で逃げる。
「もう攻撃できないのよ!」
窓からジェル・グリズリーが叫ぶ。
「フラン、デントお前らは先に戻ってろ」
「絶対ポーラを。」
フランが心配そうに言う。
「分かった。」
俺は、ポーラを人質にとるジェルとカイルを追跡する。
「あ…あいつ追っかけてきたのよ。カイちゃーん!」
「ごめえ〜ん」
「あいつ…おそらくノーフ人なのよ…かいちゃ〜ん!絶対そいつを逃がすなよ!」
そう言うジェル・グリズリーの顔は汗がふき溢れている。
ジェル・グリズリーが、ヴォースをノーフ人だと予想するのを聞いてポーラは驚く。
「ふぁなせ!」
ポーラは、カイルの手を払い除けジェル・グリズリーに聞く。
「はぁ…あんたなんでヴォースがノーフ人だと知ってるの?」
「あんな怪力に…魔法が通用しないからなのよ!
あいつは戦闘民族のノーフ人なのよ!」
ジェルは焦りながらポーラに答えた。