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3話 出立

俺とポーラは、デントたちと別れポーラの家に向かっている道中ポーラが何やら不思議そうに俺に尋ねて来た


「ねぇ…あのウプスネル火山を壊したのってヴォースよね?」

「まぁな…」

これ以上言うのは面倒くさいから言うのをやめた

すると、またポーラが聞いてくる


「どうやってやったの?あのウプスネル火山ってあの海岸からかなり離れてるのよ?」

俺達がいた海岸近くからウプスネル火山は13km程離れている。

「ウプスネル火山って…アレ壊したら大変なことになるのよ?分かってるわよね?」


ウプスネル火山はこの国『ロウスタリア王国」で最も標高の高い山で、信仰の対象であることからロウスタリア王政府が王国軍を遣って保全活動をしている。立ち入ることさえ許されない。そんな大切な火山を俺があの熱波砲一撃で壊してしまったのだ。そしてポーラは続けて


「あれ…今頃王国軍大変なことになってるわよ…見つかってなかったらいいわね…」

「そうだな…」

もし見つかっていたらまた俺はノーフにいた頃と同じ羽目になる…

ポーラは溜め息をし、もう一度口を開いた

「で…?どうしてあれを壊したの?」

「熱波砲だ…熱波砲を撃った。そんであの盗賊みてぇな奴らを追っ払おうとしたんだ。」

「はぁ…呆れたそんな事の為に?もっと別の方法あったでしょ?それと熱波砲って何?アンタ魔法使えたの?」

「まぁ魔法ではないと思うが、修練を積めば誰でも習得できる技だ、この世界の奴等は分からんと思うが、俺のいたノーフでは体のエネルギーを手のひらに放出して放つ技がある。これは限られた奴等にしかできない技で俺も習得に15年かかった。この熱波砲は、そいつが持つエネルギーの強さで威力が変わってくる俺クラスになると火山さえぶっ壊せるほどぐらいの威力がある」

「私でもできるって事?」

「さぁな」

ポーラは不思議そうに見つめていたが、教えるのは厄介なので俺は早足で家へ進んだ。




家に戻って、ポーラが先に家へ入って行くとポーラの親父がテーブルで構えており、仏頂面で腕を組んでいた。その隣には俯いて少し悲しそうな顔のポーラの弟がいた。ポーラは気付くことなくいつも通りに家へ入っていく。


「ただいま、パパご飯まだなの?」

そんな明るく言うとポーラの親父は益々顔を曇らせた。そして口を開く

「ポーラそこに座りなさい。おい!そこのデカブツお前も座れ!」

「あ?チッ」

俺とポーラは親父の対面に並んで座った。

そして親父はポーラに対して

「はぁ…まだ冒険者なんぞ目指して遊んでたのか…

そう言うと、ポーラはイライラし始めたのか歯を食いしばり始める。

「ママもパパも公認冒険者だったんでしょ?私も遊んでなんかない!公認冒険者目指してるの!!」

ポーラの親父とお袋が公認冒険者だったというのは初耳で俺は少し驚いた。

ポーラの親父はそれを言うと呆れた表情で

「それで…お前の母さんは死んだんだぞ!お前も同じ道を行きたいのか?もうやめろ、こんなこと」

そう言い怒鳴るとポーラは涙を流し始めた。

親父は俺の方に視線を変える

「おい、お前もだぞデカブツ!!ノコノコと着いていきやがって…手伝いもしないならさっさと出て行け!!」

そう言うとポーラの親父は立ち上がり、ドアの方へ向かってドアを開き、俺を外へ出るように指を差してくる

「ほら!早く出て行け!!」

昔の俺なら殴っていたと思うが、大人しく従う

「チッ…あぁ分かったよ」

俺が立ち上がり出ようとするとポーラが俺の裾を掴んで俺をクシャクシャな顔で見上げるが俺はそれを振り切って外へ出た。


このままどっかへ行くのもいいが、ポーラと親父の会話が気になるから少し時間を空けてまた家の窓の近くへ来た。するとポーラと親父の怒鳴り声とポーラの弟がそれを宥める声が聞こえる。俺はよく耳を立てて聞いてみると、ポーラが泣きながらなにかを訴えている

「お母さんの夢覚えてないの?ねぇ…パパもルピーも…」

へぇアイツ、ルピーって名前だったのかまぁんな事はいいか。

「覚えているに決まっているだろ!でもお前にそれをしろと言ったか!?」

「でも…でも…」

「お姉ちゃんもお父さんももうやめて…」

ルピーが喧嘩を宥めようとしている。

「こんなクソ田舎でいるよりも冒険者として活躍したいのッッッ!!」

ポーラが泣き叫びながらそう言うと突然何かを殴った様な鈍い音が響いた。

するとルピーの声が聞こえる

「お姉ちゃんっ!大丈夫!?」

どうやら親父がポーラを殴ったらしい

「痛い…最低ッ!!」

ポーラが小さな声で泣きながら言うと親父は落ち着いた声で

「そんなに冒険者になりたかったらなればいい!だか金輪際戻ってくるな!分かったな!!」

そう言うと、ルピーが親父に怒り出す

「そんなのあんまりだよお父さん!!そりゃお姉ちゃんも悪いけど…!」

「うるさいっ!お前は関係ない話だ!もう部屋に戻っておけ!!」

そう言われてルピーは黙りだす

そしてポーラが立ち上がる音が聞こえた

「もういい…公認冒険者になってお母さんの夢を私が叶えるからッッ!」

泣き叫びながらそう言うと家を飛び出した。俺は走っていくポーラを追いかける。

「おい、待て!チッ」

ポーラは泣きながら走っていると俺に気付き振り替える

「何?見てたの?最低ッ!」

「俺行くとこねぇから、お前と冒険者続けていいか?」

そう言うとポーラは少し明るい表情を見せて涙を拭い

「はぁ?当たり前でしょ?」

ふぅ…これで食いっ逸れる事は無いな

色々とポーラに聞きたい事があるが、ここはグッと堪える。

「俺達追い出されたが…寝床はどうすんだ?」

そう言うとポーラは不思議そうに言う

「寝床って…アース•ドラゴンを倒した報酬まだ残ってるからそれで宿に泊まればいいんじゃないの?」

「宿って…ここホテルあるのか?」

俺はテンションが上がってきた。元々小さい頃から貧乏で宿なんかに泊まった事が無い。

そんな喜んでいる俺を見てまだ少し暗かったポーラも笑顔になる


そして俺達が宿について相談をしていると家の方向から人影がみえてくる。

「アレ…誰だ?」

俺が最初に気付きポーラに教えるとポーラも見る



「お姉ちゃん!待って!」

よく見るとルピーがポーラの下へやってきていた。俺達の下へルピーが着くと息を整えてから、背負っていた大きな風呂敷をポーラに渡した。

「これ…お父さんがお姉ちゃんにって…」

ポーラは驚きを隠せずに動揺しながら風呂敷を開けた。

「え!?これって…ママの装備じゃない…」

ポーラは、また涙を流しているとルピーが

「お姉ちゃん頑張ってね…また疲れたら戻ってきてもいいからね…ぼ、僕が説得するから!!」

そう言うとルピーは家へ戻って行く。その目には少し涙が浮かんでいた。


ポーラのお袋は流石公認冒険者だと思った、ポーラが防具屋で買った装備よりも格段に良い。ポーラは早速身に付けていた

「あーー………まぁ、似合ってるぞ」

重っ苦しい空気は嫌いだから言ってみた。

するとポーラも

「ママを思い出す。ママ小さかったからこの防具使い熟せて無かったのよ」

と言い、明るく振る舞っていた。

そして、俺達はとにかく今日寝る宿を探す事にした

「ヴォース、今どれくらいあるの?」

そう言われ、俺はポケットにあった硬貨を手のひらに載せて数える

「……2500ヴィントある」

「はぁ!?2500ヴィントしかないの!?それじゃボロ宿にしか泊まれないじゃん!」

こんなに怒っているが、金を殆ど使ったのはポーラだ。

「別に寝られればいいだろ…」

俺が面倒くさそうに言うとポーラはまた

「安宿とかだと虫とかいるじゃない」

「虫なんて食えばいいだろうが飯代浮いて助かるだろ」

それするとポーラは余計に怒り出した。

「それはアンタだけでしょ」

うるさいので俺は耳を塞いだ。




そしてなんだかんだ言い合いをして、何とか町へ辿り着く

「ノーザングレカンタって言うのか?」

俺はまだ文字が慣れていないのでポーラに尋ねると

「えぇ、合ってるわ。ここはね公認冒険者も立ち寄る大きな街で、中心には大きなクエスト受付所があるわ。そこだと田舎の受付所よりも質の良いクエストがあるから中級者にすぐなれると思うわよ」


俺らはまだ初級者で、中級者になるには一定以上のモンスター討伐と魔法学や薬学などの知識を問うテストがあり、それにチーム全員で受けて合格すると中級者になれるらしい。

「フランやデントにはどうやってここへ来てもらうんだ?」

フランとデントがいないと、俺達じゃ魔法学や薬学がわからないから中級者にもなれない。

「フフフ、どうすると思う?」

ポーラはドヤ顔で俺に質問してくる

「さぁ?ほっとくのか?」

ポーラは首を振る。そして、肩にかけていたアイテムをいれるカバンから紙をだす。

「じゃん!この紙に文字を書くとデントとフランも同じ紙を持っているからその紙に内容が送られるのよ!すごいでしょ!」

「へぇ〜なんかメールみたいだな」

感心しているとポーラは不思議そうに「メール?」

と問うが、面倒臭いので話題を変える

「で、もう送ったのか?」

「えぇ、デントとフランも明日ここへ来るって言ってたわ」

そうこうしているうちに俺達はやっとの思いで見つけ出した快適な安宿へつく。

「ベッツグレカンタか…」

俺が文字を読むとポーラは笑う

「ベーツグレカンタ」

発音が違うのか、なにか俺には理解できない。

料金は二人で1200ヴィントらしい

「二部屋だったのにこの値段って…ありえないな」

この世界では安い宿でも一人8000ヴィントはするなので俺とポーラは少し疑いを持っていた。

「ホントね…まぁ取り敢えず受付に行こう」

ポーラが先に宿に入っていったが、俺は恐る恐る入っていくと、受付に年老いた丸メガネで口ひげをはやした白髪の爺さんが座っていた。

「いらっしゃい」

爺さんが俺達の方へ笑顔で挨拶する

俺とポーラは軽く頷く。そしてポーラが、

「あの二部屋お願いします。」

そう言うと爺さんが「じゃあカギね」

と言い、隣同士の部屋の鍵を渡された。そして

「この右側の通路の差し当たりに部屋があるよ、料金は1200ヴィントね、」

俺が支払いをするとポーラが先々と部屋へ向かった。そして部屋の前まで来ると、ポーラが

「今日色々あったけど…一旦寝よう明日昼過ぎぐらいにデントとフランも来るみたいだからそれまでゆっくりしよう。あとここお風呂も付いてるみたいだから、それまでゆっくりしよう。あとここお風呂も付いてるみたいだし私先に入ってくるわね、みないでよ」

「誰が見るんだよ…俺はもう寝る」

ポーラが風呂へいったあと俺は部屋に入った。部屋は蜘蛛の巣とホコリが少しあるベッドだけが置かれた小さな部屋だった。

「まぁ…こんなもんか…」

600ヴィントだしこれはまだ良い方だと思う。そして俺は少し埃っぽいベットに寝入った、ベットに横たわるとすぐに眠りにつく



暫くすると激しくドアを叩く音が響いた

ドンッドンッドンッ!!

「ヴォース開けてー!!この宿なんかおかしいわ!!」

「んだようるせぇな」

ポーラの声で目を覚ます








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