第97話【旅立ちの前の一仕事(8)】
冒険者ギルドと揉めていたのはフェンナト王国と取引をしていた商人達であった。
元々、ポートフォリオンに来る商人はフェンナト王国産の魔石を求めて買いに来る商人が半数を占めていた。
たが、その魔石の取り引きが出来なくなった事やフェンナト王国が破壊の邪竜レッドクリムゾンの復活により滅んだ事で取り引きが出来なくなった為に冒険者ギルドに降ろされている商品を買い求める為に集まっていたのだ。
ゴリガンが事情を話しても商人らは引き下がらない為にこれは時間が掛かると思ってドラッグが乱暴で扉に蹴りを入れて注目を集めさせたのだ。
当然、ミノタウロスを生で見る商人達は顔を青ざめさせていたが、そんな事をどうでも良いだろう。
ドラッグが何故、商人が冒険者ギルドで揉め事を起こしているのは理由を訊ねた。
「わ、我々は商人ギルドの者だ!フェンナト王国には魔石や宝石類を買い求めに来たのだ。
だが、フェンナト王国が滅亡したと聞かされてたが、事実確認の為に冒険者を雇いたいと・・・」
「あー、納得した。けど、今のポートフォリオンの冒険者レベルだと生きてポートフォリオンまで戻ってこれる保証は出来ねぇぞ?最高階級は現在の所B階級しかいねぇし、これ見て外に出ようと思うかな?」
ドラッグはそう言うとこちらに目配せしてきて先ほど倒したアームドベアーを魔核収納から取り出した。
魔物や魔獣も脅威度の階級があり、一番高くてS階級の魔物や魔獣がここ最近のフェンナト王国領土では大量発生している状態であるとドラッグが説明し始めた。
実際に調査隊が旧・フェンナト王国を調べたが生き残りは極わずかであり、肝心のフェンナト城は瓦礫しか残っていなかったとは訊いている。
仮に地下の魔石を掘り起こしている間に魔物や魔獣に襲われる可能性はあるだろうし、冒険者を雇ったとしても現在のポートフォリオンの冒険者レベルでは太刀打ちできる魔物や魔獣ではないだろう。
そう言えば、コイツら魔物や魔獣の魔石とか宝石類をフェンナト王国に買いに来てるんだよな。
なら、ラビュリンティスの宝石類を売り付け着けてしまえば良いんじゃねぇか?
「ラビュリンティスの宝石類をここで売り捌いたら良いんじゃねぇか?冒険者ギルドだけの資金だと買い取れんのだろ?」
「ミックス、そんな簡単に買い取りできる代物ではないぞ?」
「と、言っても俺らも纏まった資金は手持ちに持っておきたいのが本音だ。冒険者ギルドを仲介役にして宝石類の交渉を頼みたい 」
「それにアームドベアー出てるンだぞ?ラビュリンティスの攻略の旅支度も整えてやらねぇとまたメルディアに怒られんじゃネェか?」
ドラッグのいう通り、下手に旅支度や資金が滞ってしまって遅れが出た際にはメルディアの拳骨が二人に落ちる事になるだろう。
実際、メルディアはこの場にいるが不敵に微笑んで商人ギルドの人間と冒険者ギルドの人間に禍々しい重圧を与えていたからだ。
少なくともメルディアの考えではエレーナの修行期間中にポートフォリオンの運営状況を確認する手伝い込みの『依頼』として受けている状態であるからだ。
簡単に言ってしまえば、冒険者ギルドも俺らに支払う資金集めに苦労している筈だからだ。
すると、一人の商人がアームドベアーの皮や睾丸等を買い取りたいという声が上がったのだ。
解体担当のオルティガンはある程度の魔物や魔獣の解体をする事はできるそうだが、地竜のような大物で全ての部分に価値のある魔獣の解体は難しいというのだ。
「すまんが、ドラッグ。この際だから地竜と黒い蛇の解体とかしやすい道具を作り出す。この商人らも宝石類以外にも買い取れる価値のある魔物や魔獣の素材は欲しいのだろう?」
「まぁ、確かに今のこのギルドにゃ、資金がねぇしそれが良いだろうな。少なくとも旅先の冒険者ギルドでも取り引きができる魔物や魔獣も限られてるが『解体済み』なら金次第だからな」
「それじゃ悪いがメルディアと調査で良いか?リザーナは好きな方に行けばいいだろう?」
「むぅ、エレーナがいないと味方がいないよ」
頭の上で不貞腐ってた顔をするリザーナであるが、確かに作業中は遊び相手をしてやれない上にドラッグらの会話が難しくて理解できない面も多い。
エレーナはリザーナ同様に感覚派であり思考も近いためか歳の近い姉妹のような関係性である為にエレーナ不在はリザーナに取っても退屈だろう。
だが、エレーナ自身にも強くなって貰いたい気持ちもある反面、リザーナにはリリスの呪いをどうにか使いこなす切っ掛けをつかんで欲しいとは願ってしまう。
取りあえずは面白そうな魔物や魔獣の生態系調査にメルディアとドラッグと行動する事を選択したので、魔核収納に貯まっている宝石類を全て取り出してフォルトやゴリガンらに交渉を任せてオルティガンとともに解体工房に向かったのであった。




