第96話【旅立ちの前の一仕事(7)】
ガーベラの転移魔法でドラッグが所有する山は険しい山道が続く場所であり、人が住むには不向きな山であった。元々、ドラッグはこの山を所有物にしたい理由から冒険者になり、稼いで買い取ったという経緯があった。そこまでして手に入れたかった理由や価値などは俺には分からなかった。
ドラッグ曰く、この山はこの辺りでも濃い魔素を発生している為に特殊な薬草や花が自生しやすい環境が整っていており、薬作りに必要な素材が手に入りやすいという利点があったからだという。暫く歩いていると、ドラッグらの根城にしていた洞窟が見えてきたのだ。そして、根城の洞窟から少し上に向かえば、山から湧き出した水が貯まって出ている大きな泉があり、麓の様になだからになっている場所があった。
確かに薬になる植物は勿論であるが、魔物もそこそこいる気配があった為に食糧には困らないだろう。
すると、草の垣根がガサガサを音を立て始めた目当ての亀の魔物・シュガータートルが姿を見せたのだ。
のそのそと動きは遅く、リクガメに似た魔物であった。ゆっくりとドラッグの側に来ると慣れた手尽きて果物を手渡しで与え始めた。
「比較的この辺りじゃ襲ってくる魔物や魔獣は少ないぞ?コイツらも手懐けたらこうなったしな 」
「リザーナ、試しに果物をあたえてみ・・・」
「おぉ!!意外に高ーい!!」
「無闇に魔物に乗るな!!シュガータートルが困ってるだろうが!!」
シュガータートルに襲われる以前にリザーナは背に乗って遊んでしまっていた。 普通に思考をしていれば大人しい魔物や魔獣と言われても警戒するだろうが、リザーナにはそれをまったくする事ができない。
魔物や魔獣と対峙したとしの危機意識が無いのだろう。
そういえば、初めてあった時も恐怖心よりも己の欲に忠実だったのはリリスの呪いも関係があるのだろうか。
シュガータートルの背から降ろすと、リザーナは持ってきた果実を乗っていたシュガータートルに与えたが特に攻撃的な姿勢を見せることなく大人しくしていた。
これならば、ポートフォリオンに連れ帰っても問題は無いだろう。
取りあえずは砂糖の問題はこれで解決できるだろう。
「そういえば、亀の魔物の甲羅は工芸品とかに使われたりするのか? 」
「あー 高度もあるから鎧とか盾にも使われるし、アクセサリーとかにも使われるらしいぞ?」
「シュガータートルは公に出してもいい魔物なのか?」
「まぁ、比較的大人しいと他の魔物や魔獣に襲われる事もあるからな。この辺りに放置しておくよりもポートフォリオンで育てた方がコイツらの為にもなるだろうしな 」
そういえば前の世界でも船乗りの食料として乱獲されて絶滅した話とかあったな。確かに手出ししない魔物や魔獣は人間が保護して共存する形のが長生きしやすいのかもしれない。
シュガータートルもドラッグの領地にいれば下手に手出しはされないだろうし、メルディアとは別の意味で容赦のない性格をしている。
下手に怒らせて敵意を剥き出された並みの冒険者では太刀打ち出来ないだろう。
すると、シュガータートル達はドラッグとリザーナの背後に移動し始めたのだ。
何事だと思っていると森の奥から四つ手の腕で二つの頭を持つ化け物の巨大な大熊が姿を表したのだ。
ドラッグやガーベラが武器を構えるが、巨大な大熊は地響きのような足音を立てながら、真っ直ぐ突撃をしてきた。
「ミックス!!やっちゃぇーッ!!!!」
「やっぱり、俺任せかよッ!?【パワーアックス】ッ!!!」
戦斧を振り下ろして巨大な大熊を一刀両断すると、リザーナは自信げにない胸を張っていた。
倒したのは俺だがリザーナ思考で考えると『使い魔の力=自分の功績』と思っているからこそこの態度なのだろう。
リザーナの態度に呆れていると、ドラッグが怪訝な顔をしていた。この巨大な大熊は【アームドベアー】といい雑食で辺りの魔物や魔獣、人など喰らう獰猛な魔獣でありドラッグも見るのは五年ぶりであるというのだ。
本来であればアームドベアーはこの森に生息していないというがこの場に現れた事を考えると森の調査をしなくてはいずれはポートフォリオンに危害を及ぼす魔物や魔獣の存在がいるかもしれないというのだ。
それならば、シュガータートルを安全なポートフォリオンに転移させてからメルディアに事情を話して協力して貰う方が良いとリザーナが提案してきたのだ。
確かにメルディアであれば魔力の流れや魔物や魔獣の知識もあるために俺よりも頼りになるだろう。
ガーベラの転移魔法でシュガータートルの群れを連れてポートフォリオンのドラッグの領地に連れて帰る事にしたのであった。
孤児院の子どもらにもシュガータートルは友好的でありサトウキビや果実を育ててシュガータートルに与え剥がれ落ちた皮を加工すれば砂糖問題は解決だろう。
次の問題はポートフォリオン周辺の魔物や魔獣がどれほど変わっているのか再調査する必要があると判断した為にも冒険者ギルドに赴いてゴリガンらに事情を話に行くと何やら揉め事が起こっていた。




