第91話【旅立ちの前の一仕事(2)】
海には前の世界では何度か釣りで行ったことがあるし、魚もある程度知っているが流石は異世界の海の魔物といったところだろう。砂浜を駆け回る四足歩行のマグロとそれを追い掛けるサメの姿があった。グランド・マグロとグランド・シャークという海の魔物らしいがグランド・マグロは犬の脚のようでグランド・シャークは鰐のような脚をしていた。
「何でサメとマグロが四足歩行で砂浜を走り回ってるんだ? 普通は海の中にいるだろう?」
「アイツらはこの辺りの海の魔物の中でも餌の分類になるからな。強者から逃げる為に進化した魔物らしいぞ?」
「これは貝殻を集めるだけでも一苦労するな。アイツら目当ての強い魔物や魔獣も来るってことか?」
「ポートフォリオンではたまに討伐依頼が出るが倒すのは楽な魔物だ。アイツらは動きを止めれば呼吸困難になる。
グランド・マグロは身が食えるし、グランド・シャークは鱗や牙が武具の素材になる。」
この辺りの砂浜では当たり前の光景であるようでポートフォリオンの冒険者ギルドが定期的討伐しているが、この二匹を餌に来る海の魔物や空の魔物もいる為、C階級冒険者パーティー向けの依頼となってるとの事だ。
広い砂浜から積み上げられた積み石から映えている苔を見る限り時間が立つとこの砂浜も海に沈んでしまうのだろう。
実際に目の前でグランド・マグロを追い掛けていたグランド・シャークが砂浜から現れた巨大なヤドカニに襲われ終い海に引き摺り困れてしまった。
その状況に驚いたグランド・マグロの群れが海に入るとそれを待ち構えていた他の海の魔物が襲い掛かっていた。
「今のうちに貝殻を集めてしまうか。またグランド・マグロが回遊してくる可能性はあるからな・・・」
「とっとと集めるか。そう言えば、この辺りに牛か山羊の魔物いるのか?」
「いや、ポートフォリオンには人間を襲わない魔物や魔獣はポートフォリオンでも飼っているぞ?牛の魔物のカウモーウ、モーロックス、ヤギの魔物・ゴートスリープがいるが・・・」
「冒険者ギルドでも飯でもパンがあったからな。保存食として重宝される物を作っておくか・・・」
少なくともスープや肉料理は前の世界とほぼ同じだろう。基本は焼くか煮って塩胡椒かハーブ類での味付けが一般的のようだ。ただ冒険者が長期的な依頼を受ける時の食事は干し肉か小麦粉を練って焼いた携帯食があるが、かなり不味いかった。
アステリオスとの契約で異世界の美味いものをこちらでも作れるようにするのが役目でもある。
一般的に使われている油はオリーブオイルらしいが色々と足りなかった。
取りあえずはフォルトとゴリガンがメルディアに締められて買った野菜の種を育てなければはならない。
【大地魔法】で育てられるらしいがハッキリといって味が悪いのだ。
そこで貝殻を砕いた石灰を畑に撒けば多少は味が変わるのでは無いかと思ったからだ。
「アステリオスの身体と力を借りてる分上手いものを食わせないとダメだしなぁ・・・」
「まぁ、魔物の貝殻自体が武具の素材として使われるから農業では使うって事はないなぁ・・・」
「そう言えばオルティガンは魔物や魔獣の解体の他にも農業の知識あるんだな。上の冒険者だろ?」
「まぁ、フェンナト王国だとな。冒険者一本じゃ孤児院をやっていけなかったからなぁ・・・」
元々オルティガンは黒い肌のせいでA階級に慣れなかったが蓄えがあった為に捨て子などを受けいれる孤児院をドラッグの身の上話を聞いてからやろうと思い、そこでセルマと出会い子どもらを養う為に農業に挑戦する切っ掛けになったそうだ。
オルティガンが冒険者家業からは離れて冒険者ギルドの解体職員兼孤児院の運営者になる事が決まっていた。
メルディア曰くゴリガンとフォルトで冒険者ギルドを回すとしても担当部署事に人が足りない事を見越してオルティガンに役職を与えたというのだ。
孤児院も冒険者ギルドが運営費を賄ってくれるそうだが、その代わりに農業関連を子どもらに任せたいというのだ。
将来的に冒険者になったり農家になったりするのは自由であるそういった生きるために必要な生業をオルティガンは子どもらに教えていきたいというのだ。
ドラッグが気に入るのもわかる気がする。オルティガンは子どもらに優しい。リザーナも懐いている位だ。
話しているうちに大方の貝殻を集めた終わっていた。
「これだけあれば大丈夫だろう。取りあえずは持って帰って試してみるか?」
「それがいいな。そろそろグランド・マグロの群れが回遊して来る頃だな」
「あぁ、そうだな。だが、メルディアがいねぇのは痛いな。こっちの知識はメルディア頼みな所があるし・・・」
「まぁ、そこは戻ってくるまでやれることをやっておくのがいいだろう。向こうも王都の跡地やその辺りの調査で時間も掛かるだろうしな・・・」
オルティガンのいう通り、レッドクリムゾンの復活により巨人族と飛竜の封印を解いた張本人であるケミカルはフラム同様孤児院で働いている。
当の本人は感情豊かな子ども達から人気であるのだ。フラムも最初こそオルティガンやセルマを受け入れていなかったが今ではかなり懐いているのだ。
それから二日後、旧・フェンナト王国跡地への救助隊と調査隊が編成されたメンバーが戻って来たがドラッグが山羊の角を囃した黒い馬を連れて帰ってきたのだ。




