第86話【互角の怪物】
【破壊の邪竜】の異名を持つレッドクリムゾンは膨大な魔力で何度も復活する『不死の力』を持った竜種が本来であれば、不死の力に耐えられずに身体が朽ち果ててしまいドラゴンゾンビになってもおかしくない能力である。
仮にアンデット系の魔物であれば、回復魔法や浄化魔法など効果のある対抗策は存在する。
だが、レッドクリムゾンには唯一の対抗策も通じない。 その為に魔石を破壊する事でしか倒す手段はないがその魔石自体も他の魔物や魔獣とは比べ物にならない強度を誇り破壊する事ができない代物であり、本体から流れる魔鉱石を切り離すだけでも至難であった。
流石のメルディアも一人ではレッドクリムゾンの巨大な魔鉱石を取り外すのは不可能である。前は聖女マリアンヌと異世界から来た勇者の力とその仲間達が時間稼ぎをしてくれた為に封印する事に成功しただけである。
悪くいってしまえば、人類と神々の力を使ってもレッドクリムゾンを封印する事しかできないともいえるだろう。
「オイ、メルディア。このレッドクリムゾンは不死の力を真核に持ってるんだろ?なら、破壊すれば・・・」
「それができたら苦労せんわ。このクソトカゲを封印せずに特に始末できとるわ。けど、その丸に見えのデッカい魔鉱石がレッドクリムゾンの心臓 何や・・・」
『そうだ。やめとけ。レッドクリムゾンの魔鉱石の硬さは俺の戦斧でも傷1つ着ける事は出来ねぇよ。それに尽きることのない魔力と復活する眷属に咥えて、元が最強格の竜種だからな。取りあえずはある程度の強さは身をもって知っておけ』
「なるほどなぁ。そりゃ、確かに面倒な相手だからな。今後の事を考えたらな・・・」
どのみち一度はポートフォリオンから離れた孤島にある【大迷宮・ラビュリンティス】に挑まなければレッドクリムゾンの眷属共々復活してしまう為に戦って攻撃パターンなど対策を練る必要はある。
少なくともメルディアとアステリオスが破壊する事が出来ない程の高度で出来たレッドクリムゾンの真核である魔鉱石をどうにか破壊する手段を模索しておかなければ対策の立てる事が出来ない。
ここでメルディアとレッドクリムゾンとその眷属と戦う事に意味があるだろう。
実際の所、今の戦力ではレッドクリムゾンに勝つことは出来ない。ならば、少しでもレッドクリムゾンを倒せる可能性を見つけておく必要はある。
今後の方針もそうだが、少なくともレッドクリムゾンを倒せる戦力を集めて大迷宮・ラビュリンティスに挑戦するのが今のところ望ましいだろう。
メルディアにかなり痛め付けられていたが、レッドクリムゾンの表情には余裕も見えたからだ。
『若作り魔女とラビュリンティスのミノタウロスか。厄介だが、我に勝てると思っておるのか? 我らの目的は天界の神々だ。お主らと戦う気は無いのだがな?』
「ハッ、それは無理な話やねぇ。神々のおる天界に行くには地上おる三幻神【海竜神レヴィアタン】・【天空神ジズ】・【獣王神ベヒーモス】の魔核が必要な筈や。つまりはポートフォリオンを滅ぼしてレヴィアタンの逆鱗に触れる必要があるからな~ ポートフォリオンを滅ぼされる訳には行かんからな~」
『まぁ、先にジズかベヒーモスの所に行き暴れる事もできるがな。我らの力を恐れた神が地上で対抗する神として産み出された魔獣だが、神々は我らに来て欲しくないみたいだからな。復讐の為にも恐怖を与えるのも悪くない 』
「流石にそれは不味いからな。悪いが邪魔させて貰う。【パワーアックス】ッ!!!」
メルディアの高火力の魔法攻撃を受けても効果がなかった為に物理攻撃を試すべく、戦斧を握り締めて突撃した。
刃を思い切り、レッドクリムゾンの巨大な魔鉱石で出来た魔核にぶつけた。
レッドクリムゾンの巨体を弾き飛ばしたが、肝心の巨大な魔鉱石で出来た魔核にはひび割れどころか傷1つ着ける事が出来なかった。
もう1つの取っておきの戦斧に備わっている火炎魔法に強化された【付属魔法印】の攻撃も効果は無いだろう。
『グワッハハハハハッ!!流石はミノタウロスというところだな!!我の巨体を弾き飛ばすとはな!!』
「ミックスはん!!危ないで!?」
レッドクリムゾンは弾き飛ばされはしたが、赤紫色の閃光の射程距離に入ってしまっていた。
全身に纏われた魔石が光輝くと閃光が身体に直撃した。
だが、身体にそれほどの痛みは感じる事はなかった為に自分の掌を見つめるとアステリオスの声が聞こえてきた。
『お前の身体には【魔法攻撃耐性】があるからレッドクリムゾンの魔力閃光は余り効果はない筈だから連発で食らえば、相当なダメージは受けるぞ?』
『これは思ってた以上に破壊の邪竜レッドクリムゾンの力を舐めてたな。これじゃ、ラビュリンティスに封じ込めても意味がねぇぞ?倒せる可能性がねぇ』
『今のところはほぼメルディアとお前で『互角』って所だろうな。キングミノタウロスの身体で【怪力無双】と【戦斧の極み】の【パワーアックス】で傷ひとつ着かないとなるとかなり厳しいぞ? 少なくとも何か特別な手段がなければな』
『特別な手段って言われもこれ以上個人での強化を挑めない俺やメルディアはほぼ積みに近いぞ?』
ほぼレベルがカンストに近いメルディアと俺はレベルアップという基礎的な強化が見込みが薄い。
レッドクリムゾンを倒すとなれば、何かしら特別な力を手に入れる必用があるがその手段の手立てがないのだ。
すると、アステリオスとは別の声が頭の中に声が響いてきたのだ。




