第74話【メルディアの激怒】
ポートフォリオンに戻ると、セルマが慌てた様子でメルディアの元に駆け寄ってきた。
ドラック曰く普段おっとりとしていて何を考えてるのかわからないタイプだと聞いていた。
メルディア相手だと弟子としての役割りを全うする姿を見てドラックはなんともいえない表情を浮かべていた。
フォルトとゴリガンには当たり強かったけど弟子のセルマには優しいんだろう。
いや、ただ単に異性に厳しく同姓に甘いのかも知れない。 セルマに警戒していたエレーナとリザーナが声を掛けている。
俺がアステリオスと話をしていた短時間であの2人から信頼を得るのは流石というべきだろう。
フェンナト王国はほぼ半壊し、残ったフェンナト城も陥落するのに時間は掛からないだろうというのだ。
だが、メルディアにはまだ余裕があった事に悪い笑みを見せていた。フェンナト城内部は複雑な作りなっている為に本命の魔王レッドクリムゾンの魔格はその地下に眠っている為に掘り起こすのに時間が掛かるだろうというのだ。
まぁ、フェンナト王国の設計もレッドクリムゾン魔格の封印もメルディアが携わっているから知っている事が多いのはこちらに取っては大きな情報源だろう。
少なくともメルディアは魔王レッドクリムゾンの能力を大方は知っているらしい。
【破壊の邪竜】の異名を持つ魔王・レッドクリムゾンは膨大な魔力を体内中に這い巡らせて全身から強力な魔力破壊光線を放ち、当たり一面を焼き払ってしまう程の威力の広範囲魔法を扱う竜種であると教えてくれた。
そんな怪物をいずれば大迷宮・ラビュリンティスに挑んで倒さなくて地上に復活すると2人に伝えたらどんな反応をするだろうか?
セルマの話ではレミーラも避難誘導を終え、フォルトの手伝いを買って出たらしくゴリガンともに大量の調味料や香辛料等を揃えてきてくれたそうだ。
防衛ラインの本部として扱われる事になったエデンの冒険者ギルドに3人の姿があった。
「ふぅ。これだけあれば大丈夫か・・・? 」
「いや、分からんぞ?メルディア様は人間の時から俺達獣人族よりも食ってたからな。ましてや 水妖魔になった分足りるか・・・ 」
「フォルト様。追加で買ってきましょうか?」
「ほほぅ~フォルト。ウチにそんな事を言えるくらいに偉くなったんやなぁ~」
気配を殺してフォルトの背後に立ち、会話を聞いていたメルディアはそのまま尻尾を握り締めたのだ。
レミーラが慌てた様子でフォルトに声を掛けるがメルディアはレミーラを見ながらフォルトの尻尾から手を離したのだ。
「あんたが噂の嫁さんか?リザーナはんらから話はきいとるで? 」
「は、はい・・・。一応B階級になったの妻にする約束を果たして貰うつもりです 」
「ほほぅ~なるほどなるほどな・・・。フォルトちゃん、ちょっと向こうでお話ししようか?
セルマはええわ。相手おるんは聞いてたからな~けど、妻にする約束はどういう事や?ん? 孕ましておいて逃げる気だったんか?」
「ち、違います!!ただギルドマスターとして側に置くのに階級がどうしても・・・って、孕まして?えっ!?ま、まさか!?」
・・・妻にする約束の前に手ぇ出してたよ。このギルドマスター。ん?てか、セルマとレミーラは妊娠してるって事になるのか?
ドラックがセルマに許可を取りお腹に触れた。
ドラックは「妊娠してる・・・」と呟くとレミーラも同じように確認するとフォルトを蔑んだ目で見つめた。
「メルディアさん。そのバカマスター少し怒ってくれません? 数日前にゴブリンの巣穴の調査にレミーラは昇級試験という形で参加しました。が、妊娠してるとは今、言われるまで気づきませんでした・・・」
「ミックス。メルディアとドラックは何でフォルトに怒ってんだ?」
「エレーナには難しいと思うが少なくとも腹に子どもがいるって事なんだ。妻にする前からそういう関係があったのに危険な行為をさせたから怒ってんだろうな・・・」
すると、解体作業を終えたオルティガンが騒ぎに気付き、近づいてくるとドラックが近づいて行くと「おめでとさん。お父さん」と腹を軽く殴った。
オルティガンは驚いた表情をしてドラックとセルマを交互に見ていた。
まぁ、こっちは良いけどフォルトの方は万が一もあった訳だからメルディアが怒るのも仕方ないだろう。ゴリガンもそればかりはダメだろうという表情をしていた。
対照的な状況を見ているとリザーナが背中に乗ってきて調味料や香辛料が手に入ったなら作れるものを作ってと言ってきた。
色気よりも食い気が会うのはリザーナらしいだろう。
仕方ない取りあえずは調味料と香辛料を見せて貰って作れそうなものを作るか。




