第67話【キングミノタウロスとの会話】
暫くすると奥の部屋に案内されると転移された魔法陣が掛かれた広い部屋に案内された。
メルディアはリザーナとエレーナには近づかないように告げると入り口に結界を張り閉じ込められてしまった。
万が一、キングミノタウロスに戻ったときに理性を失っていればリザーナ達を真っ先に攻撃を仕掛けるほど獰猛性があり無類の女好きな魔物である為に念には念を入れる形を取ったのだ。
リザーナが不安そうに見つめてくる。
「ミックス、大丈夫だよね?帰ってくるよね?」
「そこはわからん。やってみないことには何ともいえんだろうな・・・」
実際に何がどうなるのか全く見当がつかない。安易に大丈夫だ。心配しなくてもいいとは言えないのは心苦しいが少なくともエレーナとメルディアが側にいれてくれるのは安心できる。
「そんな!ミックスが無事じゃなかったら誰が私達のご飯用意してくれるの!? 後、養うって契約まだ続いてるからね!? 」
「あ!そうじゃんか!?ミックスの魔核収納に酒も食い物あるし、何より料理はミックスしか出来ねぇからな。お前絶対帰ってこいよ!?」
「大丈夫やって。記憶が戻ったら向こうの知識の食い物も食べられるかもしれんし、頼りにしとるで~ 異世界の料理とか興味あるわ~」
「なぁ、誰か一人くらい心配してくれてもいいんじゃねぇのか?」
余りにも自己中心的な言動が多くまるで心配されていない事に怪訝な顔をするとリザーナは不貞腐れた顔を結界越しに見せた。
メルディアの目論みでは魔法陣に掛かれた精神世界に通じている為にそこで記憶を取り戻す事で大迷宮・ラビュリンティスのキングミノタウロスに戻ることが出来るという話だ。
それに伴って当然危険もあるという。
仮に魂が完全に戻ったとしても本来獰猛な怪物の魔物であるミノタウロスの王・キングミノタウロスに戻った際に暴れられては流石のメルディアでも押さえ込むのは難しい。
つまりは身体から離れた際に不測の事態が起こり得る可能性は十分にあり得ることだ。
不測の事態に対策をしておくのは悪い事ではない。
取りあえずはメルディアの指示通りに転移の魔法陣に乗ると光輝き目の前からリザーナらの姿が消えてしまった。
何もない空間に閉じ込められてしまったような感覚だ。
「これから何をどうすればいいだ?」
『おぉ、お前が我の身体に入った人間か?』
姿は見えないが感覚的にわかる。声の主はおそらくはキングミノタウロスだろう。
これってキングミノタウロスの魂と話し合えって事なのか? 記憶を取り戻すんじゃなかったのか!?
どういう事だ? 一人で悩んでいると豪快な笑い声が頭に響き渡った。
『ガッハッハッハッ!!!愚か者め。そう簡単に恐れと自分の身体を差し出す間抜けはおらんわ』
「ん?あっ!そ、そうか。普通に考えたら俺の魂以外にもキングミノタウロスの魂もあるって事か!!?」
キングミノタウロスはあのメルディアでも倒せなかった正真正銘の怪物だろう。ハッキリ言ってしまえば雲泥の差はある。
だが、キングミノタウロスはこれと言って無理矢理何かをするという感じはない。
メルディア曰く獰猛な性格で女好きだと聞いていたが・・・?
『ガッハッハッハ!!!それはあっている。暴力も女も酒も好きだ。お前さんとはまったくの正反対の性格をしておったわ』
「真逆? ん? キングミノタウロスさんは俺が人間だった頃の記憶を知ってるのか?」
『当たり前だ。お前とは身体を共有しちまってるからな。
もうお前の身体は喰っちまってネェが記憶は見せて貰った。
お前さんは【地球】っていう他の世界から来た異世界人らしいな。
だが、どうにも正式な手続きはしてねぇみたいだな?』
「身体を共有している? 正式な手続き?」
良くわからんが取りあえずは元の人間の身体はキングミノタウロスに喰われた。そして魂が憑依してミノタウロスになった感じだろうか?
他の世界から来た異世界人で正式な手続きとはどういう意味だろうか?
その辺りを尋ねるとこの世界には俺がいた地球出身の異世界人が神々や人の手によって送り込まれているというのだ。
神々が送り込む時は神託をしてその地に勇者として呼び出される正式な儀式と人間が領土拡大の為に強い人間を召喚する魔法がありそれは禁忌として使用を神々から禁止されているというのだ。
だが、今回はその両方ではない『現実世界』と『裏世界』との境界線にある空間に迷い込んだ異世界人を取り込んだ事で魂が混ざってしまったというのだ。
キングミノタウロスがこうやって俺に声を掛けられるのもこの場所が『現実世界』と『裏世界』との境界線にある空間である為に話し掛けられるというのだ。
そして、キングミノタウロスは俺の記憶を蘇らす前に自分の出生と何故大迷宮・ラビュリンティスに封じ込められたのか話さなければないと告げたのだ。




