第62話【フェンナト王国の秘密兵器】
圧倒的な力を持つ巨人の戦士達はフェンナト城を取り囲むように城壁に巨大な瓦礫をぶつけ、城壁を破壊しようしていたのだ。内部は腐っても城の城壁の造りは強固であり、流石の巨人の力をもってしても中々壊すことが出来なかったのだ。
一方で巨人の首領・ボルカはフェンナト城の周りの水路に油を流し込まれ炎に護られた城壁と水路の深さを確認すると、他の城壁を破壊している部隊も此方に回すように合図を出させたのだ。壊した城壁の瓦礫を水路に投げ入れて水路を塞ぎ炎を消し直接城壁を棍棒で叩き壊す作戦を決行したのであった。
だが、フェンナトの騎士達もそうはさせまいと、フェンナト王国で作られた連射式バリスタと城壁内に設置された大砲で攻撃に出たのだ。
武装した巨人達も何体も倒されて行ってしまった。フェンナト王国の騎士団長と王直属の護衛団は万が一に備えて秘密裏に新兵器を作り出していたのだ。
「いいか!!このまま射程距離を保って攻撃の手を緩めるな!!! この時の為に用意してきた武器だ!!!出し惜しみをしている場合ではない!!!」
「矢も砲弾も無くなるまで使え!!!弓隊は毒矢を使って総攻撃だ!!!」
【ナイト】のギルドマスターから魔王・レッドクリムゾンの話を聞いていた2人はいずれはこうなるだろうと国王に戦争になった際に籠城しながら戦える各国最強の城塞にする為にフェンナト王に許可を取得していた。
傲慢なフェンナト王はいずれは近隣諸国への領土拡大を考えていたが万が一攻められた際の対策としてオルティガンが城塞用の兵器設計図を【ナイト】のギルドマスターに渡されていたものを使うとは思っていなかった。
あのスラムの問題児冒険者・ドラッグが予言した事が起こっているから少なくとも巨人の戦士はまだこれでどうにかなるだろう。
問題は魔族だ。魔王レッドクリムゾンの復活を考えている癖に一人しかいないはどう考えても不自然であったからだ。
何よりも自身は結界を張り巡らしており、戦闘は巨人任せてというのも変だ。魔王レッドクリムゾンは所謂【破壊の蛇竜】と呼ばれいた魔王の一人であった。
大昔には何人もの魔王が覇権を争い戦っていたおり、その中で勝ち残ったのが魔王レッドクリムゾンであった。
フェンナト王国に召喚された異世界からの勇者が封印をして今の時代を造り上げていたのだ。
ここで魔王レッドクリムゾンを復活させる事はフェンナト王国の滅亡に繋がるからだ。
ここのまま行けば、巨人の戦士達を倒せると確信を得ていた。
しかし、魔族はそんな巨人の戦士達を全く気に掛ける気も無かったのだ。
まぁ、少なくとも巨人とともに神々に復讐するのであれば兵力を保持したいと思うのが普通だろう。
だが、その答えは直ぐにわかった。大砲に貫かれた巨人が起き上がり身体が再生し始めたのだ。
「不死の巨人。魔王レッドクリムゾン様が求めていた圧倒的な戦力だ。人間の兵器など強力に作ろうが意味はない。神々が巨人達を苦しませる為に与えた呪い。飢餓に飢え、死ぬことさえ許されない存在だからだ 」
「なるほど。我らの不死の呪いをこう使うとはな 」
「神々の呪いを有効的に使うべきだろう?先ずは人間どもから地上を取り戻し、神々に抗う力を戦力を増やすのだ。その為に魔王レッドクリムゾン様の存在は必要不可欠なのだ・・・」
魔族は不敵に笑みを浮かべると長年飢餓感に苦しみ巨人同士での殺し合いを何度もしていた。
だが、同族を食えど飢餓感は満たされる事はない呪いだ。隔離された浮遊島には小柄な山羊がいるだけで巨人達の腹を満たすのに不十分であった。
そして、魔族からの提案でブロンテスを地上に送り込み同胞であり魔物になり下がったサイクロプスの軍勢を作り込む予定が同じく神々の逆鱗に触れて産み出された怪物・ミノタウロスが封じ後られていた大迷宮・ラビュリンティスから地上に出てきてる。
少なくともミノタウロスを仲間に引き入れる事は不可能だと魔族から聞き、魔王レッドクリムゾンの復活を優先させた。
結果的に飢餓感から解放された。 人間を食う事で腹が満たされたからだ。もっとだ。もっと喰いたい。
魔族はそんな巨人達の欲を感じ取ると魔王レッドクリムゾンの魔力を地下から吸い続けた人間の味を覚えてしまうと他の人間では物足りなくなってしまうというのだ。
先に魔王レッドクリムゾンを復活させて人間の死体を食えば良いのだ。
一方で仕留めた巨人達が立ち上がり不敵な笑みを浮かべて攻撃を再開した巨人達にフェンナト王国の騎士団も護衛団も唖然としていた。
「不味い。このままではやがて破られるぞ!!?」
「クソッ!!!転移魔法は阻害されてるッ!!何か他に手はないなの!?」
最初からあの魔族の掌で踊らされていたのだ。少なくとも圧倒的な優勢から一気に絶望に落とされた感情を喰らっていた。
徐々に他の場所から巨人達が集まり初めて来た。巨人の首領・ボルカは再び声を張り上げたのだ。巨人の戦士達はそれに応えるように吼え始めた。
そして、巨人の猛攻が始まったのだ。
『この城は暫くすれば陥落する』そう感じた騎士や護衛の者が錯乱状態に陥ってしまった。
持ち場から逃げ出す始末に陥り、中に入る上位階級の貴族達もそれに感化されて混乱が拡がっていった。
そんな人間の様子を魔族は微笑んで見つめていた。絶望に満ちた人間の感情こそが最高の美味であると噛み締めていたのだ。




