第61話【ナイトのギルドマスター】
その頃、フェンナト王国【ナイト】の領地では巨人達が侵入し、多くの冒険者と騎士達が命を落としていた。 無理もないここ数十年まともに魔物や魔獣の討伐も訓練も怠っていたのだ。
腕は鈍ってしまっている冒険者や騎士で溢れていたそんな戦力で魔族と巨人の戦士に挑もうと指揮を取って命があるだけ儲けものだろうと【ナイト】のギルドマスターは自虐的になり苦笑いして床に寝そべっていた。
まるで 巨人達の相手にすらならなかった。挙げ句意図も簡単に負傷してしまった為に冒険者ギルドに運び込まれたのだ。
【ナイト】の受付嬢であるセレスは手紙を送った相手がドラッグだと教えて貰ったが暗い顔をしていた。
彼が自分達の為に助けに来るとは思っていないからだ。
5年程前、オルティガンへの肌に対して人種差別発言にキレたドラッグがこの【ナイト】の冒険者ギルドで大暴れしてしまったからだ。
オルティガンとギルドマスターの2人係で押さえ付けるまでギルド内を目茶苦茶にしてしまうほど激怒させてしまった過去がありそれが切っ掛けでドラッグは【ナイト】の冒険者ギルドからもフェンナト王国からも姿を消したのだ。
オルティガンもフェンナト王国では5本の指に入る実力者であったがエデンの街に移籍した際には喜んで送り出してしまったからだ。
自分達が困ってる時だけ助けてほしいなどという要望をあのドラッグが受け入れる訳がない。
少なくとも自分がその切っ掛けを作ってしまったからだ。
「ごめんなさい。ギルドマスター、私のせいで・・・」
「はぁ、泣いても過去には誰も戻ることはできん。少なくとも、冒険者ギルドにいれば・・・はぁ、安全だ。はぁ、巨人と魔族の狙いはフェンナト城の地下だろうよ・・・」
「えっ、フェンナト王国の中心部にあるお城の地下ですか?」
「あぁ、オルティガンがここを辞めて出ていく前に・・・儂だけに教えてくれ・・た・・・事のだ。ふ、フェンナト城の地下に魔王レッドクリムゾンの魔核があるのだ・・・ヤツらの狙いはそれだろう」
少なくとも巨人達は魔族との契約で地上に来たが対価としてフェンナト城地下に眠っている魔王レッドクリムゾンの魔核を掘り起こすのが条件である為、地下にいれば確率は低いだろうが生き延びる可能性はあると伝える。
フェンナト王国のギルドマスターは元・勇者パーティーのメンバーであった為に例え何かあっても国を護っていく為に冒険者や騎士達を育成する事を望んでいた時期があった。
だが、従えたフェンナト王国では人種差別や階級差別のなどが当たり前で次第に楽な方へと流れていってしまった。 まだ二十代のセレスらがドラッグらと揉めるような性格にしてしまったのはそれを正そうとしてこなかった自分達のせいだとセレスの手を弱々しく握った。
ギルドマスター『大丈夫だまだ若いお前はいくらでも失敗してもいい。失敗しても経験を積んだ事は悪いことじゃない』と孫娘を見るように微笑んだ。
「・・・ギルドマスター」
「ハハッ、儂も今更この歳になって後悔している。もっとフェンナト王国の冒険者を育成に力を入れておけば良かったとな。セレスよ。悔いが残らねぇ様にお前は生きろ。
もう 儂はもう長くない。ハァッ・・・グッ!
なら、少しで次の若い奴らのために何も残してやれなかった老兵が身体って護るのが筋ってもんだろう?」
最後の力を振り絞り長年使い続けた剣を取る弱々しく肩で息をしながら起き上がった。
ギルドマスターとしてこの国を支えてきた矜持と元・勇者パーティーの一員としての誇りが残っていた。
ドラッグやオルティガンにはギルドマスターとして何もしてやれる事がなかった。
だが、冒険者は冒険してこそ冒険者であるのだ。
自分の様に後々後悔してばかりの人生を若い世代に背負わせる訳にはいない。
次の世代の為に自分は何も出来なかった。
ギルドマスターとして冒険者として依頼をこなし魔物を仲間と討伐する難しさと達成した時の喜びを教えられなかった。
国を維持する為に人として間違っている事を変える事も出来なかった。
何も変えようと行動しようと動かなかったからだ。
今からでも遅くは無いだろう。どうせ、残り少ない余生で罪が清算される訳ではないのは承知の上だ。
「止めてくれるなよ? 老いぼれの最後くらいカッコつけんとあの世からお主らを見守ってやれんからな・・・」
ギルドマスター直々の願いであり、行って欲しくないという気持ちと回復薬が不足している為に助からないという事情もありギルドマスターとしての誇りを尊重したい気持ちが入り交じりどうして良いのかセレスを含めたギルド職員や冒険者達は何と声を掛けて良いのかわからなかった。
負傷した老体を引摺りながら扉を開けて戦地に向かったギルドマスターは最後の力を振り絞り巨人への立ち向かったのであった。
その後、巨人の足音が遠くなるのを確認し、冒険者達がギルドマスターを探したが見つから無かったがギルドマスターが愛用していた剣が発見されたのであった。




