第6話【 街へ 】
【冒険者】国境をまたぐ冒険者ギルドに所属し、ギルドに寄せられた依頼をこなし、世界を駆け回る職業である。 そして、依頼は人探しから魔物退治まで多岐である。その中でも迷宮攻略は多くの冒険者の夢であり、憧れでもある職業だ。
その一方で、未知の魔物との遭遇する可能性がある危険な依頼でもあるのだ。冒険者は実力で成果を上げることにより、階級を上げることができる。 つまりはより高額な依頼を受けるためには冒険者として階級を上げる事が何よりも重要な事であるのだ。
その冒険者ギルドを纏めている『ギルドマスター』獣人族のゴリガンは頭を悩ましながら防備を装備していた。迷宮には魔物が作ったばかりの若い迷宮から何度冒険者を送り込んで探索し、迷宮名を付けられている。中でも高い階級の冒険者でも挑むのを躊躇してしまうような【怪物】が守護する迷宮が多く存在するのだ。
そして、ミノタウロスの大迷宮はその広大な広さと複雑な迷宮造りと高レベルな魔物が棲み着く危険な迷宮と大昔から知られている。
かつて栄えたミノア文明が神の怒りを買ってしまった事が切っ掛けて産み出された【怪物】ミノタウロスはその狂暴ゆえに迷宮に閉じ込められているのは冒険者で無くても誰でも知っている伝説の怪物であるからだ。
高難度の大迷宮・ラビュリンティスに挑んだ凄腕の冒険者達は多かったが誰一人として無事に帰ってきた者はいない。 そして、ミノタウロスは当時の秘宝を城から盗み出して大迷宮に蓄えているのは誰もが知ってる神話である。
そのラビュリンティスの伝説の怪物ミノタウロスがこのエデンの街に向かってきてるというのだ。ギルドマスターとして伝説の怪物相手に何処まで戦える事が出来るのかわからない。だが、街の門に急いで向かっていた他の冒険者達の様子がおかしかったのだ。
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めんどくさい事になった。まさか、街に近付いただけで槍やら剣を向けられるとは思っていなかった。
だが、それよりも怪我人の手当てが先だろう。リザーナと商人が交渉しているが、自分がいる為に全く話し合いになっていないがわかる。すると、大柄な男が冒険者達を割って姿を表したのだ。
「お前達!! 何をしているのだ!!?」
と、怒鳴り付けると男の方を冒険者達が見る。
「ぎ、ギルドマスター! いや、り、リザーナがミノタウロスを仲間にしたとか訳のわからないことをいってて・・・」
「だから、本当なんだって~!!!」
「そ、それよりも荷馬車に護衛を依頼した冒険者達が怪我をしているんだ!彼女らは私達を助けてくれたんです!!」
少しは話が出来る人間が来たようだ。怪我の具合から早く治療しなければ手遅れになるだろう。
「リザーナ、コイツら倒して良いのか? 話し合いにならねぇなら『暴力で理解させる』のが手っ取り早く済むだろう?じゃねぇと、荷台に乗ってる冒険者どもをさっさと治療しなけきゃ手遅れになるぞ?」
「み、ミノタウロスが喋った?いや、そ、そんな事よりも治癒術師は怪我人の手当てを優先しろ!!! 」
ミノタウロスが喋った事に驚きはしたが、他の冒険者とは違いしっかりとやるべき事を指示できる辺り信頼してもいい男であろう。リザーナのいうにはこの男の名は『ゴリガン』という冒険者ギルドの長であるギルドマスターであると紹介された。
流石にギルドマスターからの指示には他の冒険者達も従うしかないと思ったのだろうか。荷馬車に横たわっている冒険者達を治癒し始めたのだ。
流石にここで冒険者達と戦う意味は無いがギルドマスターならば大方の事情を話しておけば何とかなるのではないだろうか? そういえば、リザーナを置き去りにしていった冒険者らの姿は見えないな。
「おい、ゴリガンだったか? リザーナと迷宮に来た奴らはここにはいないのか?」
「リザーナと迷宮に・・・?いや、そもそもこの街の冒険者に高難度の大迷宮・ラビュリンティスに挑戦できるレベルの冒険者はいないぞ? 」
「高難度の大迷宮ラビュリンティス?なんだ?それは? 俺は少なくともリザーナ以外に3人の人間がジャイアント・マンティスに襲われた所に居合わせたんだが?」
「色々と話が合っていないようでこちらも困っているのは事実だ。だが、一つだけ確認したいのは何故、高難度の大迷宮ラビュリンティスの守護者であるミノタウロスがこの街に来たかだな」
「そこのドエロフに名付けされて主従関係を成立させてな。リザーナに【ミックス】って名前を授かった。
嘘だと思うなら、リザーナの冒険者カードを確認すれば良いだろ?」
唖然としながらもゴリガンはリザーナから冒険者カードを受け取り確認すると、リザーナの冒険者カードにはミノタウロスの名前が記載されているからだ。
そして、狩人であった筈が魔物使いに職業が変わっているのを確認したゴリガンは開いた口が塞がらないという表情を見せていた。
そういえば、リザーナの借金の件もギルドマスターならば知ってるだろう。そう考えていると、助けた商人がリザーナに金貨を渡すとリザーナはそれをゴリガンに渡したのだ。
「はい!! これで借金は無くなったよね!?ゴリさん!!!」
「確かにリザーナが失敗した違約金はこれで足りるな。だが、リザーナ。お前は『誰と』大迷宮ラビュリンティスに挑んだんだ?」
「えっ? 普通に迷子になって迷宮であった人らと行動してただけだよ?」
リザーナの話を要約すると持ち前の方向音痴で誤って迷宮に入ってしまい、たまたま出会った連中と臨時パーティーを組んで迷宮攻略をしていた所にジャイアント・ギガマンティスと戦闘になった。そのタイミングで自分が現れて名前も知らない連中に生け贄にされた。
「大体、高難度の大迷宮ラビュリンティスはここから南にある孤島だぞ? ミックスはどうやってここまで?」
「俺が知るか。適当に通れる所を手当たり次第歩いてたまたまリザーナに出会っただけだ」
どうやら本来自分がいる迷宮は孤島にあるらしい。そして、その場所に行くだけでも困難で激しい海流が流れで船では近づく事が出来ないというのだ。
「だが、リザーナと出てきた場所には俺の戦斧に同じような紋章が入っていたぞ?」
「んー色々と教えなければならない事が多そうだな。 だが、伝説の怪物を街に入れるのは難しいかもな」
「・・・余程の事がない限り無闇やたらに人を襲う趣味はない。 少なくともリザーナが主だぞ?
脳内エロフのリザーナだぞ? こっちがしっかりしないと色々とダメだろ?」
「ミックス、酷くない!?確かにミックスの○○○ガン見したけどさー!!!」
リザーナの言い分にゴリガンはため息をついて暫くまって欲しいと伝えたのだ。
少なくとも、ギルドマスターの権限だけでは伝説の怪物を街に入れる許可を得るのは難しいというのだ。
取りあえずはゴリガンにここで待って欲しいと言われそれに従うしかない。他の冒険者達も商人の荷馬車に乗って治療をしている治癒術師を街の中に戻ってしまい商人もお礼をいい頭を下げて行ってしまった。
暫くは街の外で大人しく待つしかないか。既にリザーナは早々に飽きて人に登ってきた。すると、街の子どもらが門の中からこちらをじっと見つめているのに気が付いた。おそらくはリザーナが羨ましいのだろうか?
「お! 皆~!大丈夫だからおいで!!リザーナお姉さんの相棒だから大丈夫だよ!?」
「リザーナ自身が信用ねぇから来ねぇんじゃネェのか?」
迷宮内で出会い付き合いが長くなり少なくともリザーナというエルフがどういう性格なのか大体理解する事が出来ていた。
リザーナはその言葉に怒ったのか頭を殴るが痛くもない。 寧ろ、丁度良いくらいの力加減だった。
すると、そんなリザーナとのやり取りを見ていた子どもらはおそるおそる近付いてきたのであった。
当然、見張り番がそれを止めないわけはないが小さいうえにすばしっこい子どもらは見張り番の大人をすんなりと変わりして自分のもとまでたどり着いたのであった。
そして、ゴリガンが街の権力者達に事情を説明して街の門に戻ってくると子どもらを肩や頭に乗せて近くの草原を走り回っている姿に唖然としていた。
伝説の怪物が子どもと普通に遊んでいるではない。
ゴリガンは悪い夢でも見ているのか目頭を押さえたが、リザーナは普通にあのミノタウロスと話している。
少なくとも子どもらに危害をくわえずに遊んでいるだけである為に見張り番をしていた者をどうして良いのとゴリガンに尋ねる始末であった。
そして、子どもらが満足し終えるまで草原を駆け回っていたが、ゴリガンに声を掛けられて近づくとこの街に入る事を許可された事を伝えられ、ゴリガンが案内されて冒険者ギルドに案内されると思ってたがどうにも様子が変であった。