第53話【 地上に出るまでにため込んだモノ(1)】
遺跡の調査結果としては確かに高難度の大迷宮・ラビュリンティスに通じる場所まで一直線に通じる通路を作ってしまってしたのだ。
少なくとも地上に出てから1ヶ月以上はそのままであったが特に変わった様子は感じなかったのだ。
当時の様子をドラッグに訪ねられた際にリザーナの他にも冒険者がいてリザーナを置き去りにしていったやつがいたが、エデンの街にはいなかった事を伝えると冒険者崩れの野盗のパーティーかもしれないというのだ。
実際に壊して進んだ場所や通った場所は臭いで覚えていた為にさほど苦労する事はない。
「何人か既に中に入ってるな。 足跡が多いし、エデンの町外れに根城をもってる連中が入ったのかもしれないが・・・」
「あぁ・・・なら、茶色くて俺よりもデカい蜥蜴や黒い蛇とかがいる森林に迷い込んだかも知れねぇな。
たまたま岩石の隙間が通れそうで俺が通ってきたからな。人間なら、余裕で通れる筈だろう?」
「・・・ん?おい、待ってミックス。
今、お前『茶色くて俺よりもデカい蜥蜴や黒い蛇がいる森林に迷い込んだかも知れない』っていったよな?」
「勿論だが、旨そうだったから首を戦斧で飛ばして食おうと取ってあるぞ?」
魔核収納に収納していた茶色い蜥蜴は旨かった為に保存用に何匹か取っておいた。 その一匹の顔を出すとドラッグは手で顔を覆った。
「・・・これどうするんだよ? フォルトやゴリガンに報告したら間違えなく、リザーナは怒られる案件だぞ?」
「えっ!?な、何でそうなるの!!?」
少なくとも使い魔の責任は魔物使いであるリザーナに発生する。
その使い魔が何れだけの品を持っているのか把握しておく必要がある。
実際にドラッグもガーベラとフェローラの一件である程度の魔物使いとしての知識はある。
だが、ダンジョンボスを使い魔にした事例は聞いたことがない。
特例で許される可能性はあり得るが高難度の大迷宮・ラビュリンティスは謎の多い場所である為に内部に生息する魔物や魔獣などは貴重な素材になるというのだ。
少なくとも食べるために取っておいただけであるのでそう言われても魔物の感覚からすれば生で食べようが調理しようが食べられればどちらでも良いというのが本音であるが、思った以上にリザーナがほぼ冒険者として何も出来ないと言ってもいい為にこう結果になっただけの事である。
普通の使い魔にする為には魔物や魔獣を何らかの形で従わせるか納得させる必要があり大体が魔物や魔獣を屈服させて従わせる事が多いらしいがドラッグのように契約や魔力に引き付けられる可能性もある為に必ずしもそれが正しいとは言い切れない職業でもあるのだ。
「少なくとも【契約】って面ではリザーナを養うっていう口約束が条件を満たしたからかもな・・・。
外に出れたとしても魔物である以上人と行動をする方が得だろう?」
「うーん・・・契約で魔物使いを養うってまた珍しい事だな 」
元々、崩れていた穴を土魔法で埋めながら戻り、リザーナとの契約内容などをドラッグに詳しく話すと地上に出てから慌ただしかった為にそこまで気が回らなかったがどうにも俺とリザーナの契約は色々とおかしいらしいのだ。
少なくともガーベラとフェローラはドラッグの体液や精液を対価にしている契約であるが俺の場合はメリットのない契約であるが為にリザーナとの契約破棄も可能ではあるというのだ。
と、言っても今更リザーナ以外と契約する必要があるのか? 少なくとも飯や金銭などを管理するのが魔物というだけで人間でもそういうことをしているとガーベラから教えて貰った。
仮に貴族とか王族と契約してもまたダンジョンボスとして財宝を守護するくらいならリザーナの面倒をみる方がまだ得だろう。
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ポートフォリオンの冒険者ギルドに戻ると既にエデンの街からゴリガンが到着しており、ドラッグが途中で聞いた事情を大方話していたが、リザーナは怒られるとわかって角を掴んで降りようとしない。
だが、ゴリガンはフォルトに伝説のミノタウロスやブロンテスの一件で慌ただしくちゃんと話を聞く機会を儲けてやれなかったギルド側にも問題があると宥めるとフォルトもそれを容認してくれたのだ。
取りあえずは『茶色くて俺よりもデカい蜥蜴』や食ってみて旨かった魔物や魔獣と街で売れるかわからないが取っておいた鉱石や貴金属類などを全部出してみたのだ。
「・・・ミックス。ダリル伯爵に献上したのは一部だったのか?」
「あぁ、と言うかまだ金貨は入ってるが出すか?」
「ミノア文化の財宝を舐めていたなぁ~・・・」
「肉以外全て買い取りして貰えるか?」
少なくともエデンやポートフォリオンの冒険者ギルドで全て買い取りしたら破産すると言われてしまった。
『茶色くて俺よりもデカい蜥蜴』は旨いだけではなく貴重なドラゴンだというのだ。
生で食ってあの味ならやたら何れだけ旨いのだろうと口に出していうとそもそもドラゴンの鱗を切れるナイフがないと言うのだ。
ならば、使えない武器として取っておいた物の中にないか試しに出すとゴリガンとフォルトは頭を目茶苦茶痛めていた。




