第51話【初ダンジョン踏破】
ガーベラが設置した転移魔法の魔法陣でポートフォリオンの冒険者ギルドが管轄している訓練場に戻るとフォルトが大多数の騎士団や冒険者達を広場に集めていたのだ。余程切羽詰まっているのか、こちらには気づかないでいるとドラッグが近付いてケツに蹴りを入れてこんだのだ。
ドラッグに蹴られてやっとこちらに気づいたフォルトはレミーラを見ると駆け付けて抱き締めたのだ。
「レミーラッ!!?だ、大丈夫だったか!?」
「だ、大丈夫だけど他の冒険者もいるからその、は、恥ずかしいです・・・」
「コラ。テメェの女の心配するのはわかるがギルドマスターの役割忘れるなよ?後でゴリガンにこの事はチクるからな?」
「ドラッグ!!? やめろ!!絶対に酒の席で弄られるだろうが!!!」
ドラッグはギルドマスターとしての仕事よりもレミーラ救出に尽力していたであろうフォルトを弄るとそれに反応して見せた。
ある程度弄ると真面目な顔をして新迷宮攻略制覇を報告すると他の冒険者や騎士達が驚きを隠せない様子でいた。
報告にあった大蟻は既に群れを率いる女王蟻やその警護や身の回りの世話をする軍隊長蟻や群れの指揮を取る中隊長大蟻といった上位種がいる中で全員が無事で帰ってくる事などあり得ないからだ。
良くても大怪我をして戻ってきて情報が少し得られれば冒険者としての最低限度の仕事ができたといってもいいのだ。
難易度がより高いかは迷宮に生息する魔物や魔獣の驚異度や階層の深さによって変わってくる。
例えB階級の試験官がいたとしても乗っ取られて地形も変わった迷宮を攻略して戻ってくるのは至難な事であるがドラッグはレミーラと冒険者カードを見せるとフォルトは慌てて冒険者ギルドの受付嬢に水晶を持ってくるように伝えたのだ。
不思議に見ていたリザーナがこれから何をするのか尋ねた。
「これで冒険者ギルドに迷宮攻略された事で試験迷宮としての登録ができるんだよ・・・。 俺も前にエデンの街で登録しただけだからこれで2回目だな」
「少なくとも迷宮攻略は普通の冒険者では踏破する事も難しいから・・・。ある意味では憧れであり不可能な事なのよ?」
「なるほどな。迷宮の場所を把握しておけば、それを目的にくる冒険者相手に商売も出来るから踏破された迷宮は貴重なのか・・・」
「・・・っつっても場所が場所だからなぁ。少なくともゴリガンとフォルトと話し合ってどうするかだな。今回は俺もいたけどミックスらにも助けられた所もあるし難易度設定は高めになるかもな・・・」
高難度の大迷宮・ラビュリンティスのダンジョンボスであるミックスやエレーナの存在も大きかった事や実力もだが、全体的に冒険者としてレベルが高かった事も評価している為に『階級上げる為に楽な迷宮設定』とはいないのだ。
それにドラッグは明日はミックスとリザーナには壊した遺跡の調査に強制参加させると睨み付けられた。
仕方ない。間違えなく【ゴブリンの巣穴】に大蟻達を招き入れた原因を作ったのは俺だからだ。
少なくともリザーナを信じるのは危険だ。
ドラッグやフォルトから『あくまでも常識的な知識』を覚えておかなければいずれ何処かの国と戦う事になるかもしれない。
調査報告を含めて冒険者ギルドに向かう事になったが、リザーナは寝てしまっていたのだ。
フォルトとドラッグは魔物使いとして頭に手を置いてため息をついている。
わかるが、リザーナに任せるとろくな事にならないのは俺も良くわかった。少なくともミノタウロスだけで人間の知識を着けないと俺らの立場ヤバくなりそうだ。
「ドラッグ、フォルト。リザーナよりも俺に『人間社会の常識とか硬貨制度』について教えてくれるか?勿論冒険者としての常識もだが・・・」
「いや、使い魔がそこまでするのか?」
少なくとも自分に抱っこされて爆睡しているリザーナに全てを任すのはハッキリいって色々と問題がある。ならば、自分が全てをやった方が確実なのではないかと二人に問い掛けた。
2人は使い魔の腕の中で爆睡しているリザーナを見て交渉するミックスと見比べて『確かにそっちのが安心かもな・・・』と口に出していた。
もし、リザーナが起きていたら文句を言っていただろうが、これ以上問題事を起こされる可能性を減らす方が戦うときも楽だろう。
・・・少なくとも冒険に出るとしたら食事の準備も俺がするならほぼ人間の子育てと変わらないだろう。
リザーナの使い魔になったのが運のつきだと諦めるしかない。




