第45話【 フォルトとの約束(12)】
ドラッグは万が一に備えて特殊な香水を自作して身に付けており、ガーベラとミックスはその匂いを頼りに向かっている。
少なくとも鼻の良い魔物や魔獣、そういった種族でしか役に立たないだろう。
ドラッグが貴族や王族が嫌いなのは知っていたがフェローラは人間自身も嫌っているというのだ。
貧困だから肌の色や魔物や魔獣を従えているからなど偏見による差別をする癖に都合の良い時ばかりすり寄ってくる。
勿論だが、冒険者として問題児として扱われているのにも理由があった。
ドラッグはB階級に上がった際には既にA階級以上の実力と薬剤師として腕をフェンナト王国にも噂になっていたのだ。
当然であるが、王族や貴族が欲しいのはどんな怪我や病も完治してしまう伝説の秘薬・【完全回復薬】を作れる薬剤師の冒険者は稀有な存在であるからだ。
だが、ドラッグはフェンナト王国を収める国王の話を無視してA階級の昇級をしないと当時、拠点にしていた【ポーン】の冒険者ギルドからの要望を断ったのだ。
結局、ドラッグはフェンナト王国を守護する【ポーン】の冒険者ギルドで問題を起して【ビショップ】・【ナイト】・【クイーン】と問題児行動を起し残った【ルーク】に移動になる前にエデンの街にある冒険者ギルドに移動したのだ。
元々ドラッグはエデンの街の裏の山を買う資金を集める為に冒険者になる稼いでいたというのだ。
「それにフェンナト王国の冒険者ギルド自体がドラッグは嫌いなんだって・・・」
「まぁ、そりゃな。人種差別、種族差別とか格差のある国だとな・・・」
「ううん。それもだけど、フェンナト王国の受付嬢はお金好きだから稼げる冒険者と身体の関係を作ろうとするんだって・・・」
「・・・あぁ、簡単に言えば受付嬢の頭はリザーナ並みって事か?」
実際に身体を売ろうとしていたリザーナを白い目で見るとそれくらいしか売れるものがないとない胸を張っていた。
だが、ドラッグはガーベラとフェローラとはそういった関係を持っているが何故受付嬢達はダメだったのか尋ねると自分勝手な事ばかりで冒険者を単なる金蔓にしか思ってないクソビッチだからだと答えたのだ。
少なくともこの昇級試験を終えたらここにいるパーティーは全員フェンナト王国から声が掛かり同じ目に合う可能性が高いというのだ。
すると、姉妹がフェンナト王国で護衛団にいるキーンとリーナは自分等はどうなるのかフェローラに尋ねた。
「少なくともレミーラとフィリップのパーティー以外は種族差別でダメだろうね。残念だけど・・・」
「そ、そんな・・・ターシャさんもギガルさんもいい人なのに」
「そ、そんなの絶対におかしいわよ!!」
「普通ならね? けど、それがここを収めてるフェンナト王国の規則で冒険者として階級をあげたいなら綺麗な肌や身分、種族じゃないとA階級にはなれないの・・・」
フェローラの言葉にキーンとリーナは貴族に産まれた事が誇らしかったが今こうやって迷宮に入られる切っ掛けを作ってくれたターシャやギガルが種族が違うという理由だけでA階級に上がれないという事実に落胆してしまった。
だが、ターシャはそんな2人を見ると豊満な胸に2人を抱き寄せたのだ。
少なくともキーンやリーナは貴族出身だけど自分達を受け入れてくれただけでも嬉しいから良いというのだ。
その気持ちはギガルも同じであり、2人の頭を撫でた。
一方でダークエルフのゼギラがリーダーをつとめるパーティーはゼギラがいないならフェンナト王国に従って冒険者をするくらいなら辞めた方がマシと笑ってる。
ドラッグの影響もあるだろうが、冒険者としての誇りをここにいるメンバーは持っているだろう。
そんな和やかな雰囲気を一瞬にしてぶち壊して警戒体制を取らなければならない事になった。
聞き慣れてしまった金切り声を上げて群れを指揮を取っている中隊長大蟻が3体も現れたのだ。
しかも先ほどの群れよりも大群で待ち構えていたのだ。
部屋の作りからして恐らくは先ほどの階層で倒せなかった魔物や魔獣が余裕を見せて奥に入って行く事に大群で仕留めるという感じなのだろう。
「ミックス!!さっきの火炎放射で焼き払ってよ!!!」
「スマン。アレ使うと魔力消費半端なくて暫く使えそうに無いんだわ・・・ 」
「え~!!!んじゃ、この大群どうするの!?」
「殺るしか無いだろう?」
それぞれが武器を構えて襲い掛かってくる大群の大蟻達と交戦を開始したのだ。
先ほどとは違ってレミーラ以外の冒険者達も攻撃に応じ、連携をしている。
中でもキーンとリーナは先ほどのミックスの考え方を自分にも出来ないか試したいと思ったからだ。
折角パーティーに臨時とはいえ加入させてくれたターシャやギガルの為にも成長した姿を少しでも見せたいと必死であった。
だが、冒険者として経験値のない2人をカバーしながらの戦闘はアマゾネスとリザードマンでも難しい。
壁を駆け上がり上から攻撃を仕掛けていた大蟻にキーンは気づかなかった。
キーンは仰向けに倒されてしまい、大蟻の下敷きになってしまったが、強力な顎をドラッグから貰った剣で何とか防いでいるのがやっとである。
ターシャもギガルも駆け付けようとしたがほかの大蟻達が進行を妨害してしたのだ。
キーンを押さえている大蟻は脚で剣を弾き飛ばすと、無防備になったキーンにガチガチと強靭な顎を動かして威嚇をして攻撃を仕掛けた。
リーナがキーンの名前を叫ぶとのし掛かっていた大蟻が壁に吹き飛ばされたのだ。
「何だ。もう諦めるか?坊っちゃんよ?」
「ど、ドラッグさん!!!?」
「てっきりもう食べられちゃったと・・・」
「俺を喰らったら食中毒起すだろうな~」
冗談をいいながらも大蟻との戦闘を行いながら、キーンが落とした剣を拾って渡すと再び戦闘を再開したのであった。




