第44話【 フォルトとの約束(11)】
本来の目的である【肉体強化】と【武装強化】による体内の魔力操作の習得はまだ出来ていないし、 今の現状は最悪であるのは間違いないだろう。 このドラッグ不在の中で相手は統率の取れた大蟻の大群である。
だが、リザーナの指示に向かって突撃して戦斧を振り回して大蟻達を力ずくで蹴散らしているだけであるからだ。
ドラッグの安否も心配であるが先ずはこの状況を乗り越えなければドラッグの救出に進むことも困難であるのだ。
ここにくる前にフォルトから聴いた大蟻は火魔法に弱いのはわかっているが土魔法しかまだ使えないのだ。
少なくとも何かヒントがあればコツを掴める切っ掛けになるのではないかと考えながら戦斧を横に振り回して一掃していく。
すると、レミーラが火魔法が付与された【付属魔法印】の剣に炎を纏わせてると剣から炎を放ったのだ。
戦斧に炎を纏わせるイメージも試したが出来なかった。
指定された魔法が付与された【付属魔法印】に魔力を込めて放てるなら出来ても良い筈だろう。
そうか。その手があったか! それならいけるかも知れない。
「レミーラよ!感謝するぞ!!思い付いたぞ!! 火魔法を使う方法をな・・・ッ!!!」
「火魔法って・・・。ミノタウロスさんは土魔法をさっき使ってましたよね?」
確かに土魔法のがまだ特ではあるの事実であるあるがドラッグやレミーラと違って魔獣に近い怪物であるミノタウロスの武器は怪力や大柄な戦斧だけではない。
ブロンテスを倒した際に戦斧を使った事で大きな勘違いをしていたのだ。
レミーラが剣を使って魔法を放ったように戦斧に纏わせる事が出来ないのであれば、別の場所に魔力を集中させればよいだけの話だろう。
魔獣が人間の真似事をしても出来る事には限度がある。
確かに戦斧には火魔法が付与された【付属魔法印】が備わっているのはだろうが魔物が人間の真似事をしても魔物や魔獣の生命力や力の源は魔力そのものであるからだ。。
つまりは別に武器だけに魔力を流し込むのは人間が魔法を使うときにイメージとしてそこに集中してためやすいという理由からだろう。
だが、魔物や魔獣にある魔核そのものに付与されていると考えれば、別に武器に魔力を流し込んで使う必要は無いだろう。
体内から炎を吹き出すイメージさえあれば出来る筈だ。
つまりは体内から魔力を放出するなら・・・。
「火炎の咆哮!!!!」
「口から炎を吹き出すってありなの!?ドラゴンじゃないのに・・・」
体内にため込んだ魔力を炎に変えて口から放出したのだ。 ただ、難点なのは熱が籠る為に鼻と口から煙が出てくる。
そして、何より魔力を溜めて放つのにかなり時間が掛かってしまうという弱点がある。
大蟻なら戦斧を振り回して倒した方が多く倒せるだろうし、いざという時に使用しよう。
突如として火達磨にされた大蟻達は金切り声を上げてその場で転げ回り、他の大蟻にも火が燃え移ってしまった。
だが、直ぐに群れを指揮を取っていた中隊長大蟻が燃えいた大蟻達を土魔法で埋めてしまったのだ。
これで少しは統率が乱れて隙が出来ればいいと思っていたが少なくとも部隊を率いるだけあって対応も速かった。
すると、中隊長大蟻はミックスを危険視して突撃してきたのだ。
金切り声を上げて襲い掛かってくるが、ミックスは少しだけ膝を曲げるとレミーラがミックスの背中を踏み台にして中隊長大蟻を一刀両断してしまったのだ。
「これで指揮を失った!!! 中隊長大蟻が倒された統率力が落ちるわ!!!」
「なら、こっから反撃と行こうか・・・!!!」
ミックスとレミーラが中心になり、残りの大蟻達の討伐に他のメンバーも加わりほぼ全ての大蟻達を撃退する事が出来たが、下に落ちたドラッグを心配したガーベラが先行して行ってしまったのだ。
だが、ガーベラとは対照的にフェローラは落ち着いていたのだ。
気になったリーナがフェローラに尋ねた。
「フェローラさん!ドラッグさんが心配じゃないの!!? 」
「心配だけど、私が枯れてないならドラッグは無事だから・・・」
「?そりゃどーいう意味だ?」
「私の力の源はドラッグの【魔力の籠った精液】だからドラッグの魔力を使ってるの。 だから、ドラッグが死んじゃったら私も枯れて消えちゃうの・・・」
フェローラの言葉に一部の男性陣と女性陣が頬を染めたのだ。
【魔力の籠った精液】という言葉の意味を深く考えれば当然であるだろう。
だが、逆にフェローラがまだ安心しているという事はドラッグは無事だという証拠でもあるのだ。
取りあえずは下に落ちたドラッグとの合流を目指しながら奥へと歩みを進めたのであった。




