第42話【 フォルトとの約束(9)】
前方でミックスとエレーナが大暴れしていた為に大蟻の群れの指揮を取っていた中隊長大蟻の一匹が後ろの大穴から出てくると金属音のような音を出すと大蟻の群れが一斉に撤退したのであった。 大蟻の群れの指揮を取る中隊長大蟻は統率力に長けた蟻の魔獣であり、厄介なのは一言で大蟻と呼ばれているが、どういった生態系でどう進化するのか詳しくわかってないのだ。
わかっているのは本来ならば、群れを率いている女王蟻に献上する餌の量や質により気に入られる事で王女に子種を付ける権利が優先されるからだ。
巣に侵入してきた外敵は部下に任せて群れを率いて女王蟻を護るのが中隊長蟻の役割だと言われていたからだ。
「ったく、新迷宮攻略は過去の情報が役に立たねぇからなぁ。色々と面倒だぜ・・・」
ドラッグはそう呟くと喧嘩煙管に粉薬を入れて煙を吹き出したのだ。何をしたのかキーンが尋ねてきた。
「とりあえずはこれであいつらの嗅覚を狂わせた暫くは休める。フェローラ見える辺りの穴を蔦で塞いでくれ」
ドラッグの指示に従うと見える範囲の通路を塞いで一度休憩するというのだ。
少なくとも、別の入りから入り込んで背後を取られる可能性もあるために全てだ。
もしも、再び攻め込んだ時は蔦を切る音や壁を砕く音で大方はわかるというのだ。
すると、女魔法剣士のレミーラがドラッグの現在の判断を尋ねてきたのだ。
このまま攻略を進めるのか一度離脱して人数を揃えて再度挑むのか判断が問われるからだ。
ドラッグが手で口元を抑えて考えていると笑いをバリボリと音が聞こえた。 音の正体はミックスであった。
「ん?おお、すまん。暴れたら腹が減ってな?」
「マジか、ミノタウロスは蟻も食えたのか?」
「まぁ、食える魔物や魔獣は食うぞ? 蛇とか蛙とかな。虫系だとローチとか?」
「それはいいけど、ミックス。ダンジョンボス経験者のミックスに訊きてぇんだが、この蟻の巣に懐かしさは感じるか?」
ドラッグの問い掛けに自分がダンジョンボスを務めていた高難度の大迷宮・ラビュリンティスにているのか尋ねたかったのがわかったが、この場所にはそんな想いは一切ない為に首を横に振った。
「この蟻は群れで来るけど腹の足しにならねぇんだ世なぁ。
さっきの群れの指揮を取る中隊長大蟻もパシリだろう?」
「はっ?群れを指揮を取る中隊長大蟻がパシリだと?」
「群れを率いて数を増やしてる女王蟻の周りには軍隊蟻っていう攻撃蟻がいてそれの進化個体の軍隊長蟻が複数体いる。
酸性の毒飛ばしてきたりするからめんどくさいぞ?」
「あぁ、高難度の大迷宮・ラビュリンティスはもう誰も攻略は出来ねぇだろうな。
俺でも知らねぇ魔獣がウヨウヨいるなら手に終えんぞ? 少なくともまだ火魔法が効果あれば良いがな」
ドラッグが一息着くと、B階級冒険者の中でも実質トップクラスの位置にいるであろうドラッグの疲労と思考をみる限り、新迷宮攻略は困難なものであり未知の生物と戦わなくてならない場所なのだと他の冒険者達は生唾を飲んだ。
少なくとも冒険者の中でも異端児で問題行動を起こしているドラッグがここまで慎重に行動をしているのは誰の死なせたくないのとキーンとリーナに冒険者のメリットとデメリットを本気で身をもって教えようとしているからだ。
おそらくは魔法が付与された【付属魔法印】の武器をただ渡したのも気まぐれではなく攻略に必要になると直感的に感じたからだろう。
ドラッグは魔力性質がいい武器を渡している筈だとガーベラはいうのだ。
人間も魔物、魔獣にも魔法の素質に差が大きく出てしまう為に全員が魔法が付与された【付属魔法印】を使いこなせる訳ではないからだ。
基本の【火】・【水】・【土】・【風】の4種類から1種類だけしか極められない場合もあるしら複合属性で複数の魔法を使いこなす人間や魔物もいるというのだ。
その為、ゼギラの槍には水魔法が付与された【付属魔法印】を渡した。
風魔法の適性が強いリーンのナックルダスターには風魔法が付与された【付属魔法印】を。
そして、キーンには火魔法が付与された【付属魔法印】の両手剣を渡したと話したのだ。
これから先の事を考えたらレベルアップも必須であるが体内の魔力の性質を理解して魔法が付与された【付属魔法印】を使いこなせる冒険者は増やした方がいいと思っているからだという。
ドラッグは魔法の鞄から回復薬と魔力回復薬の瓶をそれぞれのパーティーに渡したのだ。
少なくとも昇級試験が新迷宮攻略となれば功績はデカい上に蟻達が蓄えているものの中に高価な代物や貴重な素材が回収できるかもしれないとドラッグは疲れ切った冒険者達にやる気になる発言をし始めたのだ。




