第38話【フォルトとの約束(5)】
新迷宮攻略にこのメンバーで乗り出すと決断を下した。理由は至極単純なものである。 エデンの町やポートフォリオンには自分と同等の実力を持つ冒険者がオルティガンとセルマしかいない事である為にB階級冒険者不在のポートフォリオンには自分と同等の冒険者を少なくとも育成しなければ、この先何かあったときにフォルト頼みになるのは目に見えているからだ。
「・・・少なくともキーンとリーナはここでポートフォリオンに戻っても良いぞ? 魔物や魔獣と戦う恐怖を身をもって知ったろ?」
「・・・ッ!!!今更嫌よ!!ここまできて逃げ出すなんて!! 街の人が日か被害に会うかもしれないのに」
「そうだぜ!?それじゃ俺らは壁に閉じ籠って楽してるだけじゃねぇかよ!?」
「それがお前らがなりたいと思ってる護衛職や騎士団の本来もって欲しい【誇り】だよ。
それがねぇヤツはばかりが多いからこんなみっともないザマになってるんだけどな。
実際にここでお前の親父が騎士団を率いて迷宮攻略には来ないだろうな・・・」
一応の決まりでは新迷宮が発見された際には冒険者ギルドに報告し、国や街の騎士団と連携して攻略する決まりがある。
だが、ドラッグが冒険者家業を初めて騎士団が新迷宮や冒険者として協力して何かを成し遂げるといった事はないからだ。
フェンナト王国の悪性が貴族にも影響し、次の世代にも悪い差別の風習を植え付けてしまっているからだ。
実際に実戦訓練学校でD階級冒険者の教官に数で勝っても人間よりも体格も強さも桁違いの魔物や魔獣と戦わせるという経験をさせれた為にこれ以上の無理をされる理由はない。
ガーベラが転移魔法をポートフォリオンに繋げている為にガーベラが魔力を通せば戻ることは可能である。
ここでキーンやリーナに無理をされるだけのメリットは本人らにもないし、ドラッグ自身にもメリットがないからだ。
下手にローランド家の冒険者手続きを踏んでいない為に何かあれば五月蝿いからだ。
すると、見兼ねたターシャがドラッグに提案してきたのだ。キーンとリーナを自分のパーティーに臨時加入させれば大丈夫だろうというのだ。
「まぁ、確かにE階級位の腕前はあるとは思うが危険だろう?」
「まぁね。けど、折角の【付属魔法印】の武器を貰ったのに使いこなすのにこの大蟻の軍勢は訓練にはもってこいじゃないか?」
「まぁ、本人らの意志も尊重してやるのが大人としての役割ではありませんか?ドラッグ殿 」
「ったく、しゃーねぇな。許可するよ。他のパーティーも逃げたいヤツはガーベラの転移魔法で逃げていい。
こっからは階級がどうとか問題じゃない。大蟻らと命のやり取りになる。
迷宮 内部が大きく変わってたり、拡がってる可能性も高い。 なるべく、離れずに・・・な?」
「じゃ、じゃあ、俺らも迷宮攻略に行っても!!!」
目を輝かせる2人にドラッグは手を頭に置くと、ターシャやギガルに臨時とはいえパーティーに入るのであれば一端の冒険者として扱うからしっかり経験しろといったのだ。
少なくとも貴族嫌いなドラッグが武器を渡したりしている所を見ると『少しは見所がある 』・『成長したら化ける』と直感的に感じたのだろうとガーベラはクスクスと微笑んだ。
その裏でリザーナはフォルト期待の冒険者でたり、女魔法剣士のレミーラに問い詰められていたのだ。
リザーナは確かに『恋の邪魔をする無粋な事をする蟻を蹴散らせ』と口に出していたからだ。
「いや、フォルトさんに頼まれたから?」
「この昇級試験受かったら嫁にしてくれって言ったんだろ?大胆だよなぁ~」
「な、何でそれを知ってるんですか・・・?」
「少なくともドラッグは知ってて試験官を受けたみたいだぞ? ポートフォリオンにも役に立つB階級冒険者増やしたいって時にフォルトがレミーラを推してたからしいからしらべたって・・・」
正直にドラッグがガーベラを使って何故そこまで期待しているのか調べたことや隠れて付き合っている事やB階級に上がったら嫁にすると約束していた事をリザーナらに話していたのだ。
今回の件でフォルトはギルドマスターとして街の防衛として残らなければならない為にリザーナらに一言だけ、レミーラに使えて欲しいと頼まれていたのだ。
「無事に戻ってこいっだってさ~愛されてるねぇ~」
「フォルトさん・・・」
「安心しろ。アリンコ位アタシらの敵じゃねぇよなぁ?」
「だよねぇ!ねぇーミックス? ミックスってば~!!!」
リザーナに名前を呼ばれるまで大蟻達が戻っていった場所に何となく見覚えがあり、嫌な予感がしていたからだ。
もしかしたら、この異変の原因は俺にいや、俺とリザーナのせいかもしれないとドラッグに正直に話したのだ。




