第25話【 リザーナの呪いとフェンナト王国の悪しき風習 】
フォルト曰く単純な【肉体強化】と【武装強化】の魔力操作だけであればエデンの街のゴリガンやオルティガンも2つも達人レベルあり、セルマも魔術師として一流の魔法を扱える冒険者であるが、魔力を形にする魔力操作に掛けてはドラッグの中ではフォルトが適任者だと思っていたのだろう。
少なくとも、ドラッグは実力を認めた相手にしか頼み事や悩み事を話さないタイプであり、リザーナや自分が置かれている現状を現実的に見せることができるのがフォルトであると判断したのだろう。
だが、魔族であるガーベラは兎も角だ。ドライアドとアルラウネの混合種のフェローラはどうなのだろうかと尋ねると元々ドライアドやアルラウネは土と水の魔術の魔力を持っているために樹木を使った魔法を使えるというのだ。
サイクロプスやブロンテスを抑えた蔦がいい例なのだろう。 少なくとも地上に出て魔物本来の本能的な戦い方から【肉体強化】と【武装強化】の魔力操作を上達させ、戦技や魔法を収得して戦術の手札を増やすという意味ではフォルトはいい意味で現実的かつ効率的な指導者だろう。
リザーナも弓矢を使う為に弓矢の名手であるフォルトから教わる事で成長する事は出来るだろう。
少なくともエルフはドライアドやアルラウネに近い種族の為に生まれ持って魔力が高いからだ。
何よりも【火】・【水】・【風】・【土】の魔術適正の上位に【火炎】・【大海】・【暴風】・【大地】が存在するらしいのだ。
少なくともドラッグはあの喧嘩煙管に火の魔法が【付属魔法印】が付属されているが、ドラッグ自身の魔力量はセルマにも匹敵する為に【火炎魔法】を使えるらしいのだ。
つまりはドラッグは殆んど本気を出しておらず、自作の薬で戦っている薬剤師だと思わせて特異体質の体内に溜め込んだ魔素を魔力に変換する事が可能だからできる芸当である。
そう言えば、リザーナが魔力を使って魔法を使ったりするのを見たことがないな。
すると、リザーナは地べたに座り込んでしまってフォルトに無理だと話し始めたのだ。
「無理だよ~ だって私、狩猟の女神・アルテミス様から呪い受けてちゃって魔法が使えないもん」
「狩猟の女神・アルテミスから呪いって・・・」
「エルフは狩人と知恵の女神であるアルテミスを信仰しているとは聞いた事があるな。
だが、呪いを受けさせるなど聞いた事がないぞ?」
「御神体の幹からアルテミス様の女神像をナイフで作って千年樹に祀るんだけどその時に女神像にゲロ掛けちゃって・・・」
あぁ、リザーナらしい理由だった。そりゃ、女神もキレるだろう。
それで魔力量が多い癖に魔法が使えないとなるとリザーナは戦闘で魔力が使えないという事になる。
だが、フォルトはミックスとエレーナに名付けをして使い魔にしているのであれば魔力を全く使えない訳ではないというのだ。
理屈はわかってはいないが知性のない魔物や魔獣を主従するには相手よりも魔力量が高くなければ成功することはないというのだ。
少なくとも言語を理解できる知性のある魔物としか今の所、契約できていない。
リザーナが普通の魔物使いとは違う可能性があるとフォルトを腕を組んで悩み始めたのだ。
このままリザーナに魔力操作を教えても物に出来ないのであれば意味が無いからだ。
「なら、逆にミックスやエレーナらに魔力を送る事は出来るのか?」
「その、た、多分それも無理だと思う・・・。だってその呪いはリリスの呪いだもん・・・」
「ミックス。リリスの呪いってなんだ?」
「俺も知らんぞ? リザーナが呪いで魔法を使えないのも今、知ったからな?」
そう考えて見れば、リザーナの過去の話は冒険者時代からしか知らないのだ。
少なくとも依頼失敗で借金があった事以外はリザーナが何故エルフの里から離れて冒険者をやっているのか聞いた事がなかったのだ。
エデンの街にもこの港街の都市・ポートフォリオンの冒険者ギルドにもリザーナ以外のエルフを見た事がない。
普通のエルフや他の部族はフェンナト王国からの迫害や差別、身分格差など歴史的に作られた人間への嫌悪感や不信感から未だに貧困層の人間が稼げる手段に過ぎず、フォルトやゴリガンのような獣人達も冒険者になりたいとか考えておらず移住を繰り返してきたというのだ。
だが、リザーナの場合は信仰している神への愚弄行為によって里から追い出された事によって冒険者になり、エルフの常識から人間への常識を受け入れる苦労はあった筈だろう。
少なくともミックスもエレーナもまだ人間の考えた方は良くわからないからだ。
何よりも『リリスの呪い』はかつて栄えた吸血鬼族の女魔王の名前であり、リリスは男を堕落させいのままに操っていたという魔王であったというのだ。
だが、魔王・レッドクリムゾンの戦いに負けた事でリリスが収めていた国は滅びたというのだ。
「取りあえずはリザーナはそのリリスの呪いってやつで魔法が使えないって事か?」
「そう言うこと!! だから凄い苦労したよ?」
「呪いってそんなにヤバいものなのか?」
「お前ら魔物でいう所の戦う術を失った弱者にされたというべきか。エルフは非力だが、弓矢を使い高い魔力を秘めた部族だ。だが、それでは・・・」
いってしまえば一番強いものが使えないって事だろう。
この辺りはフェンナト王国の悪しき風習が残っている。差別をするなど貴族や王族であってもするべきではない。
少なくともドラッグはそっちがその気ならば抗争でも受けて立つタイプであり、4年前にフェンナト王国の国王に牙を剥き出して絶対に従わないと切り捨てた。
フォルト自身もフェンナト王国には従う気にはなれないというのだ。
少なくともゴリガンとともに冒険者にしてくれた恩師と行動が瓜二つであるというのだ。
ゴリガンとフォルトを育ててくれた当時のギルドマスターもフェンナト王国の国王に同じことをした過去があるという。
だが、この辺りを統括しているのはフェンナト王国である。 他のフェンナト王国に並ぶような国が出来ればそちらに協力したいくらいだとフォルトは本心で言っていたのだ。




