第24話【 戦技と魔術の特訓 】
港街の都市・ポートフォリオン到着してから既に1週間立っていたが、ギルドマスター・フォルトにミックスもエレーナも太刀打ちする事が出来ないでいるのだ。特に自慢の戦斧での力業もエレーナの二刀流も難なく避けられてしまうからだ。もう何度この蛸の吸盤が先に着いた弓矢を額に撃ち込まれてしまったのか覚えていない程負けているのだ。まさか、ここまで実力の差があるとは予想だにしていなかった。ここに来る道中でドラッグがいっていた『魔力操作が上手くいってねぇから地上じゃ半分くらいの力しか出せない』という言葉をふっと思い出した。 それが原因ではないだろうか?
「・・・俺達があんたに敵わないのは【肉体強化】と【武装強化】の魔力操作が出来てないからなのか・・・?」
「それ、ドラッグやガーベラもいってたけど結局どういう意味だよ・・・?」
「・・・根本的に気付いていないだろう? お前らは魔物であった時よりも知性を持っている。
つまりは本能的に魔力を増強できなくなってるんだよ・・・」
「だ、だけど、名付けをされれば確か魔物は強くなる筈でしょ? なのになんで・・・?」
フォルトは実際に魔物使いという役職を持った冒険者を噂程度しか知らないというのだ。
魔獣と剣闘士が戦うコロシアムがある【グランディア王国】の魔獣達は魔物使いが使い魔契約しているという【噂】である。
少なくとも普通の魔物使いは特殊職であり、そんなに数もいないが、知性のある魔物を使い魔にするものは少ないというのだ。
理由は単純であり、敵として戦っていた時よりも名付けをしたせいで弱くなるというからだ。
魔獣と剣闘士が戦うコロシアムがある【グランディア王国】の魔物使いは名付けをせずにコロシアムで剣闘士と戦わせるのみを指示するだけであり、名付けをする必要がないというからだ。
確かに名付けをする事である程度は強くはなるが、それからの成長レベルが極めて遅いのだ。
その理由が賢くなる変わりに本能的に使えていた【肉体強化】と【武装強化】の魔力操作が弱くなり、覚えていた魔法も威力が下がるデメリットがあるからだというのだ。
「んな事言われても、リザーナに名付けされてからは・・・」
「考えて動くようになったんじゃないか? リザーナを護る為にはどうしたら良いのかって・・・」
「つまりはアレか? 本能的に弱肉強食の世界から人間の心や思考を理解できる様になったが故に魔物本来の力が半減しているって事なのか?」
「だろうな。少なくともここに来る前にドラッグが【魔物避けの薬】に火を着けたろ?
あの時につまりはそれすらも防げない程身体の抵抗力が下がっているって言いたかったんだろな・・・」
ドラッグは魔物避けの薬に火を着けた際にミックスとリザーナが臭いといって鼻を抑えていたのを思い出すと本来ならばミノタウロスや蛇身クラスの魔物には効果がないとフォルトはいうのだ。
少なくともドラッグは野生の時よりも身体が人間よりになっている事に危機意識をもって欲しかったのだろう。
フォルトは名付けをする事で魔物の体内にある魔核を中心に流れている魔力が安定しており、戦闘時には本能的に魔素を魔力に変える事が出来ていたが、名付けをされた事で体内の魔力を安定した事により魔物の力の源である魔力の増強が出来なくなっているというのだ。
つまりは名付けをされて魔物としての格は上がったが魔力操作が出来なくなった事でレベルアップが難しくなっている為、体内の魔力を伸ばす事が出来る【肉体強化】と【武装強化】の魔力操作によって戦い方も変化してくるというのだ。
「少なくともミックスは魔法が付与されいる【付属魔法印】の戦斧と土魔法が使えるなら鍛えれば戦技や魔術に大きく関わってくるからな・・・」
「なんだ?その戦技とか魔術って・・・」
戦技は魔力を体内に溜めて放つ必殺技であり、覚える技も戦いの中や鍛練の中で誕生するものが多いらしい。
一方で魔術は大きく分けて火・水・土・風の4属性に分類されている魔法という事らしい。
そして、その魔法を習得できるかも魔力の相性もあるというのだ。
少なくともミックスは土魔法を使える上にブロンテスに致命傷を与えた戦斧には火の魔法の付与が付けられている為に爆砕が使えたというのだ。
興味を示したエレーナは自分はどの魔法が得意なのか知りたいとフォルトに詰めよった。
フォルトは2属性を習得できるかは魔物も人間でも稀有なものである為にミックスは珍しいという事になるだろう。
だが、ミノタウロスの伝説を考えれば不思議な事ではない。長年迷宮つまりは土の中にいれば自然と土魔法を習得していても不思議な事ではないからだ。
「だが、見たところエレーナのサーベルも魔法が付与されいる【付属魔法印】で火魔法が備わっているし、魔力的にも火の魔力だろうな・・・」
「そんな事もわかるのか!?」
「少なくとも魔術の習得は過酷だぞ? 水なら水を飲み泳いだり浴びたりして水そのものと一体にならなければ習得はできない。
火なら焚き火の火を見つめる熱を感じるとかだな・・・」
「・・・因みにリザーナはどの魔術の練習なんだ?」
振り返り、リザーナがさせている練習は弓矢を引いて的を狙っているだけの普通の弓矢の訓練にも見えるだろうが、リザーナの手には弓矢が持たれていなかったのだ。
リザーナは弓矢の弦を引いてはいるが、あれでは意味がないだろう。
すると、フォルトは背に掛けていたリザーナの弓よりも巨大な大弓の弦を引くとすると、魔力が集合して形になり、矢になると的を粉砕して見せたのだ。
フォルトは魔力そのものを矢にする事ができる為に矢の補充をしなくてもいい魔力の矢を作り出す事ができる為にそれをリザーナに教えているというのだ。




