第213話【カルディナ山脈へ(その3)】
ダークエルフのシルフィードの申し出に族長のゼイナは怒りを沈めて理由を訊ねた。シルフィードは今回の議題が差別を無くすことは奴隷になっている同胞を解放する手助けになると考えを持っていた。
シルフィードも盗賊に連れ去られそうになった事があり、大人の男性への恐怖心があるがマインならば大丈夫だという。
ポートフォリオンには族長ら2人がいくのであればクロニアス王国との繋がりを強める必要があるのではないかと話す。
確かにダークエルフとアマゾネスの族長2人がドラッグを諦めていないのであれば自然とポートフォリオンに来ることになってしまう。クロニアス王国との繋がりがあれば他国で奴隷にされている同族を助け出す際に権力が得られるとしっかりと考えを持っていた。
「それにいい加減ダークエルフの掟、飽きた。アマゾネスや有翼族みたいに外の世界に振れたい」
「あん?ダークエルフって森で男見つけるまで外出れねぇ掟じゃなかったか?ゼギラは男だから嫁探しに出したのか?後ターシャってここ部族なのか?」
ドラッグがシルフィードの言葉に反応した。ダークエルフは特殊であり森で出会った男を集落に連れ込む。また男のダークエルフは自らの嫁を探すために里から追い出される風習があるようだ。
「ターシャはこのアマゾネスの部族だ。ゼギラという名は知らんがグリーン・ウッド出身じゃないのか?」
「えっ?ウチの集落ダークエルフいたってけ?」
「知らんのか?最近族長夫妻を離婚して古い掟を放棄したエルフ達が好き勝手やっておるのだぞ?今じゃダークエルフだろうが混合種だろうが構わず里に入れておるようだぞ?」
どうにもリザーナの故郷では前当主の夫妻が離婚した事で掟にたいする仲違いが起こっているそうだ。グリーンウッドの族長であるローガンとその妻であるカトレアが仲違いしたそうだ。
リザーナの母もカトレア派であるそうで武闘派最強部族であるオークと同盟を組み好き勝手やっている為に幻獣神・ベビーモスが仲裁に入っているようだ。
ハイエルフの魔力とオークの怪力が混ぜ合わさった子は次世代の魔王になりえる存在になる可能性が高いそうだ。グリーンウッドのエルフ達と比べると明らかに閉塞感のある現状を打破する切っ掛けとしては充分だとシルフィードは思っているそうだ。
だが、シルフィード以外は幻獣神・ジズやレヴィアタンがいる口には出さないが不服そうな感情を表に出していた。
すると、ルイはそこも含めて自由にする方針であると話し始めた。ポートフォリオンと交友はできるようにするが無理に交友を結ぼうとする者は排除しても構わないというのだ。
「私はあくまでも差別のない国の女王です。ですから皆様が掟を重んじるのであればそれも自由なのです。もし、それが息苦しくなった際にポートフォリオンはどんな種族でも受け入れます」
「・・・それは魔族もって事?」
「実際にポートフォリオンには人間とともに生きる事を選んだ魔族もいます。ですから差別のない国の女王として魔族も認めますが、悪さは控えて頂かないと『魔物側の王』が鉄槌をくだしてくれますよ?それにドラッグさんには『そういった方々への処分』はお任せする気ですし・・・」
「ん?それって俺、ルイちゃんの側近になるってこと?」
ドラッグはルイを見て訊ねるとルイは信用できて行動力のある人間が側欲しいと言われドラッグならばガーベラとフェローラを妻に娶り、差別主義者にたいしても強気で喧嘩を売る度胸もあれば実力もある人間であると評価しているようだ。
ドラッグは副ギルドマスターの仕事とか薬剤師の仕事を兼業でも良いかと訊ねるとルイは問題が起こったら対象してくれれば好きにしてくれれば良いと即答した。
ドラッグはルイを暫く見て了承をするとマインに近づいた。アマゾネスを嫁にしたいと聞いていた為にその方法を教えるをマインは驚いた表情をした。
「えっ!?じ、じゃあ、ドラッグさんはマリアムさんに勝ったって事ですか!?」
「昔はイケイケだったからな~ガーベラら大人の階段登ってから薬剤師メインで活動してるからな~下手したら負けるかも・・・」
「ドラッグ、何話してるの?」
「んー?アマゾネスの求婚方法について。タイマンで決闘して勝つか強さ見せればアマゾネスから寄ってくるってな。俺は15の時にゼイナ助けた時にエルフ拐いと勘違いされてマリアムと戦ってな~」
ドラッグの若い頃といってもまだ二十歳である為に5年前の事だ。当時はイケイケで金になる依頼は何でもやっててオルティガン達ともたまにパーティーを組んで金を貯めていたらしい。
ここにはジャイアント・ディアー討伐で訪れてその時にたまたま魔物に襲われているゼイナを助けたがエルフ拐いが横行していた時だったのでマリアムに襲われて返り討ちにして事情を話して求婚を迫らせたというのだ。
「っつってももう族長ならおいそれと結婚してでていきけないからしゃーないよな?」
「今から長老衆をブッ殺して掟を代えてくるから待ってろ!絶対に逃がさんぞ!?」
「そんな事今知ったから!アンタら覚悟できてるんでしょうね?私ら2人の婚期延ばした罪は重いわよ?」
2人は真実を知りかなり激怒している様子であった。シルフィードは知らん顔してマインを膝にのせて頭を撫でている。こっちはこっちでまだ揉めそうだし先にガルディア山脈にある迷宮について話を聞いても良いかと訊ねると騒ぎが納まった。
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