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第203話【影と火炎の支配者・バルバゴールド】



  リリスは人息着くと、異様な雰囲気を醸し出す扉に視線を向けた。エレーナ達も扉も前にやってきたがディオスをどうしたものかと頭を悩ませているように見えた。

 

リリスは声に出さず直接伝えてきた。そもそも、薬神ディオスは上位魔族と対等に渡り合えるだけの力を持っておらずせいぜい聖女の加護の力を引き上げる事しか出来ないと自身が理解している。

 

 何よりも本来ならば見守る立場である神が地上に干渉する事は禁止されているが、ディオスはただ見守るだけで何もしない神とは違い協力的だという。

 

 だが、ここにいる大魔族・バルバゴールドには敵わない程の実力差がある。神と地位であってもどうする事もできない存在こそ大魔族でかるからだ。

 

「この先にバルバゴールドいるみたいだけど聖女の加護だけで全員を護りきれるの?」

 

「そこは何とかする。それにバルバゴールドは真の勇者か魔王でしか倒せないからな」

 

「まぁ、リザーナの必殺技の試し打ち相手には丁度いいかも知れないわ」

 

「影と火炎の支配者って呼ばれてる存在が丁度いいっていう魔王に恨まれないようにする必要もあるからな・・・」

 

 ディオスは天界のやり方が合わないために勝手に行動している自覚はあるが、そうでもしないと変わるものも変わらないとため息をついた。

 少なくともガルーシャ大洞窟を魔族に好き勝手に利用されていたのは天界の管理不足だと実感してしまったからだろう。

 

 それにまだ魔族程度なら何とかなると思っていたが考えが甘かったと自己分析をして反省点をあげる。

 

  メルディア達はどうするかと話をすると、エレーナはパーティーだからバルバゴールドと戦うと胸を張っていた。


 魔物の本能的に格の差はわかっているが、このままだとリザーナが一人で戦って行かなければならないことが可愛そうだというのだ。

 

 メルディアもその意見に賛成した。元々大魔導士として一線で戦ってきたのに魔族相手には手も足も出ないのは癪であり、リザーナと俺の足手纏(あしでまとい)になるくらいなら大人しくポートフォリオンの建国に力を注いだ方が好都合だと口にいた。


だが、リザーナとの冒険は楽しいために少しでも力になりたいと母親のような笑みを見せる。


「なら、三人でやりましょう。バルバゴールドは影と火炎の支配者の大魔族。エレーナは爆発魔法で影で操られている敵の始末。メルディアはバルバゴールドの火炎を封じる大海魔法で弱らせてくれる?」

 

「影で操られている敵って何だよ?」

 

「中に入ると同じような鎧を纏った石像が並んでるわ。それ全部が影で操られていて襲ってくるの」

 

「わかった。本体殺るのはリザーナらの仕事だしな!ワタシらワタシらで支えてやるぜ!」

 

 覚悟を決めてリリスが門に手を振れると熱風が吹き起こり行く手を拒んだ。全員が中に入ると、ゆっくりと巨大な門は閉まっていく。

 

 中はかなり広く造られており、水路にはマグマが流れており、恐らくはこれが魔導ボイラーのエネルギー源なのだろう。

 

  そして、間隔を開けて台座の上には古びているものの豪華な装飾のついた防具と長剣を装備している象が幾つもある。

 

 そして、中央の同じ像に向かってリリスはゆっくりと進むと戦斧(オレ)をその像に突き刺すように向けた。

 

 すると、兜の空っぽな目の部分から人魂の様な青白い光を覗かせていた。

 

「久しぶりね?バルバゴールド。相変わらず鎧の中が好きなのね?」

 

『・・・この魔力はリリス? いや、リリスの意識をした別の者か? 我を罵る女はこの世でリリス一人だけだ』

 

「そうね。今回は前みたいに魔界には逃がさないわよ? 貴方の魔力を全て奪い取って見せるわ」



 リリスの口振りからバルバゴールドとは一度戦っていることはわかった。だが、流石は大魔族といったところかリリスとわかると復讐の機会が向こうからやってきたと高笑いし始めたのだ。

 

『ミックス、いい?バルバゴールドは火炎の支配者。炎なら何でも形にする事ができる。魔鉄鉄を溶かす程の高熱に耐えられる魔力を張っておきなさい』

 

『そりゃ見りゃ分かる。戦ってきた中でメルディア以来の恐怖感を感じてるぞ・・・』

 

『後でリザーナが話しても知らないわよ?』


『それならそれでいい。くるぞ!』

 

 バルバゴールドは台座から飛び降りると、持っていた長剣を振りかざしてきた。

 

 リリスも斧刃で受け止めて応戦し始める。

 

 すると、バルバゴールドが動き始めたからか、台座に飾られた豪華な装飾のついた防具と長剣を装備した鎧達が一斉に動き始めてエレーナ達に攻撃を仕掛けていた。

 

「さっき聞いておいて良かったぜ!! 中身が空っぽの鎧なら爆発魔法で粉々にしてやるよ!!」

 

蛇身(ラミア)ごときの爆発魔法で破壊できるとでも思って・・・』

 

 エレーナと戦っていた鎧の背後から水の槍が突き刺さる。本体のバルバゴールド以外の鎧に水の槍が突き刺さっていた。メルディアが指を鳴らすと内部に液体が侵入して動きを封じこめた。

 

 メルディアはエレーナに爆発魔法ではなく火炎魔法を放つように指示を出した。エレーナはいわれた通りに炎の弾を出して鎧に当てると鎧の中で液体が沸騰しているようだ。


「これで鎧の鉄が溶けてくれたら儲けもんなんやけどなぁ~影と火炎の支配者が扱う鎧はそう簡単にはいかへんかなぁ?」


「メルディア、何か溶けてねぇか・・・?」


「影か炎のどっちか操ってても結局は魔核(コア)にエネルギーを送らな動かへん。それを壊せばただの骨董品やろ?まぁ、壊れちゃったみたいやけどなぁ~」


『ミックス。貴方良くメルディア相手に生きてたわね」


それはアステリオスにいってくれ。直接戦ったことは一度もないが間違いなく魔王と互角に渡り合える力をメルディアは持っている。


そして、それを使い魔にしてるリザーナが恐ろしく感じた。


自身が操っていた影の鎧が壊されたがバルバゴールドは上機嫌になり、壊された鎧を溶かして自らの手に集めると長剣を作り出した。



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