第20話【 ドラッグの交渉 】
港街の都市【ポートフォリオン】はフェンナト王国の城下町に次ぐ巨大都市であり、貿易都市としての役割りもはたしている都市である。
そして、拠点にしているエデンの街はその貿易商人が脚を休める為に作られた街であるのだ。
だが、フェンナト王国まで辿り着くまでに魔物がでる草原地帯や森には魔物や魔獣が居着いており、度々商品を運ぶ荷馬車が襲われる為にエデンと港街の都市・ポートフォリオンには冒険者ギルドが作られたという話であるというのだ。
まぁ、建前としてはそれで冒険者達を食わせる食わせる働き口を増やし、強い冒険者を国に取り入れるのが本音だろうとドラッグは荷馬車の護衛をする為に先頭立ち、自分と話しながら歩いている。
荷馬車の中には移動するのが緩慢なフェローラとリザーナと商人の男と積み荷が大量に積み込まれている。
ドラッグは間違えなく人の扱い方が上手いのだろう。 壊れた馬車を縄で繋げて大量の商品を運び込ませる様に改造した馬車を俺に引かせている。
普通の荷馬車で荷物運ぶにしても馬は一頭でもかなりの金額が掛かるが、リザーナの使い魔であるミノタウロスが引けば馬が引くよりも重量が運べる上に弱い魔物は近づいてこない。
左側をガーベラ、右側をエレーナが警戒している為に守備は磐石といっていいだろう。
だが、魔物の凶暴化が進んでいるにも関わらずフェンナト王国が何も対策しない事に疑問に思いドラッグに訪ねると仮に魔王レッドクリムゾンが復活しても自分の身を護る事を優先して決して王国から出て闘うほど勇敢な国ではないというのだ。
何よりも他の人間が実権を握っている国からも疎まれている為に協力して魔王を討伐するという事も現実的に不可能に近いというのがドラッグの見解であった。
「少なくともゴリガンと今から会いに行くフォルトっていう獣人もその類いだからな。
俺の知る限りじゃ種族的な差別を受けてB階級かそもそもフェンナト王国で護衛職になる事を嫌う冒険者も多いんだよ・・・」
「前から聞きたかったのだ。 強い事がわかっているのにたかがその程度の事で昇級させないって冒険者ギルドとしてどうなのだ?」
冒険者ギルドの依頼案件は人探しから魔物退治まで幅広くあり、その依頼成功率や強い魔物と戦って討伐するだけの力があるのに1国の国王の意向でそれを決めてしまっていいものなのか?
もし、フェンナト王国が冒険者ギルドの運営費を賄っているならばそれは仕方ない事だろう。
だが、基本的に農民達が暮らす農村部から報酬金が払われて冒険者ギルドに依頼がくるのだ。
ギルドにもそれなりに蓄えもあるだろうが、1国の財政を支える為に絶対服従の忠犬的な冒険者ばかりを集めて迷宮攻略ができるものなの疑問であるからだ。
ドラッグは自分が冒険者になったのは13の時で今年で20歳になるが、フェンナト王国が抱えるA、S階級冒険者が迷宮攻略したという話を耳にした事がないのだ。
少なくとも迷宮攻略に成功して財宝や何らかの功績が挙げられれば冒険者ギルドに報告が回る為におそらくは迷宮攻略には赴かず、国内で鍛えているのだろうというのだ。
「ダリル伯爵ン所にいた騎士いたろ?あれも元はA階級冒険者の戦士なんだよ・・・」
「・・・にしては弱く感じたが? ドラッグらの方が強いだろ?」
ドラッグはそれは当然だというのだ。少なくともフェンナト王国に忠誠を誓ってA階級に上がったとしても王国直下の騎士団は実力階級式である為にそこでの戦いに負けた者がダリル伯爵の騎士団に入隊しているからだ。
少なくとも、港街の都市・ポートフォリオンはギルドマスター・フォルトが率いる冒険者軍団が強い事で有名であり、小さな事件も解決する為にフェンナト王国よりも安全な都市として有名である事から商人が貿易にくるのだ。
だが、港街の都市・ポートフォリオンのギルドマスターが率いる冒険者軍団はエデンの街までの護衛任務を受ける事ができないのだ。
彼らの役割りは港街の都市・ポートフォリオンの治安維持の為に万が一に備えて戦力を温存して置かなければならない為に貿易商人達の護衛依頼はC階級冒険者パーティーに依頼するしかないのだ。
前はそれなりに魔物が大人しく滅多に荷馬車を襲う事はなかったが、ここ数年はその被害も増大していると言うのだ。
だが、別に商人達は何もフェンナト王国で商売をしたいわけではないのだ。
この土地には薬剤師の職業を持ち、特殊な製造法で回復薬や魔力回復薬などを製造できるドラッグと売買したいのが本音であるからだ。
特殊な製造法で回復薬や魔力回復薬などを製造できるがドラッグは信頼できる商人しか渡さず、基本的に冒険者ギルドに一定の数を納品するだけであるが、効力は本物である事や回復薬の上位互換の完全回復薬を唯一製造した薬剤師であるのは既に広まっているからだ。
今回の商人にはその特殊な製造法で回復薬や魔力回復薬と1本だけ完全回復薬を売って今回の依頼を成立させた為に商人も何も文句はいわずに任せているのだ。
少なくともドラッグは人間嫌いであり、滅多に商人に自分の薬を売買する事はないために行っても無駄足になる事が高いと業界では噂になっている。
だが、今回の一件で商人から信頼を買うのにわざわざ薬を売買して港街の都市・ポートフォリオンに滞在している間は薬作りをする代わりに売れた何割かの利益を自分に入る様にして貰い、売上額が良ければ定期的にエデンの街から回復薬や魔力回復薬をその商人と取り引きして良い事になっているというのだ。
ミノタウロスに助けられた商人もそうはいないし、魔物や魔族に囲まれて護衛する為に商人に不快な思いをさせる訳にはいかず、相手に利益がある事を提案したというのだ。




