第182話【神々の神託(2)】
どうにも天界でも動きがあったらしく神々が集まってるらしい。すると、豊穣の女神・デメテルが皆を落ち着かせようとするがその前に声の低い男性が『黙れ』と静かにいいようやく静かになった。
『申し訳ないな。地上の者達よ。我は冥府の神・プルートというのもだ。豊穣の女神・デメテル夫であり、冥府を収める神である』
「冥府の神って事は『ストラス』関係か? 異世界の知識がどうとか言っていたが・・・?」
『その通りだ。奴の主である魔界皇帝・ベリアルは魔界に封じ込められている筈だ。だが、側近の奴だけは行方を眩ましていた』
「あの野郎はミックスの知識がどうとか『裏と表の世界』がどうとか言ってたがありゃどういう意味だ?」
顔馴染みで大嫌いであるアルムニスが魔族であった為にドラッグも気になっていたようだ。確かに異世界からの話しは近しい者にしか話してない為に他の者が知るよしもない筈だ。
だが、プルートは異世界召喚の抜け道をストラスに利用されてしまったという。それ『裏と表の世界』と呼ばれる場所であった。よくわからない為に近くにいた者と顔を見合わせるとプルートが説明してくれた。
言ってしまえば表は『現実の世界』そして裏は『異世界へ通じる道』と例えてくれた。異世界の勇者召喚はその『異世界へ通じる道』を利用される。すると、疑問に思ったエレーナがプルートに訊ねる。
「それだとその『裏の世界』に入れば誰でも異世界に行けるって事か?」
『いや、それは不可能だ。裏の道を通る際には何重にも重ねられた結界によって異世界人を安全に転移する事が初めて成功する』
「なら、ミックスになった人間はどうやってそこに入ってんだよ? 人間がそんな簡単に異世界に行き来できるもんなのな?」
『一つだけ可能がある。悪魔に魔界に引きずり込まれてしまう事だ。魔界の悪魔は全ての世界に繋がってる。恐らくだが、そう言った人間を集めていたのだろう。この世界では大司祭をしてブラッドクリスタルを造り出していたのもその為だろう』
エレーナは首を傾げながら尻尾の先を地面に叩く。プルートが分かりやすく説明すると悪魔は生命力や精神的に弱者を裏の世界に引きずり込んでいるというのだ。
少なくとも『生まれ変わりたい』・『もっと力が欲しい』など純粋な欲に悪魔は導かれて連れ去ってしまうという。
なら、俺は何故ラビュリンティスに迷い込みアステリオスに食べれてしまい『ミックス』として生きているのか。 その理由については前の俺は悪魔が挑む欲を持っていたのがラビュリンティスであり、ミノタウロスだからだろうというのだ。
少なくとも人間だった頃の記憶がなく食べ物や建築関係しか思い出せないのでなくそれ以外は不必要だから記憶から消えている可能性があるらしい。そこを踏まえて改めてガルスが説明する。
その結果人間以外の『物』が迷宮に入り込んでしまっているというのだ。
おそらくは異世界人を転移させた時に持っている『知識』を悪魔が欲したのだろう。
魔法以外の科学的な兵器という点では異世界のが優れているからだ。問題なのは魔界に全てを持ち込めず、同じ力がある迷宮に入り込んでしまっている現状らしい。
そして、そのガルーシャ大洞窟はそういった生物兵器や魔剣など人工的兵器を作っていた場所である為にそう言った知識を求めて集まってしまったとため息混じりで説明してくれた。すると、ドラッグは大方の理由を理解したが気になっていた事を訊ねた。
「話はわかったけどよ。外の女神は何の用があるだよ?ティア、アテア、アルテミスに信仰者何てここにはいないだろ?」
『えっと、先に私でもいいですか?アテナさん。アルテミスさん』
どうやらこの上品な喋り方をしてるのが人間が信仰している女神・ティアであり、この世界に一番勇者を導いてきた女神であるようだ。ティアはルイに話がある為にドラッグの神殿に押し掛けたらしい。ルイは何の事だか分からずに俺の腕に掴んだ。レオーネも大剣の柄に手を掛けて唸り声を鳴らして威嚇していた。
『ちょっと威嚇しないで下さい!ルイさんに聖女の地位を与えようと』
「断固として断る!!そんなまやかしの聖女の力などにもう頼らん!! その力があって国は滅んだのだ!!ルイ様に重荷を背負わせるのが女神なのか!?」
『だからいったろ? 聖女の力与え過ぎだってよ。確かにティアの癒しの力は認めてるけどよ。地上だと『権力』がありすぎるんだよ。んで、目障りになって殺されられるマリアンヌみたいにな…』
マリアンヌの娘のフラムも聖女の力を捨てて天界に復讐する為に魔族にケミカルと名付けをして天界に復讐をしようとしていたが、ディオスがマリアンヌを従者として向かいいれた為にその復讐心は失くなってる。
聖女の権威は強大過ぎる故に他の権力者から疎まれてしまうのだろう。結果的にルイはグランディア王国に流れて囚われてしまった。レオーネが激怒してもしかないだろう。だが・・・
「レオーネ。それはルイが決めるべきだ」
「ミックス殿!! しかし、それでルイ様を苦しめる結果に・・・」
「俺もリザーナが心配だ。だが、それは本人が決めるべきだ。 リザーナも多分そう言う筈だ。ルイがこれからどうして生きたいのか決める権利はルイにあるんだ」
レオーネはじっとルイを見つめて黙って頷いた。ルイはじっと空を眺めて見えない女神・ティアに向かって答えた。聖女の力を正しく使って導ける方法はないのかと訊ねた。
だが、聖女の力はあくまでも聖女。
つまりは人々を導くための力であるために結局のところ権力者から邪険にされやすい。
話を聴いていたディオスが痺れを切らしてルイをいい放ったのはドラッグを頼れという神とは思えぬ他人任せの方法であった。
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