第18話【 特訓と覚悟(3)】
今教えられている【肉体強化】と【武装強化】の魔力操作の訓練の為に使われているのは魔力を使い切った魔石である。簡単にいえば魔力が無くなったただの石ころである。
魔石とは永い年月を掛けて空気中の魔素を蓄える事で魔力を帯びた石の事を魔石と呼ぶそうだ。
そして、今はそのただの石ころ同然の魔石に魔力を集中して流し込むという特訓をさせられているのだ。
本来魔物とは【本能的自己防衛】として【肉体強化】し、体内の魔力を使用し、弱肉強食の世界を生き延びている。
だが、武器を使用する魔物の数は限りなく少ない為に【肉体強化】と【武装強化】の魔力操作をできる魔物の数は限りなく0に近いというのだ。
本来魔物の世界は弱肉強食の世界である為に本能的に身を護るために身に付けている事が多いだろう。つまりは冒険者の成功例を元に訓練をしても効果がないのだろう。何故ならば、まるで出来る兆しがないからに決まっているだろう。 魔石に魔力溜め込む特訓をして3日たったが魔力の切れた石コロにこれといった変化は起こっていない。
実際にフェローラが魔力操作のコツを見せてくれたが根本的に何かが違うのだろう。
すると、冒険者ギルドにいっていたドラッグが戻って来て今後の方針が決まったというので庭にたっている木々に集まって話を始めた。
このエデンの街から南に向かった先に巨大な港街の都市【ポートフォリオン】の冒険者ギルドに向かうというのだ。
その街のギルドマスター【フォルト】は狩人であり、魔法を使った特殊な弓矢を射る事ができる為にその人にリザーナの師匠を承諾してくれたというのだ。
その為に当分は【ポートフォリオン】が拠点になるというのだ。
すると、疑問に思ったガーベラがドラッグに尋ねてきたのだ。
何故、今まで冒険者として活動をしてこなかった【問題児】であるドラッグの話がすんなりと通るのかそれが疑問であった。
「まぁ、理由は単純な話だ。リザーナらが助けた商人が【ポートフォリオン】に戻るためにB階級の冒険者を雇いたいと依頼があったからだ・・・」
「あぁ、それでドラッグに話が回ってきた訳ね?」
普段であれば断る所であるが、リザーナらを実践を通して鍛えるのに都合いい事や前回のブロンテスの一件で港にも何らかの影響が及んでいないか確認する為であるからだ。
実際にドラッグは魔族が【破滅の魔王・レッドクリムゾン】を復活させようと暗躍している事にそこまで興味はないがガーベラとフェローラとの平穏な暮らしを邪魔されるのは癪だから情報を集めて早めに潰しておこうという魂胆であったのだ。
だが、問題なのはエデンの街で唯一のB階級のドラッグや自分等が長期滞在する事になればエデンの戦力は薄手になるのではないかという心配があったからだ。
少なくもダリル伯爵には良くして貰っている自覚がある為に街から離れた事で魔物や魔獣がエデンの街に襲撃する可能性も考えられるからだ。
「そこは大丈夫だ。王国にいる知り合いの話したろ?2人にエデンの街の護衛を頼んだ。そいつらが明日には到着するらしいからな。
元々、フェンナト王国の冒険者ギルドから離れる話を聞いてたからエデンに来ないかって手紙出したらOK貰えたんだよ・・・」
「そんなに簡単にB階級冒険者が王都を離れていいのかよ?」
エレーナの言葉にドラッグはフェンナト王国の差別制度に嫌気を差している冒険者は少なからずいるというのだ。
そして、その2人もドラッグ同様に訳ありではあるが実力者として申し分ない存在であるというのだ。
何せ、ガーベラらと出会う前に唯一冒険者パーティーを組んだふたりであるからだというのだ。
少なくもドラッグは人間嫌いだと思っていたリザーナは驚きの表情をしていた。
「えっ!?ドラッグ、ガーベラとフェローラ以外にも抱いた事ある女いたの!?」
「俺の初めの相手はガーベラでその2人のうち一人は女だがそういう関係じゃねぇんだよ。
どっちかといえば【姉貴】と【兄貴分】みたいな関係だな・・・」
リザーナの言葉にドラッグは腕組みをしてガーベラと出会う切っ掛けを作ってくれたのもその【姉貴分】がくれた書物であるというのだ。
何よりも【薬剤師】の自分に冒険者として知識や魔物の生態系や薬関連の薬草についてもその2人から学んだために自分が本当に困った事があるなら頼る人間はこの2人だろうとドラッグに言わせるだけの人物であるのだ。
出発はその2人がフェンナト王国から到着してから3日後は港街の都市【ポートフォリオン】に商人の護衛を兼ねて向かうと事になったのであった。
少なくも魔物の育成はドラッグ自身の魔力を吸い取るサキュバスやアルラウネとは違うために試行錯誤でやっていくしかないと煙管を取り出して一服して煙を吹き出した。
そして、フェンナト王国から来た冒険者に街に皆が驚きを隠せないでいたのだ。
一人はミックス並みの巨漢な大男でゴリガンにも負けていないだろう。
肌は黒く鎧も肌に合わせた黒いを纏い、背中には大剣を身に纏った重戦士であった。
そして、もう一人はまるで魔女が被るような黒く大きな帽子と妖艶な姿をした服装をした美女が訪れていたからである。
すると、ドラッグがゆっくりと近づくとその2人はドラッグを子どものように頭を撫でたのであった。
少なくも王族や貴族相手にでも喧嘩腰であるドラッグがそれだけ気を許している人間であるのは目に見えてわかった。




