第178話【グランディア王国コロシアム(3)】
グランディア王国の怪物の最後は呆気ないものであった。戦斧を一振で首が宙を舞ってしまった。会場は静まり返っていた。
トビアスの甲高い悲鳴とともに静寂は書き消されてしまう。見てみるとその場で頭を抱え、座り込み発狂している様子だ。その声にハッと我に返った観客達はザワザワと騒ぎ始める。グランディア王国の怪物が大迷宮の怪物に意図も簡単に倒されてしまったからだ。
すると、見かねたアルムニスが前に出てきた。
「流石は大迷宮・ラビュリンティスの怪物といった所ですね。まさか、トビアス様のデジェネスバーンを意図も簡単に倒してしまうとは・・・」
「これでコロシアムの魔獣は全部だろう?ルイ王女とレオーネは貰っていくぞ?」
そう告げるが、アルムニスの返答は意外なものであった。
「いいえ?まだ私の使い魔と戦っていませんよ?」
「お前の使い魔だと? テメェは魔物使いじゃねぇだろ?」
不敵な笑みを見せるアルムニスに違和感を感じながらもドラッグが問い掛けた。すると、倒されたデジェネスバーンの下に魔法陣が浮かび上がってきた。巨体なデジェネスバーンの身体が魔法陣の中に吸い込まれて行き、身体が魔素になって吸い込まれてしまった。
そして、魔法陣の中央に立っていたのは黄金の甲冑を纏った騎士であった。
「リビング・アーマーか?にしては変な魔力だな」
ドラッグが魔法陣から現れた魔物の正体に気づいた。戦士や騎士など生前に未練を残した魂の集合体の魔物であり動きも剣を振り回すだけで動きに注意して魔核さえ破壊する事ができればなんともない魔物である。
「油断するな。気を付けろ ドラッグ。このリビング・アーマー何か嫌な気配を感じるぞ?」
だが、レオーネのいう通りである。このリビング・アーマーからは異質な雰囲気が漂っていた。
アルムニスが指示を出さずとも黄金の甲冑を纏った騎士は大剣を両手で握り締めて突撃してくる。レオーネも突撃し、黄金の甲冑の脇を切り裂く。そこにドラッグが喧嘩煙管を振りかざして兜を粉砕する。
「なんだ。全然たいしたことないね? 見かけ倒し?」
「んな訳ないだろう。少なくともまだ嫌な魔力が漂っている。何かある 」
「流石はドラッグ。その通りだ。その黄金の甲冑は私が作り出したグランディア王国の象徴そのものだ」
「グランディア王国の象徴だと・・・?」
不敵な笑みで見下ろすアルムニスの言葉の意図について聞き出そうとしたがその意味は直ぐにわかった。レオーネとドラッグの攻撃を受けて砕かれた黄金の甲冑と兜が修復し始めるとまえの姿と違っていた。
「チッ、再生持ちか? 厄介なモン呼び出しやがってめんどくせぇな!」
「ドラッグ。妙だぞ? 此奴魔力量が増えたぞ?」
通りで黄金の甲冑が変わっただけでなく、魔力が上がっていた。
おそらくは倒せば倒すほど身体を修復させて魔力量を増加させていくのだろう。
レオーネとドラッグが攻撃を仕掛けて突破口を見つけ出そうと再び破壊する。まだドラッグ、レオーネクラスの攻撃には耐えられる防御力は備わっていないようだ。
見ているのも焦れったくなってきた。壊れた黄金の破片目掛けて戦斧を振り下ろして粉砕して修復できないまで粉々にしてみる。
だが、驚いた事にいくら粉々に砕かれようが修復をしてより強い魔力量を蓄えて強くなる。グランディア王国の象徴とアルムニスは言っていたがその意味がわからなければ倒しようがないだろう。
少なくともこれだけ粉々にしているのであれば必ず魔核も一緒に破壊されている筈だからだ。
「クソッ!どうなってくるんだ?この甲冑野郎は!!?」
「ふん。いくら貴様らが強かろうと意味はない。その黄金の甲冑はまだ完全な魔物ではないからな」
「どういう意味だ!? アルムニス。テメェ何をやったんだ!!?」
「落ち着け ドラッグ。少なくともまだ『完全な魔物ではない』事に意味があるのだろう。この修復力は以上だ」
再び修復して更なる変化を続ける黄金の甲冑相手にドラッグとレオーネは善戦している。だが、向こうは何かを隠してる。何を隠してるのか? 気が付けばアルムニスとトビアスの姿が見えない。
すると、何を思ったのかコロシアムにわざわざ降りてきた。アルムニスは落胆するトビアスに懐から紅い宝石を差し出す。
アルムニスに何を言われてたのかはわからないがトビアスは何とその紅い宝石を口にいれてしまった。暫くするとトビアスは不敵な笑い声を挙げた。
「ハハハッ!これはいいぞ!ドンドンと魔力が上がっていく!!流石はアルムニ・・・? はっ?」
「トビアス様の頭が残念なのは承知の上でございます。異世界から来た者の知識をもつミノタウロスを手に入れるためにもトビアス様には人ならざる者へと進化していただきます・・・」
紅い宝石を口にしたトビアスの身体からは筋肉が膨らみ千切れる音と筋肉の重みに耐えられずに折れる骨の音がコロシアム内に響き渡った。
そして、ついには魔物でも魔獣でもない異形な怪物へと姿を変えてしまってのであった。
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