第174話【ドラッグの目的】
ベラドーナの屋敷の中に通されてドラッグは薬神・ディオスとの関係や俺達との繋がりについてベラドーナに話し終えたところでグランディア王国に来た理由を語り始めた。
理由は2つ。
一つは元・ジーニアス王国のルイ王女とレオーネの救出をである。ドラッグ自身もフェンナト王国で冒険者時代に世話になった事もあるというのもあるが、ポートフォリオンを一国として纏め上げるには王族を迎え入れる必要がある。
フェンナト王国と繋がりのあるジーニアス王国のルイにはその権利があるというのだ。よく聞けばダリル伯爵とローランド公爵からはドラッグを新国王としてポートフォリオン王国する話がでたらしいが薬作りと今の暮らしが気に入っている為に嫌らしい。
その為にジーニアス王国との繋がりで旧・フェンナト王国で王位継承権のあるルイ王女の存在を思い出して探していたという。
少なくとも女王陛下のみでも周りがしっかりと支えられる環境さえ整えれば一国の女王として認められるからだ。
「つまりはドラッグが王様になるのが嫌だからルイちゃんに任せようと思った訳?」
「それもあるがジーニアス王国でもフェンナト王国との繋がりって意味でかなり扱いは悪かったらしい。特に先代のマルセル国王が病死してからはな。それにアドディア帝国との戦争もマルセル国王が亡くなって国営が上手く行かなかったからだしな」
どうやらジーニアス王国のマルセル国王はかなりのやり手だったらしいが後を継いだ息子らには国営の手腕はなくそれを手助けする者もいなかったらしい。アドディア帝国からすれば楽に領土を拡大する事に成功した事になる。
ドラッグはルイを中心に難民受け入れを整えてポートフォリオンを人種差別撤廃王国を目指す方針で行きたいと考えているらしいが取りあえずは本人と話さなければならないために救出が先決だという。
2つ目はディオスからの依頼で俺達が目指しているガルーシャ大洞窟の突破に力を貸してほしいと頼まれたというのだ。
その理由を訊ねるとクロニアス王国の迷宮から異世界書物が出てきた事が切っ掛けらしい。
元々、異世界召喚というのは一日千人の人間が亡くなる中から優れた人材の魂を呼び寄せるものであるらしいのだが、条件に該当する者がいなければ生きた人間が変わりに連れてこられるのが異世界転移という行いになってしまったらしいのだ。
そこで何故、迷宮内で異世界の書物などが来ているのか調べた所より効率よく迷宮難易度をあげるために迷宮自身が学習してしまった可能性があるからだと教えられた。
「俺自身そんな事があり得るのかって思ってるけどあのディオスが自分にとってどうでもいい件を気にするのは何か変だろ?」
「よくわからないが異世界人だけではなくて物も召喚されていると言うことなのか?」
「俺も異世界の事は詳しくねぇから何ともいえねぇけどな。例えば流行り病を人工的に製造できる方法があるねら国家機密レベルって感じだろうな。少なくとも魔法がない分色々な分野がこっちの世界よりも進んでるからその知識や製造を持ち込みたい世界は多いらしいぞ?」
確かにこちらの世界では当たり前に魔法がある存在する。ある程度は異世界人の知識や文化によって発展しているのも事実である。このグランディア王国のゴブリン達も何世代にも渡り、農業や漁業に必要なものを作り出したりしている。
言い換えれば異世界からの知識は国政状況を一変できるだけの力があると証明していると言ってもいいだろう。特にグランディア王国では異世界の知識を何らかの方法で入手できないか模索しているという噂もあるらしい。
ベラドーナも異世界について話を尋ねた事があるが魔法がない為に科学が発展していたと聞いたことがあるという。自分自身も一応は異世界人であるがそういった知識はまるで思い出せない。
少なくとも食い物やトレーラーハウス等もアステリオスの力でわかるが前の世界でどういった人間だったのか思い出せないのは事実だ。そう考えているとドラッグがとんでもないことを口に出した。
「けどなぁ、多分取引には応じねぇと思うぞ?エリクサーはミノタウロスの身体で全部揃うとかこの国ではいわれてるし・・・」
「ミックスって不老不死なの!?凄くない!?」
「いや、俺ら魔物や魔獣は体内の魔力で生きているし、寿命がある魔物や魔獣は大体体内で魔力を産み出すのが苦手な種族だぞ?」
「まぁ、俺もエリクサーの作り方知ってるし、そもそもミックスの角にそんな効果ない。多分、角の再生能力の事だろうな。ミノタウロスの角は折れてもすぐに生えるって噂があるからな」
つまりはエリクサーの素材として見られていたと言うことなのだろうか。俺は不死身でその身体からエリクサーが作られるから高額な金額が掛けられていたと考えれば色々と辻褄が合う
そうなってくると、ドラッグのいう通り交渉通りには行かないだろう。
早朝、グランディア王国からの使者がベラドーナの屋敷に現れてルイ王女と剣闘士レオーネを掛けて決闘を挑まれてしまった。
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