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第17話【 特訓と覚悟(2)】



そう、ミックスが心配していたのはリザーナの『エルフ』らしさがない事が原因であるのだ。 少なくともあのリザーナがそう簡単に鍛練の為とはいえ、ちゃんとやれているのか不安であった。


ただでさえ、出会ってすぐにミノタウロスに出会ってミノタウロス相手に「金貨を貸して下さい!!」と土下座をしてきたのを今でも覚えている。


そして、仕舞いには金貨を借りる為に服を脱ごうとし、パーティーを組む為に服を脱ごうする貞操概念がずれているリザーナがまともな特訓ができる筈ないのだ。


つまりはリザーナの面倒を見ているガーベラが危険な目にあっているのではないかと不安で仕方ないのだ。


すると、ドラッグがそんな様子に気が付いたのか声を掛けてきた。


「ミックス。主が心配なのはわかるが今後魔族がどう動くのか俺にもわからん。リザーナには自分で身を護る術をつけて貰わないと・・・。

使い魔として心苦しいだろうが・・・」


「ドラッグ・・・。いや、心配してるのはガーベラの方なんだ。リザーナが迷惑を掛けてなければいいのだが・・・」


「はぁ? そりゃいったいどういう事だ?」


すると、リザーナの声が空から聴こえてきて見上げると空からリザーナが落ちてきたのだ。

慌てて受け止めるとリザーナは抱き着いて来てギャンギャンと泣き始めたのだ。


ドラッグは状況が飲み込めずにガーベラを呼び戻すと呆れた表情を浮かべていたのだ。


リザーナに1人でも魔物を倒せる力を付けさせる為にドラッグたちが暮らしている森に棲んでいる魔物や魔獣の討伐を手始めにやらせていたのだが、まるでダメで群れを怒らして逃げた挙げ句ガーベラの身体に飛び付いてきたのだ。


当然ながら怒りで我を忘れた魔物や魔獣を纏めて相手にするにも数が余りにも多すぎた為に飛んで撤退してきたという。


そして、ミックスを見つけると身体を離して落下してきたという事であったのだ。


ドラッグは困った顔でリザーナに現在の状況とリザーナ自身が強くならなければ意味がない事を伝えたがリザーナにはどうでもいい事であったのだ。


しかし、冒険者しての功績ではなく伝説級の怪物として語り継がれているミノタウロスであるミックスの力のお陰だと陰口を言われる事など最初から解りきっている事であるから気にするだけ無駄だと開き直ったのだ。


リザーナからすれば、ミックスらとパーティーでいることのが重要なのだというのだ。


だが、ドラッグはそれとは別にリザーナのパーティーには致命的な欠陥がある。

前衛を任せられるミックスとエレーナを後方から支援できる者がいないと不利な状況になりやすいというのだ。


実際にドラッグとガーベラは近接格闘型の為に植物を操れるフェローラの後方支援に助けられた事が何度もあるからだ。


少なくともこれから先もこのメンバーで過ごして行きたいと考えているのであれば弓矢の技術をあげて少しで手助けをできる実力は必要であると伝える。


「・・・けど、私はエルフだけど魔法使えないし、弓矢も全然ダメだから・・・」


「なら、尚更訓練するしかかないぞ? これから先もミックスらが護ってくれる保証はない。

リザーナ、ミックスらに甘えるのは良いけどな? それとは別にいざって時に助けられる力は冒険者には必要なんだ・・・」


常に冒険者は危険と隣り合わせの職業である事を知ってるドラッグは度々ガーベラ達に助けられてきたのだ。 少なくともスラム街で人間相手との喧嘩と魔物退治でかなりの差があるのだ。特に【肉体強化】と【武装強化】を収得できたとしてもいざという時に仲間や自分自身を護れなければ失うものが増えるからだと話す。だが、ガーベラも匙を投げ出したいという表情をしていたのだ。少なくともリザーナはエルフで弓と魔力は高い筈だが、リザーナはその両方ともが出来ないのだ。


ドラッグは腕を組み考え始めた。


すると、ガーベラにエレーナの【肉体強化】と【武装強化】の訓練に付き合うように指示を出すと一度ゴリガンと相談してみるというのだ。


このエデンの街から南に向かった先に巨大な港街の都市【ポートフォリオン】があるのだ。

そこの街のギルドマスターは狩人であり、魔法を使った特殊な弓矢を射る事ができる為にその人にリザーナの師匠を頼もうというのだ。


「ただし、ゴリガンが話を通してくれても向こう側が受けてくれるとは限らない。それにポートフォリオンにリザーナを修業させるなら、少なくともミックスとエレーナはリザーナを護れるだけの実力をつけて貰わないと困るからな・・・」


「・・・人狼族の【フォルト】ってギルドマスターで元はゴリガンのパーティーメンバーの1人だから話は通して貰えるんじゃない?」


なるほど。ゴリガンの元冒険者パーティーの人なのか。つまりはゴリガン同様に実力者であるが、フェンナト王国の差別によって護衛職(ガード)になれなかったという事なのだろうか?


こうして、ドラッグの話を聞くと統治しているフェンナト王国の王の器の小ささが言葉だけで伝わってくる。


少なくともフェンナト王国には出来れば、行きたくないし面倒事を受けたくないと思ってしまった。


ドラッグはミックスには魔力操作のコツを感覚的に覚えて貰い、リザーナもついでに魔力操作の特訓をフェローラなら教えて貰うように伝えると地面にへばっていたエレーナにはガーベラが相手をする事を伝え、少なくともガーベラから1本取ってみろと言い残して屋敷から出ていってしまったのだ。


フェローラとガーベラはお互いに顔を見合せた。


おそらくドラッグは身体に取り込んでいる魔素が濃くなってきている事に魔王復活の為に魔族が本格的に行動していると予測しているのだろう自身の身体も『何となく』ではあるが嫌な気配を感じるからだ。


少なくとも口振りでは故郷であるフェンナト王国が滅んでも良いとは考えているのであろうが、少なくとも自分等の暮らしを護るためにも戦力を1人でも多く増やしたいのが本音なのだろう。


だが、ガーベラはドラッグは自分と同じで魔族や魔物に好かれる変わったエルフだから殺したくないと思っているから、あんな事をいっているのだろうとクスクスとわらったのだ。


ドラッグが自分等以外の人間の為に頼み事をする事など滅多にないからだ。


それだけ気に入られるとガーベラとフェローラは笑みを見せたのであった。


それとは別に目茶苦茶鍛えられてしんどかったのは別の話である。

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