第168話【大司教・アルムニス】
目の前に現れた武装した人間達の目的はオレかエレーナの捕獲であろう。そちらがその気ならと戦斧を魔核収納から取り出すと狼狽えた声が上がった。エレーナも武器を取り出してやる気であった。
だが、メルディアによってそれは無意味なものに終わってしまった。水の玉を人数分作り出して顔に着けてしまったのだ。魔法で産み出された水は発動者が死ぬか解かなければ助かる方法はない。エレーナは不機嫌そうに武器を納めて訊ねた。
「良いのか? アイツらを殺してもよ?」
「かまへんよ。アイツらブルンネの港町から着けてきた冒険者崩れの奴らや・・・」
「冒険者崩れって事はどこの村や街にも所属してないって事か?」
「多分リザーナはんがここにくる事がわかって後を着けてきたんやろうね。けど、ウチら相手に勝てる人間はおらへんよ」
ゴブリン達とは別な気配は感じてはいたがここまで弱いとは思っても見なかった。
だが、メルディアからすれば冒険者としての基礎も倫理観もない落ちぶれた冒険者に掛ける情けはなかった。
リーダー格らしい男の懐から何か何かエレーナが探っているとやはり魔物使いが使役しているリストらしきものがでてきたのだ。リザーナはS階級の魔物使いとして冒険者界では名が広まっている。
エルフの少女と魔物の一団ならば大金を掛けられていてもおかしくはないだろう。だが、少なくともこの程度の一団ならば相手にもならない。
つまりは本気ではなかったのかただ単に掛けられている報酬に目が眩んで先走ってしまったのでないだろうかとメルディアは話す。
エレーナからリスト表を見せて貰ったが金額ではなく星マークが絵の隣に幾つか書かれていた。メルディアは7。エレーナが5。オレが8であった。この星マークの意味が何を指しているのかは直ぐにわかった。
他のリストにも同じように星マークが書かれていたが恐らくは星の数で買い取ってもらえる金額が決まっているのだろう。
この辺りはウルフ、パンサー、ライガー、グリズリー系の魔獣が多く大型でシルバー、レッド、ブラックと毛並みでも高値で取引されているようで5~7。次に人気なのが大型の牛や猪、蛇の魔物が星マーク5~6となっているようだ。
捕らえてくる魔物や魔獣の強さによって報酬額違う為に高額で尚且つ集まっていた所を狙った感じか。
リストをみてると何とリザーナまでも星が3も着いていたのだ。
つまりは最初からリザーナパーティー全員を狙っていたということだろう。
「このままグランディア王国に行かずにガルーシャ大洞窟を探すか?リザーナを危険な目に合わせるのは・・・」
「まぁ、気持ちはわかるけどよ? リザーナに対して過保護過ぎねぇか?」
確かに過保護ではあるがリザーナを護るのが契約であるために二人とは多祥なりともズレがあるのだ。メルディアはガルーシャ大洞窟の場所がわからない以上は警戒を強めておおよその場所を特定する必要があるという。
つまりはゴブリン達から情報収集する必要があるという事だろう。
このグランディア王国は今まで訪れたどの国よりも危険で一杯であり溜め息を空に向かって着いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
グランディア王国の大神殿には大司教・アルムニスが秘密裏に使っている隠し部屋がある。
彼は表向きは孤児や難民を引き取り神の名の元に救済をする善人であるが裏の顔は極悪人である。連れてきた孤児の幼い少女らをグランディア王国の法律を護るために女神・ティアの使いとしてグランディア王国の街や村から来る同い年の娘の相手をさせる。
負ければ奴隷として買われてしまい、また貴族同士の交遊での闘いで破れれば娼婦に堕ちてしまい女として値が着かなくなるとゴブリン達の貢ぎ物として売っているのだ。この悪人は冒険者崩れの集団を使って各国から孤児や奴隷堕ちした者を何かと理由をつけて救って地獄に落としている。アルムニスは背後に跪く男の前に立ち話始めた。
「どうやらあのミノタウロスを使い魔にしてるエルフの少女がグランディア王国に来ているようですね」
「はい。莫大な報酬に目が眩んだ荒くれ者達は一掃されました。どうなさいますか?」
アルムニスが孤児や難民を率いれている理由は異世界との繋がりに関係している。この世界は何らかの不可解な出来事で別の世界と繋がっている。そしてそこに住む人間の魂や貴重な資料がこちらに流れてきている。
グランディア王国の発展にはゴブリンの器用さに加えてそういった異世界の知識が絡んでいた。その為に異世界の知識を持ちミノタウロスとして生まれ変わった者が欲しいのだ。
ミックスは知らない。この男の狙いがミックスが持つ異世界の記憶であると知るのはまだ先の話である。
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