第166話【グランディア王国の風習】
船に揺られて半日でブルンネの港町に到着した。一応は他の港町からも船が出ているらしいが、乗ってきてた船以外はそれらしい船は見当たらない。
港町にしては漁師が船を出して市場が賑わっている様子もなくドンヨリとした空気が漂っていた。
何よりも人の数が少なすぎる。嫌な感じがしたのかリザーナは角にしがみつけてきた。
ここには一緒に乗っていた怪しい一団が積み荷を下ろしていた所だ。
すると、髭を生やした男が「檻が届いたぞ!」というと何処からともなく人々が集まってきたのだ。
何故、檻が人気なのかはわからないが異常な熱気である。
檻のサイズはミノタウロスの自分を閉じ込めるられる大きなものまであるようだ。
どうやら積み荷の大半は檻でマリーナシティで使われなくなった檻を買い占めに来ていたようだ。
とりあえずはここに長居するのは危険だと判断しブルンネの街から離れる事にした。
「はぁ、やっぱり何も変わっとらへんな~」
メルディアは呆れた様子でそう呟いた。ブルンネの港町もグランディア王国に毒された街であるからだ。
この辺りの近隣の農村の街も似たような感じだというのだ。
あの檻は魔物や魔獣を捕らえた際に使うものであり、魔物や魔獣の脅威度もしくは数によって貰える褒賞金が多いというのだ。
この辺りには山々や草原地帯を縄張りに持つ魔物や魔獣が多いというのだ。
それもその筈でこのように近隣の村や街から多くの男手を使い魔物や魔獣の捕獲に向かうからである。
そうなると、捕らえれた魔物や魔獣は何処に行くのかというとグランディア王国のコロシアムに送られるのだ。グランディア王国には魔物や魔獣を強制的に懐柔する事のできる強制懐柔という魔法を使える者がおり、その者に高値で買い取って貰えるというのだ。
だが、街や村を上げて危険な事をすることに何の意味があるというのだろうか。
「グランディア王国にはな。コロシアムがあるねん。そこで利益を上げてるんや。まぁ、街や村が躍起になってんのはその村や街から強制懐柔の使い手が稼ぎ頭になるねん」
「強制懐柔の使い手が稼ぎ頭になる? まさかだと思うがコロシアムで魔物や魔獣を戦わせているのか?」
それもあるが各国から奴隷を集めているというのだ。そこで見世物にされて魔物や魔獣と戦わされてその勝敗を賭けにして利益を出しているというのだ。
強い魔物や魔獣を手懐けてグランディア王国の王・ジャマタフ王に認められ巨額の富を得ることができ、その恩恵を村や街は受けられるのだ。
つまりは漁や農作業は女や老人の仕事になるのかかといえばそれも違うというのだ。
メルディアが指を指した場所を見るとゴブリンが人の言葉を話して街を成り立たせていたのだ。ゴブリンはこの辺りの魔物や魔獣の中でも下であるが彼らは言葉を長年の月日を掛けて覚え仕事も完璧に覚えてしまったというのだ。
今はゴブリン達が村や街の作業をしてその恩恵で他の魔物や魔獣との縄張り争いから抜け出すことに成功しているというのだ。良く見れば人に近いゴブリンもちらほらと見えた。
「ああ、あれは人との混合種や。この国ではな。女にも価値の付け方があるねん」
「どういう事だ?ドラッグの話だとゴブリンってのは女を孕まして増える種族だろ?希にゴブリンガールっつっう雌のゴブリンが産まれて繁殖力を強める魔物だろ?」
「普通はそれで街や村を乗っ取ったりするんやけどな。このグランディア王国ではその必要はないんや・・・」
グランディア王国ではそんな必要はないという言い方に首を傾げた。すると、女の悲鳴が聞こえてきて何事かと見ると年端もいない少女達がアマゾネスの衣服のような姿で戦っていたのだ。
メルディアはあれもグランディア王国の風習の一部であるというのだ。このグランディア王国の女達は戦って勝たなければゴブリン達の繁殖道具として最終的には堕ちてしまう為に皆必死であるというのだ。
それも大昔に【戦いの女神】・アテナを信仰していた女がこの地に病を降り注いだ魔女相手に身体一つで立ち向かったというのだ。魔女は強大な魔力を持っており、女は強大な武器を使い死闘が続けられ魔力がつきた魔女と武器が壊れた女は最後は己の身体一つで闘い見事に魔女に打ち勝ったのが始まりであるそうだ。
この国では闘いに勝てばより良い環境で暮らすことができ産まれた街や村にもその英雄を育てた・誕生した地として国から援助を受ける事が出来るのだ。その為に幼い頃から闘い方を学んでいるというのだ。
「それで国が成り立つ者なのか? それだとどの道人が足りなくなるだろ?」
「だから孤児を集めるねん。女はそのまま闘うために使われるし、男は魔物や魔獣を捕まえる。この国は色んな場所で行き場を失くした者が集まる場所や。そんでそれを見世物にして稼ぐ最低な国やねん。けど、女神の信仰者が成し得た事は事実で信仰されてるねん」
確かに【戦いの女神】・アテナを信仰していた者がこの地を救ったのが本当ならばその英雄を育て続ける必要があるだろうが、魔物と共存し、他国の孤児を集めてまで存続させる必要があるのだろうか。
すると、リザーナが恐る恐る訊ねた。
もしも、負けたらどうなるのかとメルディアはそれはグランディア王国で嫌でも目にすることになるといい口を閉ざしてしまった。
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