第132話【養う・面倒を見る=理想の旦那?】
この世界の屋台では基本的に串焼きなど手で持ち運びやすいもの多い印象だ。魔法の鞄等も貴重なアイテムである為に基本的に麻布の袋やバスケットカゴを持って買い物をするのが普通である。
買い食いをする上で容器が必要になるものは洗い場などを設置する必要があるためにかなりの資金が必要となってきてしまう。
そこであらかじめ容器を持ってきても貰う事で値引きするサービスを思い付いたのだ。
少なくとも安く食事を済ましたい冒険者からすればそういったサービスに食いついてくると思ったからだ。
実際に冒険者ギルドに皿などを洗う洗い場を作った事で金のない冒険者も安い価格で提供できるのだ。
勿論、これを真似しない商人はいない木で彫られたマグカップを持ってきてくれたら値引きをするスープ店がチラホラと表れ始めたのだ。
そうなってくると嬉しい悲鳴をあげるのはその商品を扱う雑貨屋などである。
少しでも値引きをして貰える事により装備品や宿屋などに泊まれる金を節約に回せるようになるからだ。
雑貨屋には焼きおにぎり用の金網もいつか置かせて貰ったが売れ筋はそこそこで作った職人も受注依頼が増えたと喜んでいた。
それと同時に主婦層にも料理を教えていく。
「家で焼きおにぎりを作るなら炊く時に味付けてしてフライパンで焼くてもありますぜ?」
「なるほどなるほど、確かにこれなら子どものおやつにもいいかも。因みに揚げ物は?」
「揚げ物をする際は油を必要な分で揚げるのが家庭的いいかもな。こっちだと『廃食油』どうしてるんだ?」
「んー確か、魔導具屋さんの職人が集めてくれるんだよ。何か『アロマキャンドル』とか『石鹸』の材料になるとか聞いた事はあるわね?」
元々、大量に油を使う料理は少ないが、フライパンなどに残った油取り用のフキンを回収している魔導具屋があり、その油からアロマキャンドルや石鹸を作っていると教えてくれた。
屋台を開いて三日もすれば、ミノタウロスだから恐がる者はおらず気さくに話しかけてくれて屋台が暇な時に軽い料理教室を自然に行うようになっていた。
詳しく聞くと、旦那が冒険で昼間に食事処で働いてる主婦もいる為に期間限定で屋台をやっているミノタウロスの元に料理を習いに来てくれていた。
クロニアス王国でのメイブツ料理として親子丼とカツ丼を教えたが、ビックチキンの鶏肉もあるので唐揚げやチキンカツなども作り方を教えているのだ。
スープ系はビックチキンの鶏ガラから作る野菜スープがクロニアス王国の主婦層で良く作られるそうだ。
こういった現地の主婦の噂話などはバカに出来ないのだ。思わぬ所から新しい情報を入手出来る事も充分にあり得る事だ。
今日はブタ貴族の肉を使った『しょうが焼き』の料理教室である。
始めにキャベツの芯を切り落としてお馴染みのキャベツの千切りを用意しておく。次にボウルにすりおろし生姜、醤油大さじ2と砂糖、料理酒大さじ1を混ぜ合わせてタレを作っておく。
次に豚肉を薄切りにして薄力粉をまぶして、中火で熱したフライパンに油をひき、薄く切った豚肉を入れて両面がこんがりと焼き色が付くまで焼き、タレを入れる。
中火で炒めて全体がなじんだら火を止める。
「あくまでも知識として知っておけば後は各家庭事で味付けをするのもありだな・・・」
「こう言った料理教えてくれる場所ないからありがたいわ~」
「前に教えて貰った唐揚げや玉子焼きも子どもらに好評なのよねぇ。ありがたいわ。砂糖もポートフォリオンとの貿易が始まって安くなったし・・・」
「そりゃ、良いことじゃねぇか?子どもに美味いもん食わしてやりてぇ思うのはいい親だろ?」
アステリオスの約束はこちらでも異世界の食べ物を流行らせる事とレッドクリムゾンらを完全にラビュリンティスに封じ込める為に30階層以上ある迷宮を踏破しなければならない。
クロニアス王国ので活動も産地の食材で作れるものを流行らせて冒険者経由での口コミで脚を運んでもえられる様にする事も必要だと考えて始めてみた事であるからだ。
ただ、料理や子育ては女の仕事だという風潮がある為にミノタウロスが家事と育児をして働いてる為に主婦層からの受けが良いのだ。
「あ~!!!ミックス、また新しい料理を私に食べさせてくれてない~!!!」
「ミックス!!ズリィぞー!!!」
その原因はリザーナ達は冒険者家業をこなしているが、自分は両方ともこなしている為に旦那に見習って欲しいというのだ。
特にリザーナとエレーナは幼い姉妹でメルディアは歳の離れた姉という感じに見られており、それを支え護っている父親の立ち位置で見られているのだ。
一応は魔物使いとその使い魔の仲間なのだが、子育てをしながら料理をする大変さを知ってる主婦が普段の日常を見て共通する所が多いために話が合ってしまうのだ。
ただ喧嘩をしない為に他の家庭よりは平和的であるが、リザーナやエレーナの口元を拭いたり、メルディアと話したりと理想的な父親をしていると評価されてしまったからだ。
特にリザーナは魔物使いとしてミノタウロスに世話を見て貰っている子どもにしか見えていないらしいのだ。
そんな事を知らずに腹へったコールを受けてしょうが焼きを作り、リザーナ達の食事の準備する姿をここ暫く見ている為に親近感を感じて貰った事が大きな反響を産んだのだろう。
お陰で魔物だからと怖がれる事はないが何ともいえない感情でリザーナらを見つめるとしょうが焼きを食べて口元を汚しているのでそれを拭くと「やっぱりあれくらいしてくれる旦那になって欲しい」と比べられる対象になってしまっていた。




