第117話【ステーキバター醤油丼とうる覚えなプリン】
魔核収納からトレーラーハウスと長テーブル、魔道コンロ、魔道冷蔵庫、を取り出して異世界でのホットケーキとプリン作りに挑戦するが、曖昧な記憶を頼りに作らなくてはならない事と一つ心配事があったからだ。
異世界の卵を使う際には火を通しているが、沸騰したお湯や冷蔵するのはアリなのかという事を確認して置かなければならない。
メルディアに訊ねると、生じゃなく短時間でも温めれば大丈夫だというのだ。
基本的にこの世界では生で食べる事はしない為煮るか焼かなければならない。
魔物である俺とエレーナは大丈夫らしいが一般的な知識として煮るか焼き、火を通すのは当たり前らしいのだ。
もし、可能であれば手抜きで『卵かけご飯』とか出来たが、リザーナに喰わせらないのは正直言ってめんどくさい為に仕方無いと諦める。
だが、教会ではそういった魔物の卵を除去したものを貴族や王族相手に取り引きをしているらしいのだ。
「メルディアはできないのか?その除去魔法ってヤツは」
「ん~原理が解ればいけるかもしれんけど、本職に任せるのが安全やで?」
「なるほどな。取りあえず先に風呂入ってこい。ホットケーキは朝飯で出せるようにするからプリンは今から作る」
「ミックス、期待してるよ~」
トレーラーハウスの中にある風呂に向かったのを見届けると、前にポートフォリオンでリゼットと作った小さい牛乳瓶を幾つか取り出した。
元々、牛乳の販売用に小瓶を作っていたものをリゼットに製造法を教えていた。
元々、武具屋よりもメンテナンスやそういったワインボトルなどの瓶造りをしていた為に孤児院の子どもらが飲みやすい用に作っており口が大きいものがいくつかある。これを容器代わりにしてプリンを作っていく。
始めにカラメル作りからだ。先ずは小鍋に砂糖と水を入れて中火で熱し、鍋を優しく揺らしながら砂糖を溶かし、茶色くなるまで同様に揺らしながら煮詰めていく。
その後、火を止めてお湯を加えて混ぜてたら、小さい牛乳瓶にカラメルソースを等分に入れてたら魔道冷蔵庫に冷やす。
次に別の鍋に牛乳と砂糖を入れて中火で熱し、湯気が立つ程度まで温める。その間にボウルに卵を入れて混ぜて砂糖を加えてよく混ぜて卵液を作っておく。
牛乳が温まれば、片手でボウルの卵を混ぜながら牛乳を少しずつ注ぎ入れて注ぎ入れた後に卵液をざるに通して一度濾しておくと口当たりがなめらかになる筈だ。多分、合ってるよな?
濾した卵液の上の泡のかたまりをお玉で除き、小さい牛乳瓶に卵液をそっと注ぎ入る。
その際に注ぎ入れた後に大きな泡があれば、小さなスプーンなどでつぶしたり、すくったりする事で仕上がりがきれいになる。
厚手の鍋に並べたら器の1/3~半分くらいが浸るまで湯を入れて弱火から中火で10分~15分火に掛ける。沸騰したら蓋をするが、鍋蓋に手拭いタオル等をしっかり巻き付けて水滴が落ちないようにする。
竹串などを刺してみて、火が通っていば、後は粗熱を取って魔道冷蔵庫で冷やせば完成だ。
「マジで大丈夫か?うる覚えの記憶ほど頼りにならねぇもんねぇぞ。まぁ、ダメならまた挑戦すれば良いだろう。そう言えばあったかいプリンもありか?」
魔道冷蔵庫にプリンを入れてうる覚えな記憶を頼りに作ったプリンが不安つい独り言を呟いてしまった。簡単に作れるが前の世界とか違って曖昧な記憶だけが頼りだ。
もしも、美味くなければ、美味く作れるように工夫や思考をするだけ料理の大半はアイデアと工夫で作られたものだ。
取りあえずはステーキ肉用に切り分けて置いた地竜の肉を使ってステーキ丼を作る。
先ずはタマネギをくし切りにしておろし金でくし切りにタマネギをおろす。次にニンニク一片を皮を剥き、薄切りにする。次にステーキ肉に塩、胡椒を一、2摘まみ両面に振り掛ける。
フライパンに火を掛けて温めたらバターを入れて薄切りにしたニンニクを炒める。一度ニンニクを取り出してステーキ肉を焼いていく。
両面をしっかりと焼いて、醤油を大さじを肉全体に掛ける。そこにおろしたタマネギと炒めておいたニンニクを投入していく。
後は丼ぶりに米を入れ、千切りキャベツ、切り分けたステーキの順に乗せて最後にフライパンに残ったバター醤油を肉に掛けて塩胡椒を振り掛けて完成である。
これを人数分用意し終わったくらいにリザーナ達が風呂から出てきたので飯にした。
「おぉ~噂のステーキ丼美味しそうだね!いただきます~」
「バターとニンニクとタマネギがあったから後は醤油があればいけると思ったが・・・どうだ?美味いか?」
「美味いけどさ。何でいつも千切りキャベツがあるんだよ?」
「揚げ物とか多いと胃もたれするからキャベツに含まれる何かがいいから入れてるんだ。後は胸の成長に良いからリザーナの為でもあるな・・・」
使い魔として契約が影響しているのか、何となくではあるがリザーナの望みがわかるようになってきている気がするのだ。リザーナが魔物使いとして成長したからなのかそれともリリスの呪いの力なのかはわからない。
だが、能天気なリザーナは話を聴いているのかいないのかわからないし、おそらくは本人もわかっていないのだろう。
食後のデザートで魔道冷蔵庫からプリンを出してスプーンを渡すと三人とも幸せそうな顔をしていた為に美味いようだ。自分も食べてみたが中々いけた。正直、かなり不安ではあったが、何とか上手くプリンを作れてほっとした。
その後はメルディアに自分の風呂と食器などを洗う水を用意して貰って洗い物と自分の風呂の準備をした。
【迷宮の王】のお陰でそのまま地面に穴をあけて洗い場と風呂を用意できるのは有難い。
トレーラーハウスに三人は戻っていき、風呂を済ませると地面を元に戻して自分も就寝する事にした。起きたらいよいよオーガとの顔合わせである。




