第114話【カツラに翻弄されるブタ貴族】
迷宮での初の宝箱の中身はカツラだった。しかも茶髪、金髪、黒髪の三種という謎なアイテムを入手したが、クロニアス王国の王様も家臣や貴族達もハゲでない為に価値はないだろう。
気を取り直して、11階層に下ると、小高い丘から広い草原地帯が拡がっていた。噂通りここにとどまってビックチキンやブタ貴族を討伐している冒険者の姿がチラホラと見えていた。
ビックチキンは巨大な太った鶏でブタ貴族は二足歩行で歩いているが、そこまで大きくなく手には何故かワインボトルが持たれていた。
ただこの階層から冒険者達の様子が変であったのだ。何故か、エレーナと似たようなビニキ姿になっている女冒険者が増えていた。
先程の階層ではローブや普通の革の胸当てをしていた筈だ。
元々、エレーナはチューブトップであったが成長した為に地竜の鱗でビニキアーマーのブラジャーを作りそれを装備している。
「・・・何やってんだ?あれは?何で女冒険者は上半身だけ下着になってんだ?」
「あー・・・ブタ貴族は大の女好きやねん。だから色気のある女に勝手によってくるからな」
「そういえば、エルザさんもビニキアーマーで巨乳だったよね?」
「それはいいけどよ?あれだとビックチキンに狙われたヤバくねぇの?」
所がそのビックチキンも火に弱くみたいで簡単に怯んでしまい、そこを前衛の冒険者が仕留めるという形が基本のようだ。
取りあえずは草原に降りてみたが、ブタ貴族もビックチキンもヒビって近付いて来なかったのだ。
本来であれば、迷宮に入ってきたものに襲い掛かるのが魔物や魔獣の役目であるがここの階層は本能に正直なようだ。
メルディアは全裸だが、水の身体でエレーナも似たような姿をしているが強さは桁が違う為に襲っても返り討ちされることがわかっているのか襲ってこない。
すると、リザーナは何を思ったのかおもむろに先程手に入れたカツラを被せてきたのだ。
「襲ってこないからって遊ぶな!!」
「暇なんだもん!!仕方ないじゃん!?」
「元々、ミックスはんは茶い毛やけど金やと目立つなぁ~」
「何か面白ぇな!その格好は・・・ん?なんだ?」
余りにブタ貴族やビックチキンが襲ってこないので安心仕切ったリザーナが悪ふざけで金髪のカツラを被せると何故かブタ貴族達が大群でこちらに向かってきたのだ。
近くにビニキアーマー姿の女冒険者がいたが見向きもせずに素通りしこちらに凄い勢いで向かって来ている。
すると、メルディアが「あっ・・・」と言って何か思い出したのだ。
このブタ貴族も面子を気にする為に髪が中途半端に生えているものや全く毛がないのだ。
名前の由良は貴族の様に傲慢で太っており、女好きなであるが戦闘はまるでダメな事からブタ貴族と名付けられたという。
つまり貴族としての髪があるという事は貴族としての矜持であり、より女にモテる為に必須アイテムになるというのだ。
そして、カツラを被せて貰って周りには美女ばかりいる為にその地位を狙おうと戦闘体勢に入ったようだ。
「つまりこのカツラはブタ貴族を呼び寄せるアイテムって事か?」
「まぁ、スキンヘッドにしとる人もおるし、ハゲでもカッコいい人はカッコええやん?けど、努力せずに隠せるもんあったら使いたくなるのが金持ちやで?」
「ブタ貴族は魔物だろ!?アイツらのどこに金や地位があるんだよ!?俺らのが持ってる方だろうが!!?」
「てかさ、向かってきてるけどさ、いくら何でも遅すぎじゃね?」
エレーナが鞭を構えて待っていたが、一向にたどり着く気配がなく、それ処が息切れをして膝を付いてしまっているブタ貴族の姿がチラホラといた。
流石にこれを全部倒すのはめんどくさいと思い他の冒険者パーティーに声を掛けてブタ貴族の討伐を協力して貰った。
ブタ貴族のドロップアイテムは革、肉、瓶でそれぞれが冒険者ギルドでそこそこの値で取り引きをしてくれるそうだ。
良くみたら何もわかっていないビックチキンもつられて集まってきていた為に羽毛、鶏肉、嘴をドロップしていた。
流石に異世界でもカツラで引き寄せられる間抜けな魔物はそうはいないだろう。
他の冒険者達は魔法の鞄を持っていなかった為に回収用の袋にアイテムを詰め込むと満足そうにしていた。
すると、お礼をいって地上に戻るというのだ。
魔法の鞄が無いためにそれぞれがアイテムの回収用の袋がいっぱいになったら戻るのが普通らしいのだ。
ただ奥に行けば行くほどブタ貴族もビックチキンも良く太っている為にそちらの方が肉や革が言いと教えてくれた。
冒険者達と別れると草原を進むと階段を発見し下ると、同じような地形をしていたが、冒険者達が同じような事をしていた為にまた先程の様にリザーナがカツラを被せてくると近くだろうが遠くだろうがこちらに向かってきて息切れを起こすブタ貴族に何ともいえない哀れみを感じてしまった。




