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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第五章:足止め
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5-23二品目

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


豆乳って美味しいわね(カリナ談)


 てんぷらうどんと言うおよそ十五年ぶりの味に舌鼓をした。


 いや、本当に久しぶりなんでカツオ出汁とかじゃなかったけど美味しかった。

 ルラも大満足でそしてカリナさんたちや料理長のリュックスさんもその味に満足をしてくれたようだ。



「これのレシピは覚えましたが、本当にリルさんは凄いですね」


「いえいえ、見様見真似な所が多いのでオリジナルの味には程遠いですよ」


 そう言いながら乾いた笑いをする。

 だって仕方ないじゃん、全く同じ味にするなんて不可能だってば。

 それでも美味しければ皆さんも納得してくれるんだし良いだろう。



「でもあと二つも美味しいもの作らなければならないのよ? 何か手はあるの??」


 私がリュックスさんとそんな話をしているとカリナさんが私に聞いてくる。

 勿論すぐにエルハイミさんやコクさんが喜びそうな料理なんて思いつかない。



 ただ、エルハイミさんはどうやら和食を好んでいる感じがする。



「そうですね、脂っこい食べ物でしたから今度はもう少しさっぱりとした食べ物にでもしましょうか?」



 そう言いながら考えるけど、それこそ好みが分かれる所だ。

 

「うーん、ジマの国は食材が豊富だからいろいろと作れはすると思うんだけど何を作って行けばいいのやら…… ルラだったら和食なら何を食べたい?」


「え~、あたし今お腹いっぱいだから食べたいものなんか思いつかないよ~」


 言われてみればそうだ。

 てんぷらを食べ、そしてその派生でてんぷらうどんまで作って食べてしまったのだ。

 流石に今何か食べたいかと聞かれても思いつかない。


「確かにお腹がふくれましたからね、後はデザートくらいしか入りませんな」


 リュックスさんはそう言ってやや出っ張ったお腹を擦る。

 白いエプロンの上からお腹を撫でまわすのを見て私は思わずお餅か豆腐を思い出した。



「ん? さっぱりした食べ物で和食なら…… そうだ! お豆腐だ!」



 お豆腐は色々アレンジも出来る。

 ここジマの国は周りを山で囲まれているせいか水も豊富で良質だ。


「にがりは確か海の水が代用できるはず、これならお豆腐が作れる!!」


 私はそう言いながら早速乾物を見るとやはり保存食としてここにもあった。



「エルフ豆の大豆、これが有れば!」



 エルフの村にいた時には散々食べさせられて嫌になるほどだったエルフ豆。

 でもここにあるのは黄色くなって乾燥された保存食の大豆。


「リル、まさかここまで来てエルフ豆? しかも保存用に黄色くなって硬く成ったやつ? まさか村で散々食べさせられた炒り豆でも作るつもり?」


「いえいえ、これを加工して美味しい豆腐を作るんです!」


 豆腐と言う言葉にやっぱり首をかしげるカリナさんだった。



 * * * * *



「水でふやかすとこんなに大きくんるんだぁ~」



 ルラは私が早速準備した大豆を洗って水に浸しているのを見て驚いている。

 乾燥保存用のエルフ豆の大豆は少し丸っこい。

 それを砕く為にはまず水でもどして柔らかくしなければだ。


 ボールに入れた大豆は新鮮な水を吸って倍近くまで膨らんでいた。



「エルフ豆の煮ものでもするの?」


「いえ、これからこれをすりつぶすんですよ」



 私はカリナさんにそう言いながら戻しておいた大豆をつまんでみる。

 爪を立てて押してみるとちゃんとへこむのでもうそろそろ良いだろう。


 私はそれを石の円盤の真ん中に棒が付いているすりつぶし機に入れてゴリゴリと潰し始める。

 ミキサーなどないからこうやって地道にすりつぶさなければならない。


「お姉ちゃん、あたしも手伝おうか?」


「はぁはぁ、お、お願い。これ結構きついわ」


 よく薬剤師なんかもこれで薬草をすりつぶしているけどなんかいい方法はないもんだろうか?


 ルラに交代しながらに鍋を用意ておく。

 それと事前にリュックスさんにお願いして新鮮な海水も取って来てもらっている。



「大豆を細かくしてどうするんですか?」


「この後それを煮ます。そうすると白い牛乳みたいになるんですよ、豆乳って言ってとても栄養価の良いものが取れるんですよ」



 そう言いながらルラを見るとトーイさんと交代していた。

 そして何だかんだ言ってそこそこの量の大豆がすりつぶされたのだった。



「さてと、それじゃぁ煮ますよ~」


 私は言いながらすりつぶした大豆を煮始める。

 焦げ付かないように時折掻き回して沸騰するかしないかで煮られているそれはどんどんと乳白色いなってゆく。



「へぇ、本当にあのエルフ豆の大豆がこんなミルクのような白っぽくなるんだ」


「こりゃぁ不思議なもんだな」


「しかしこれってスープか何かか? 大豆だけじゃ味気ないぞ?」



「リル、これでおしまいでは無いのですね?」



 カリナさんやトーイさん、ザラスさんは鍋を覗き込んで驚いている。

 しかしネッドさんだけはこれで終わりではない事に気付いて私に聞く。



「勿論ですよ。さて良い頃合いなのでこれを絞ります」



 私はそう言いながら別の鍋に布を張ってそこへ煮込んでいたそれを流し込む。

 布に大豆のカス、通称おからがどんどんと溜まって行きこされた液体は見事に豆乳になった。


「こっちの搾りかすも後で使いますから、こっちのお椀にいれてとっておきます。さて、ここから更に煮込んで水分を飛ばし行きますね」


 そう言いながら豆乳を更に煮込む。

 時折濃度を確かめる為に小皿にすくって飲んでみる。



「リル、それ本当に美味しいの?」


「はい? ああ、豆乳としても勿論美味しいですよ。これにお砂糖とちょっとだけ塩を入れてっと……」



 カリナさんが気になるようで豆乳にお砂糖とほんのちょっとの塩を入れて掻き回したモノをコップで手渡す。

 カリナさんは怪訝そうな顔をするも私が勧めると渋々飲む。



「えっ? なにこれ、美味しい……」



 豆乳は出来たては癖が少なく、お砂糖なんか入れると甘くて美味しい。

 カリナさんはその素朴な味に驚き残りも飲み干してしまった。


「ぷっはぁー! なにこれ、本当にあのエルフ豆? しかも保存用の大豆なの? 驚きね、これは!」


 カリナさん大絶賛。

 となればもちろん他の人も物欲しそうにしている。


「はいはい、お豆腐の分が無くなっちゃいますから一人一杯までですよ~」




 私は苦笑しながら同じものを作って皆さんに配るのだった。

 


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― 新着の感想 ―
[一言] >まさか村で散々食べさせられた炒り豆でも作るつもり?  食事みたく山盛り食べるんじゃなくて、おやつの感覚でボリボリやるなら、何の味を付けなくても一生食えますぜ。  今の日本人だと大抵は節分…
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