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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第五章:足止め
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5-2ルラとクロの手合わせ

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


ふむ、久しぶりに体を動かせるわい(クロ談)


 クロさんは執事の黒い上着を脱ぎながらルラの前に行く。



「クロエ、下がるがいい。今度は私が相手だ」


「クロ様、私はまだやれるでいやがります!」



 呆然と立っていたクロエさんにクロさんはそう言う。

 しかしクロエさんはそれでもまだやれると言い張るもクロさんに睨まれ言葉を失う。


「見苦しいぞ。我ら黒龍の面に泥を塗るつもりか? ルラ殿は主様と同じお力を授かったのだ、それをエルフの小娘と油断したおのれの浅はかさを恥じよ!」


「くっ……」


 かなり厳しい一言を言われ沈黙するクロエさん。



 あ~、そう言う言い方で変にルラに恨み持たれても困るのだけどなぁ~。

 まだしばらくここジマの国に滞在しなけれならないってのにこれ以上厄介事は背負い込みたくは無い。



 私は思わずコクさんを見てやめさせようとする。


「あ、あのぉ~コクさん、そろそろ時間もよろしいようですしもうすぐ食事の時間になりますよぉ~。今日の所はここまででもう止めませんか?」


「食事前ならなおさらいい運動になります。お母様と同種の力、他の者が使った場合どれほどか見てみたいものです。さあ、クロよ遠慮なくやりなさい!」



 あ”あ”あ”あああああぁぁぁっっ!

 駄目だ、完全にやる気だ。



 とぼとぼと戻ってくるクロエさんと入れ替わり肩をコキコキ言わせてルラの前に立つクロさんを見る。



「さて、ルラ殿。今度は私がお相手させてもらいましょう。本気で行きます故お覚悟を!」


「うん、分かった。じゃぁ、あたしも本気で行くね! あたしは『最強』!!」



 二人ともそう言うと同時に体の周りに今までとは完全に違う雰囲気を醸し出す。

 これって漫画とかである闘気とか言うやつだろうか?

 そう言う事にうとい私でさえ感じるほどのモノだった。



「それでは両者、はじめ!!」



 コクさんのその一言で二人とも同時に動く。



「早い!」


「お、おい! 動きが初めから見えねぇっ!?」


「な、、何だよこれは!?」



 カリナさんにトーイさん、ザラスさんも二人の動きに驚きの声を上げる。

 ルラもコクさんもぶつかり合いはなれ、そしてまたぶつかり合う。


 正直私も何が起こっているかよくわからない程早いけど、時折中庭の地面がえぐれたり、近くの花壇が破壊されたり、置物が粉砕されたりする。



「ななななな、なんなんですかこれは!?」


「ふむ、組手はクロが押され始めましたか。スピードも徐々にルラが上がり始めましたね?」



 コクさんは冷静にその様子を見ている。

 そして時たま細かい石とかレンガがこっちへ飛んでくる。



「【防壁魔法】!」



 ネッドさんが飛んでくる危なっかしいモノを防御する為に魔法を使ってくれる。

 勿論見ている王様たちにも。


 と、クロさんとルラが一旦大きく間合いを取って離れて止まる。



 ざっ


 ざざっ!



「ふむ、スピード、パワー共に私を越えますか。流石ですな。しかしまだまだ経験が浅い」


「えへへへへ、クロさんクロエさんより強いねぇ~」


 離れて双方短い言葉を交わす。

 そしてクロさんはまるで躍るかのように両の手を動かし次の攻撃を準備する。



「行きますぞ! ドラゴンクロ―、ひょぉおおおおおぉぉぉぉっ!!!!」



 そう叫んでクロさんは宙へと飛び上がる。

 それはまるで演舞で踊るかのような美しさを秘めていたものの、その動きに何故か背筋が凍る。



「駄目っ! ルラ!!」



 クロさんのその技に私は反射的にそう叫ぶ。


「あたしは防御も『最強』!!」


 しかしルラはすぐに防御を最優先に「最強」のスキルを発動させる。



「ひょうぉおおおおぉぉぉ、しょぅううううぅぅぅっ!!!!」



 クロさんの手が左右からルラを襲う。

 その軌跡には黒く光る爪痕の残像が残りルラを襲う。



 ガキぃーんッ!!



「何っ!?」


「へへへへっ、今度はこっちの番だね! あたしは『最強』!!」



 背筋に冷や汗を流した私だったけど、ルラの『最強』スキルはクロさんのあの何でも切り裂きそうな爪を受け止め、反撃に出た。



 どんっ!



 ルラは地面を蹴り割りクロさんに飛び込むとアッパーパンチを喰らわす。

 しかしクロさんは寸での所でそれを防御するもその威力を消しきれずに宙に飛ばされる。



「何とっ!」


「行くよ、必殺ぱーんち!」



 宙に浮かび上がらせられ驚くクロさんの前にいたルラは一瞬で消えて宙に浮かぶクロさんの後ろに現れる。

 そしてクロさんの背中にその拳を叩き込むとクロさんはまるで流星の如く中庭の地面にたたきつけられる。



 どがぁーんっ!



「クロ様!?」


 思わず叫ぶクロエさん。

 しかし土煙を巻き上げたそこから矢のようにクロさんが飛び上がりルラに飛び込む。



「宙に浮いたままでは身動きできまい!」


「なんの! はっ!!」



 今度は逆にルラが宙に浮いたままだったのでクロさんの恰好の的になるはずだった。

 しかしクロさんのあのドラゴンクロ―がゆるりと落下してくるルラを捕らえる前にルラは両の手を開き宙に向かって一気に押し出す。



 ぼんっ!



 まるで暴風でも起こったかのような音がしたと同時に落下するルラの軌道が変わった。



「何とっ!?」



 軌道が変わったそこへクロさんのドラゴンクロ―が空しく空振りし、体をひねったルラの蹴りがクロさんのお腹に決まる。



 どごっ!



「ぐふっ!」



 どがぁあああぁぁんっ!


 すたっ!



 地面にまたまた叩き付けられたクロさんの近くにルラは軽やかに着地する。

 そして両の手を上げて身構える。



「そこまでです。ルラの勝ちです!」



 しかしコクさんがここで大きな声を出してこの手合わせを終了させる。

 

 ルラはそれを聞き構えていた両の手を降ろす。

 そしてすたすたとまだ土埃舞うクロさんの元へ行く。



「へへへっ、勝っちゃった~」


「いやはや、私も年老いましたかな? お見事です」



 ルラはそう言いながら手を差し伸べる。

 それをクロさんは握り立ち上がる。


 そして体に着いた埃を払いながらルラを見て言う。


「敵わないと分かっておりましたが、ここまでとは。これでは竜の姿になっても負けていましたな」


「え~? でも流石にクロさん強かったよ、あたし本気でやったもん」


 こちらに戻りながらそう話す二人。

 しかしクロさんは驚きの表情をする。


「主様と同種のお力を持ちながら本気ですと? 私はてっきり手加減されていたと思いましたがな」


「うーん、毎回そうだけど結構本気だったよ、勿論クロエさんの時も!」


 そう言いながらこちらに戻って来てクロエさんにもそう言う。

 クロエさんはきっとなってルラを見て言う。

 

「こ、今回はたまたま調子が悪かっただけでいやがります! 後でまた手合わせするでいやがります!!」


「うん、いいよ~」


 ついっと向こうを向くクロエさんにルラはにこにこ顔で言う。

 クロエさん、意外と負けず嫌い?



「ふむ、しかしこれでわかりました。あなたたちの力はお母様のそれと同種でいながらまったく別の作用をしていますね。お母様は時たま人が変わったかのようになる。しかしあなたたちはあの力を使っても自我を保ったままでいられるようですね」



 コクさんはそう言ってくるりと踵を返し城の中に戻ってゆく。



「楽しい見ものでした。さて、そろそろ食事の時間ですね? 今日は何を食べさせてもらえるのでしょうか?」



 そう言いながらどことなく楽しそうにしている。

 これにはカーソルテ王たちも慌てて席を立ちコクさんの後を追う。




 私とルラは顔を見合わせ、コクさんたちの後を追うのだった。

 

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