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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第五章:足止め
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5-1ルラとクロエの手合わせ

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


エルフ如きがぁでいやがります!!(クロエ談)


 私たちはジーグの民の問題が解決するまでここジマの国に足止めされる事となった。



 実際にそのジーグの民とかをどうするのか全く分からないけど、私の影に潜んでいたほどのアサシンスキルを持っているので正直相当な手練れだという事は分かる。

 しかも任務失敗イコール即自決とか言うとんでもない考えを持っている。

 一体そのジーグの民ってのがどれだけいるか分からないけどそんな連中をどうやって抑える事やら……



「ふむ、来たか」


 午後のお茶会をコクさんに誘われテラスでご一緒させていただいているけどコクさんはふいにそう言って柱の方に目を向ける。

 

 するとあの銀色の液体がにじみ出て来てベルトバッツさんになる。

 流石に慣れたのでもう驚きはしないけどね。



「黒龍様、ご要望の者たちを連れてまいりましたでござる」



 ベルトバッツさんはそう言うと柱の陰から三人の同じような格好をしたスキンヘッドの人たちが現れた。



「うむ、ご苦労。リル、あなたたちには今後この者たちをつけます。この者たちは万が一ジーグの民があなたたちを襲い来る時はその命を持って守るよう言ってあります。私は今後ベルトバッツと共にジーグの民たちを見つけ出し話をしに行くつもりです」



 コクさんはそう言って私たちを見る。

 ああ、勿論私たちってのはルラやカリナさんたちを含んでの事。


 結局手練れのアサシンを私たちだけで対処するのは難しいという事だろう。



「え~? でもあたしの『最強』スキルが有ればジーグの民だってやっつけられるよ? それに『秘密結社ジュメル』って悪い奴等もあたしがやっつける!」


 ぐっとこぶしを握って目を輝かせるルラ。

 この子もしかして生前のヒーローものが大好きだったとか?



「ルラ、あなたがお母様同様に『あのお方』のお力を授かっていると言うのは理解しますし、うらやましすぎますがあなた以外の者はどうでしょう?」


 コクさんにそう言われてルラは始めて私やカリナさんたちを見る。

 そして自分の拳を見てから言う。



「ううぅ、確かに。あたしだけならだれにも負けないけどみんなを守りながらだと……」



 どうやらあの迷宮の地下で私を守りながら戦ったのを思い出しているみたいだ。

 ルラの「最強」スキルの欠点、同時になんでも最強に出来ないという事を。



 ぴくっ



 しかしここで厄介な人が厄介な反応を示す。 


「黒龍様のお心遣いに何が不満でいやがりますか? 『最強』と言えどそれは所詮人の範疇での『最強』でいやがります」


「そんな事無いよ! あたし地竜って怪獣やっつけたもん!」



 ざわっ!



「地竜を倒したというでいやがりますか? 竜族では下の下ではいやがりますが……」


 クロエさんは何故かそれを聞くとうっすらと笑い始める。

 そしてコクさんに向かって頭を下げながら言う。



「黒龍様、黒龍様のお心遣いを無下にするような輩に少しお灸を据えたいと思います。どうかこの者と手合わせをさせていただきたいと思います」


「ふむ、それは面白い。お母様同様に『あのお方』のお力を授かった身、どれほどか見てみたいものです」



 いやいやいいや! 

 なにコクさんまでもそんな話になるの?



「ふっふっふっふっ、黒龍様のお許しが出たでいやがります。ルラとか言ったでいやがりますね、中庭に出るでいやがります!!」


 クロエさんは中指立てながらルラにそれを突き付ける。

 しばしきょとんとして目をぱちくりさせていたルラだったけど、どうやら理解したみたいで嬉しそうにこぶしを握って言う。



「うん! あたしがどれだけ強いか見せてあげる!!」



 こうして午後の紅茶がエレガントとかけ離れる展開へとなるのだった。



 * * *



「なんで王様たちまで見に来るの……」


「いえ、中庭を使わせろと言ったら面白そうだからと言って見学に来たようですな」



 クロさんはコクさんのティーカップにお茶を注いでそう言う。

 今この場にはカーソルテ王他お后様や王子様たちにお姫様、それと摂政のヒュードさん、賢者のリュードさん、軍の将軍のデュ―ドまで来ている。



「ほんと、あんたたちと一緒に居ると厄介事が向こうからやって来るわね……」


「それは言わないでください、カリナさん……」


 私はお茶を飲みながらそっとため息を吐く。

 ほんと、何故こうなった……



「それでは始めるでいやがります、エルフの小娘がどれ程の物か見せてもらうでいやがります!」


「うん、じゃあいくよぉ~、あたしは『最強』!!」



 双方そう言って動き出す。


 クロエさんはまずは牽制で拳をルラに叩き込むもルラはそれを手のひらで受け止める。

 しかしそれを受け止めらる時にはクロエさんは既に次の動きを取っていて短いスカートを翻しすらっとした長い足を惜しみも無く上げてルラの顔を狙い蹴り上げる。



「あ、黒……」



 まさか短いスカートのまま蹴りをするとは思わなかったけど、中身がもろに見えて黒い下着があらわになる。

 レースの入った少しアダルトなその下着を惜しみなく皆さんの前でご開帳するとは!!


 ちらっと横を見ると王様はじめ男性陣の皆さんがほっこり顔になっているのが何故か許せない……


 ルラにはホットパンツ穿かせておいてよかった。

 私と同じくスカートだったら今頃見えちゃうもんね。



「ふむ、クロエ相手にあそこまでやるとは。これは面白い事になってきました黒龍様」


「当然でしょう。お母様と同質の力を授かった身、この位は当たり前でしょう」


 クロさんのその言葉にコクさんはさも当然のように言う。

 そしてルラとクロエさんの手合わせはどんどんと白熱してゆく。



「このっ、でいやがります!!」


「よっと! まだまだぁ!」



 もう何て言ったらいいのかな?

 昔見た中国拳法の映画じゃないけど双方攻撃をかわし、拳を打ち込みと攻防が激しい。

 それはどんどんとスピードを上げて行きたまにその動きが見えない時がある。



「す、すごいわねルラって!」


「ああ、こんなのは俺たちでもついていけないぞ……」


「動きが見えない時があるとはな、俺自身無くすぞ……」



 カリナさんやトーイさん、ザラスさんは二人のその手合わせに思わずそう言ってしまう。


 確かに此処までやり合うルラは初めて見た。

 大体がチートスキルで相手以上の攻撃をするから一方的に叩きのめすのが多かったと言うのに。



「くっ! こうなったらでいやがります! ドラゴン百裂掌!!」



 クロエさんはそう言いながら一旦間合いを取りあの必殺技を繰り出す。


「これクロエ! その技は危険すぎる!!」


 クロさんがクロエさんにそう叫ぶももう間に合わない。



 かっ!


 どがががががががががぁッ!!



 黒い流星のような残像が線となってルラを襲う。

 

 ちょっと待って、あれってミスリルゴーレムさえ簡単に葬った技なんじゃ!?



「ルラっ!!」



 私は思わず席を立ち叫んでしまった。


「むっ!」


 しかしコクさんが唸ったその瞬間クロエさんの放つ流星のような沢山の線の軌跡が全て受け止められる。



 ぱしぱしぱしぱしぱしっ!



「ほいほいほいっと!」


 ルラは何とその一つ一つを受け止めていたのだった。



「なっ、でいやがります!?」



「よっと!」


 それに驚くクロエさん。

 しかし次の瞬間ルラは一瞬でその場から姿を消し、クロエさんの後ろを取る。

 そしてクロエさんに拳を入れようとするその瞬間コクさんが大声を上げる。



「そこまで! ルラの勝ちです!!」



 ぴたっ!



 ルラの拳がクロエさんの背中に触れる寸前で止まった。

 クロエさんはルラに後ろを取られた事にも気付かずにいた様だ。

 コクさんが叫ぶその瞬間消えたルラを探していたほどだった。



「バ、バカなでいやがります…… この私が、エルフの小娘如きに負けるだなんてでいやがります……」


 クロエさんの後ろで拳を止めたルラはにこやかに言う。


「やっぱ強いよねクロエさんって。でもあたしの方が強かったでしょ?」


 愕然とするクロエさんにルラはにこやかにしているとクロさんが上着を脱ぎ始めそちらに向かう。



「黒龍様、私も一つこの娘と手合わせをしたいと存じます」



 いやいやいや!

 何その体育系!?

 クロさんもなの?

 クロさんも手合わせするの!?


 私は慌ててコクさんを見るとニヤリと笑っている。



 あ”あ”あ”あああぁっ!

 これ駄目なやつだ!!




 私がそう思っているとコクさんはゆっくりと立ち上がり言うのだった。



「許す、やっておしまい!」


 

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[一言] >「許す、やっておしまい!」 鼻とデブ『アラホラサッサー!!』  反応せざるをえないっっっ!
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