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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第四章:帰還への旅
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4-25カリナの交渉

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


もうかりまっかぁ~?(カリナ談)


 冒険者ギルドのロビンソッドさんはカリナさんに聞かれてため息をつきながら話始める。



「単刀直入に言う。何もわからなかった」


「何も?」


 ロビンソッドさんのその答えにカリナさんは眉を寄せる。

 しかしロビンソッドさんはそれを無視して話を続ける。



「まずいろいろと確認をしたがこの国の人間ではない。そして持ち物も最低限の物しか持っていなく不思議な事に火薬の無くなった爆弾らしきものを持っていた。そして身分などが分かるようなものは何一つなかった」


「火薬の無い爆弾って何それ?」



 あー。


 それ私のせいです。

 チートスキル「消し去る」を使った結果、毒と爆発物は消し去ったからガワだけ残ったのね……


 火薬の入っていない爆弾なんて不思議な物持っていたら余計に混乱しちゃうよね?



「しかし体つきなどで確実にアサシンの出だと言う事は分かる。自害する為の奥歯の詰め物が無くなっていたのは気になるがな」



 はい、それも私のせいです。



 何となくロビンソッドさんから視線を外す私。

 それに気付いたのルラだけだったけど、流石に何も言わない。



「で、結局はアサシンって事が分かっただけって事?」


「すまんがそうなるな……」


 ロビンソッドさんはそう言って両の掌を上げる。

 しかしカリナさんはニヤリと笑ってから言う。



「じゃあとっておきの話をしてあげるからここまでの報酬ちょうだい」


「なに?」



 カリナさんのその言葉にロビンソッドさんは目を剥く。

 そして話の先をせかす。


「駄目ね、この情報はこの国どころかもっと大ごとになるかもしれないからね」

 

 そう言って手を出すカリナさんにロビンソッドさんは苦虫をかみつぶしたような顔をして人を呼び、報酬の皮袋を持ってこさせた。



「これで良いか?」


「うん、しっかりと重くなってるわね? 良い心がけだわ」


 カリナさんは嬉しそうにそれを腰のポーチにしまう。

 それを待ってからロビンソッドさんは話しをするように促す。



「まあ落ち着きなさいな。この話はすぐにでも王城に伝えた方が良いわ。あの黒づくめたちは王城の黒龍様を狙っているかもしれないのよ」



「黒龍様だと!?」



 カリナさんのその言葉にロビンソッドさんは大いに驚く。

 それを十分に確認してからカリナさんは話しを続ける。



「リルたちを襲ったそいつらは黒龍様と私たちが一緒に居た事を知っていた。それは黒龍様が王城に来ることを予測していたからでしょうね。そしてリルたちを狙ったのは黒龍様に関係していると判断したからでしょう。場合によってはリルたちが使えるからと」



「あっ!」



 カリナさんがそう言うのを聞いてやっと私も気付く。

 あの黒づくめたちは私たちとコクさんが一緒に居たのを知っている。

 そして私たちでさえ何かの役に立つかもしれないと手駒に加えようとした。



 つまり狙いはコクさん。



「分かった、すぐに王城に連絡をする!」


 そこまで聞いたロビンソッドさんはすぐにでも立ち上がり部屋を出て行く。

 それを見たカリナさんは肩をすくめそして私たちに言う。



「さてと、とりあえず最低限の仕事はしたからユエバの町に帰りましょう。後は黒龍様たちに任せて」


「あの、大丈夫なんですかコクさんたち?」


 心配になってカリナさんに聞くけどカリナさんは指を私に向けて言う。



「リル、あなたが転生者だったとしても今のエルフとしての人生を前世のあなたに為に使う気? 一応同族として言っておくけど例え前世が誰であっても今のあなたは私たちの同胞、エルフなのよ? この先何千年も生き永らえるかもしれない若木を私は危ない事に引き込むつもりはないわ」



 そう言われ私は驚く。


 確かにエルフどうしは仲間意識が強い。

 それは長い時間を共に歩めるのは基本同族しかいないからだ。

  

 そしてエルフ自体の数もなかなか増えない。


 だからエルフたちは私たち若木の事を村全体で面倒見てくれる。

 次なる大木になる事を祈って。



「分かった? だから私みたいな不良エルフにならず大人しく村に帰る事を考えなさい。確かに外の世界は面白いわ。千年以上世界をふらついた私でもまだまだ驚かされるような事はあるし、そのワクワク感はたまらない。でもそれはせめて大人になるまで我慢なさい。あなたたちは私たちにしてみればまだまだ幼過ぎるのよ……」


 そう言ってカリナさんは私とルラの頭に手を乗せる。

 それはまるで小さな子に言い聞かせるかのように。


「……」


「うん、分かった」


 私は何も言えなかったけどルラはすぐにそう答える。

 それを聞いたカリナさんはにっこりと笑って言う。


「黒龍様の事なら大丈夫だって。何せあのエルハイミさんの僕なのよ? 何か有ればきっとエルハイミさんも来てくれるわ」


「エルハイミさんですか…… むしろそっちの方が心配です。あの人が女神様だったなんて……」


 私がそう言うとカリナさんはビキッっと一瞬固まってからぎこちない笑をして頬に一筋の汗をかく。


「ま、まあ大丈夫でしょ。今のエルハイミさんならきっと、多分……」


 なんか言いくるめられている様だけど、カリナさんの言う事も一理有るか。

 仕方なく私も頷くのだった。



 * * * * *



 せっかくジマの国まで来たのだからユエバの町に戻る前にここの美味しい料理でも食べて行こうと言うザラスさんの提案で私たちはご飯の食べられる店に向かっていた。



「ユエバの町にも調査の結果を伝えたし報酬もちゃんともらえるから今回は私たちのおごりよ!」



 カリナさんはそう言ってニコニコしている。


 ジマの国の冒険者ギルドで風のメッセンジャーを使わせてもらい、ユエバの町の冒険者ギルドに連絡をした。

 向こうからの返事も帰って来てカーネルさんからクエスト達成として報酬をちゃんともらう約束をしたカリナさんは上機嫌だ。



「ジマの国かぁ、たしか海の幸、山の幸と新鮮なものが多い国だったよな?」


「そうですね、この国は素材の味を大切にする料理が多いと聞きます。今の時期はタケノコが美味しいらしいですね?」


「タケノコって何だよ?」



 トーイさんがこの国の食の事情について話始めるとネッドさんが季節柄おいしそうな食材の話をする。

 それを聞いたザラスさんは聞き慣れない食材について聞き返す。



「タケノコはバンブー、竹の芽みたいなものですね。この植物は面白く根を地中に沢山張りながら数を増やしていくそうです。その若い芽を取って食べるらしいですね」



 この世界にもタケノコが有るんだ。

 土佐煮とかにしたら美味しそう。




 私たちはこの国の美味しそうな食材をネッドさんに聞きながら楽しみに酒場に行くのだった。

 


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