4-24黒い影
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
ヤバい、カリナさんにばれたぁ!!(リル談)
宿屋のベッドで寝転んで上を見上げたら黒ずくめの不審人物がいました。
えーとぉ……
「お姉ちゃん!」
ちゃきっ!
「動くな。大人しくしていれば命までは取らない」
呆然とする私と違いルラは起き上がり私に駆けつけようとするも、もう一人の黒ずくめにあの黒塗りの短剣を突き付けられていて身動きが取れない。
私にもいつの間にか喉元にあの黒塗りの短剣が付き付けられていて起き上がるよう指示される。
「……誰?」
「名乗るほどの者でもない。大人しくついて来てもらおう」
そう言われ起き上がり私はその短剣を睨む。
そしてルラに目配りをする。
「大人しくこちらに来ても……」
「『消し去る』!!」
短剣を更に私につき付けようとするそれをチートスキル、「消し去る」を使って短剣を消し去る。
「なにっ!?」
黒ずくめはいきなり手に持つ短剣が消えさり驚くがその一瞬を見逃さずルラは「最強」のチートスキルを使う。
「あたしは『最強』!!」
ルラはすぐに「最強」のチートスキルを発動させ仲間の異常に気付いたもう一人の黒ずくめを襲う。
その動きは黒ずくめの予想をはるかに超える速さで一瞬で目の前から消えて相手の後ろに回り込む。
「なんだとっ!? ぐッ!!」
ばきっ!
ルラは黒ずくめを殴り飛ばし気絶させる。
そして私もその隙に黒ずくめの目の前の床の一部を消し去り大きく下がる。
「くっ! ならばせめてお前だけでも、うおっ!?」
黒ずくめは私の腕を掴もうと手を伸ばすも踏み出した足が見事に床に空いた穴に入り込み体勢を崩す。
それをルラがすぐに殴り飛ばし同じく気絶させる。
ばきっ!
どんっ!
「ふう、まさか私たちを襲ってくるなんてね。とりあえず縛り上げよう」
「お姉ちゃん大丈夫?」
心配するルラに大丈夫だと答えながらポーチから縄を取り出しこの二人をぐるぐる巻きにして縛り付ける。
アサシンとか言う危ない存在らしいから念入りに。
そして黒ずくめのほっかむりを奪い取り見ると普通の人間だった。
「うーん、昔見たテレビで奥歯に仕込んだ毒とかで自害するってのが有ったから、毒とか火薬とかの部類を『消し去る』」
私は昔見た時代劇の捕まった忍者が自害するのを思い出し、チートスキルで毒や火薬を消し去った。
そして案の定この二人の身体には毒や火薬らしきものが有り、それが消えさった感じが伝わって来た。
「ふう、とりあえずこれで良しと。後はカリナさんたちが戻ってきたらこいつらを引き渡して調べてもらえばいいわね?」
私がそう思ってパンパンと手の埃を払っているとルラが警告の声を張り上げる。
「お姉ちゃん! 危ない!! あたしは『最強』!!」
ばっ!
ガキーンっ!
「ふむ、これは一体どう言う事だ? 貴様ら一体何者だ? やはり黒龍と一緒に居た所を見るにエルフの姿をしたドラゴンニュートか?」
ルラは私を抱きかかえ大きくその場を飛びさがり防御した腕で相手の黒い短剣を弾き飛ばした。
「ルラ! 腕大丈夫!?」
「うん、『最強』を使っていなかったらヤバかったかも。あの短剣毒が塗ってあるみたい、ほら」
ルラは弾いた腕を私に見せると、腕の表面にぬめぬめしたゼリー状の液体が付着していた。
私は慌ててその毒と思われるものを「消し去る」けどその間にそいつは私たちが捕まえた二人の喉元を切り裂き窓から逃げ去る。
「あっ!?」
その動きはとても俊敏で無駄一つ無かった。
「逃げられた!」
「ルラ、追わなくていいから!」
窓に足をかけ追うつもりだったルラを止める。
あんな危なさそうなのをルラ一人で追わせたら流石に危ない。
それにまだあいつの仲間がいたら流石に危険だ。
「あれがアサシン…… カリナさんの言う通り厄介な連中ね……」
私は窓の外を見ながらそうつぶやくのだった。
* * * * *
「まさか、リルたちが襲われるだなんてね……」
翌日カリナさんたちが戻って来て昨日の事を話す。
殺された黒ずくめたちの遺体は昨日のうちに宿屋経由で冒険者ギルドに連絡して引き上げてもらった。
持ち物とかも今は調べられているはずだけど、捕まったらすぐに殺されるだなんて本当に昔見たテレビの忍者みたいだ。
「しかしカリナ、なんでリルたちが襲われるんだ?」
トールさんは私たちを見て首をかしげる。
私は昨日あの逃げ去った黒ずくめが言った言葉を思い出す。
「そう言えば『やはり黒龍と一緒に居た所を見るにエルフの姿をしたドラゴンニュートか?』とか言ってました。もしかしてコクさんたちと何か関係が有るのではないでしょうか?」
「黒龍様とねぇ……」
カリナさんはそう言ってもの凄く嫌そうな顔をする。
そしてしばし床を見つめて何かを思い出す。
「その昔、『女神の杖』ってとんでもないアイテムでこのジマの国を乗っ取っていた亡者の王リッチが黒龍様を自分の配下にしようとしていたって話があったの。勿論その企みはエルハイミさんたちによって阻止されてリッチもエルハイミさんによって滅せられたそうよ…… まさかまた黒龍様に害を及ぼそうとかしている勢力でもいるのかしら……」
カリナさんがそう言うとトーイさんは大いに驚く。
「まさか、そんな大それた事しようとしている奴がいるってのか!? 相手はあの黒龍様だぞ?」
「そうですよ、今は女神様の僕としてこの世界の守護者たるお方ですよ?」
「有り得んだろうに、あのクロってのとクロエってのだけでも東の港の『鋼鉄の鎧騎士』をあっさりと殲滅したんだろ? 港に上がって来た『鋼鉄の鎧騎士』ってのは十体もいたって話じゃないか? 十体もいたら一国の騎士団並みだぞ?」
ネッドさんもザラスさんもそう言ってカリナさんの考えが有り得ないという風に言う。
しかしカリナさんはそれでも何か思い当たる節でもあるかのように考えこんでいる。
「とにかく、私たちも冒険者ギルドに行ってみましょう。リル、ルラあなたたちもついてきなさい」
カリナさんにそう言われ私たちは一緒に冒険者ギルドに向かうのだった。
* * *
冒険者ギルドに着いて私たちは早速ロビンソッドさんに面会を希望する。
受付嬢が私たちを応接間に通してしばし、ロビンソッドさんはやって来た。
「待たせたな。それでどうだ?」
「どうだもこうだも無いでしょう? リルとルラが襲われたってのどう言う事よ!?」
ロビンソッドさんの質問にカリナさんは怒り爆発で机を叩きながらロビンソッドさんに抗議する。
「それに関しては完全に想定外だ。運良くそちらのエルフの嬢ちゃんたちが賊を退けてくれたのには驚いたがな」
「リルたちが? 宿の連中が助けに入ったんじゃないの?」
「いや、連絡をもらった時にはそこの嬢ちゃんたちだけで退治したと聞いたが……」
それを聞いてカリナさんは私たちを見る。
あ~。
そう言えば襲われたとは言ったけど私たちが撃退したってのは言わなかったっけ……
「……リル、ミスリルゴーレムの時もそうだけどあなたたちって一体何? シェルやエルハイミさんが絡んでるって事はもしかして転生者?」
ぎぎくぅっ!
カリナさんはいきなり核心をついて来た。
シェルさんやエルハイミさんに魂を見られても何とか誤魔化してはきたのだけど……
「うーんとね、てんせいしゃってよくわからないけど、昔の記憶があるよ~」
ルラは私が言い淀んでいるとそう言ってしまう。
「ル、ルラ……」
「やっぱりね、まあシェルやエルハイミさん絡みだから何か有るとは思ったけど、誰かの転生者なのね? それはまあいいわ。そうするとあなたたちってもしかして精霊魔法の使い手なの?」
私たちを見る目が鋭くなっているカリナさん。
めちゃくちゃ警戒されてる!?
「え、えっとぉ…… 精霊魔法はそれ程では無いのですけど……」
私がそう言い淀むとカリナさんは呆れた顔で言い放つ。
「まあいいわよ、誰の転生者でも謙遜して精霊魔法のレベルがそれ程とか言わなくても。道理で危ない事に自分から首突っ込みたがる訳だ。レミンさんの娘ってだけじゃない訳ね?」
「え、えっとぉ、すみません……」
どう理解したかは分からないけどカリナさんはそう言いながら別の事を聞く。
「だとすれば、そっちはまあいいわ。問題はその黒ずくめの連中の調査の事ね。こっちは街の中にはもう黒づくめの姿が見当たらないって事くらいしか聞き込めなかったわ。『鋼鉄の鎧騎士』が騒ぎを起こすちょっと前からね。で、リルたちを襲った奴の方は?」
カリナさんはそう言ってロビンソッドさんを見るのだった。
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