4-19迷宮の底
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
エルハイミさん危険っ!
私はノーマルなんだあからぁッ!!(リル談)
ベルトバッツさんと言うローグの民とか言う人、ひと…… なのかな?
とにかくベルトバッツさんの話だとエルハイミさんと黒龍様が何やら喧嘩していて地下の大迷宮がただいま絶賛大混乱中だとか。
それを聞いたクロエさんは慌てて私たちをエルハイミさんたちがいるという最下層に連れて行く。
「では拙者はローグの者たちを避難させます故、これにて失礼するでござる」
「分かったでいやがります。私たちは急ぎ最下層へ行くでいやがります!!」
ベルトバッツさんたちと別れクロエさんは石像に行き転移魔法を発動させる。
私たちはそうして何度も下の階へと転移をするのだった。
そして最下層にある大きな空間の先に有る屋敷で見たものは……
半壊する建物、えぐれる地面、焦げ付くいろいろ。
あちらこちらで何かがぶつかり合う音がしている。
「主様、黒龍様、クロ様!! エルフの姉妹を連れてきたでいやがります!!」
クロエさんはそう大声を張り上げる。
しかし返事は無く、時たまエルハイミさんらしい声が聞こえてくる。
「ですから一体どうしたと言うのですか、お母様!」
「行くのですの!! もう我慢できませんわぁっ!!」
どごーん!
ばごーんっ!!
爆発した方を見ると確かにあれはエルハイミさんだ。
そしてもう一人、エルハイミさんのお姉さんみたいなのがいる。
エルハイミさんと違って真っ黒な髪の毛に頭に角があって長いスカートからは尻尾が出ているけど……
「って!? エルハイミさんが二人もいる!? しかも片方はお姉さんで角と尻尾があるぅ!?」
驚きのあまり思わず叫んでしまう私。
しかしそれが悪かった。
迷宮の地下深く、かなり広い空間でそこらじゅうを破壊しまくっていた二人が私たちの存在に気付く。
「あら? あれは確かリルですの?」
「ふむ、やっと来ましたか。クロエご苦労様です」
あれだけ大騒ぎして喧嘩していたのにぴたりと喧嘩をやめ、二人そろってこちらにやって来る。
と、その後ろに白髪交じりのオールバックの髭のおじさまもやって来る。
「クロエ、よくお連れしてきてくれた。おかげで主様と黒龍様が一時的にでも争いを止めて下さった。あのまま放置していてはこの迷宮が崩れ去る所であった」
「クロ様、私が主様の転移に巻き込まれ地上に飛ばされてからずっと争っていたのでいやがりますか?」
ぼろぼろになっていた黒の執事服の埃を払いながらそのおじさまは襟を直す。
クロエさんはそんなおじさまに軽く頭を下げてから聞く。
と、ここでハイミさんが予想外の動きをする。
「チャンスですわ! ちょっと行ってきますですわ!!」
ぶんっ!
エルハイミさんはこちらに来ると見せかけ目の前に異空間を開きその中にさっと入って行ってしまいすぐにその扉を閉めて消えてしまった。
「お母様っ! しまった、油断しました!!」
きっ! とそちらを睨んで手を伸ばしたもう一人のお姉さんのエルハイミさんはそう言って掲げた手を光らせて魔法陣を宙に浮かび上がらせるも、間に合わなかったらしく何の効果も無くそれが消えてしまう。
そして掲げた拳をぐっと握り悔しそうに震える。
「油断しました。まさかこのタイミングでお母様が逃げ出すとは!! ああっ、一体何が起こっていると言うのですか!?」
「黒龍様、それに付きましてこのエルフが何か知っているようでいやがります」
クロエさんは悔しがるお姉さんエルハイミさんにそう言って私を突き出す。
私は突き出されて不機嫌そうな彼女を見るけど、まさしくエルハイミさんがもっと大人になったような凄い美人で、黒髪も艶やかで白い肌は透き通っているかのよう、胸だって大きくてスタイルも抜群に良い。
「あなたはお母様があれだけ騒いでいる理由を知っているのですね?」
「え、あ、えーと……」
彼女は私に向き直り大きく息を吸ってから話始める。
「私は黒龍のコクと言います。女神である愛する我お母様に一体何が有ったと言うのですか? 教えてもらえますね?」
物言いはとても丁重で静かなのだけど、有無を言わさない迫力がある。
私は額に脂汗をびっしりと書きながら助けを求めるかのようにクロエさんを見る。
「エルフの村で何が有ったか詳しく黒龍様に説明するでいやがります」
「エ、エルフの村で……」
皆さんが私に注目する中、私はエルフの村で何が有ったかを話始めるのであった。
* * * * *
「つまり、シェルと一緒に居たもう一人のお母様にジルの村で彼女が覚醒したと言う事を告げた途端、シェルと一緒のお母さまが騒ぎ始めジルの村に転移しようとしたというわけですね?」
「はい、それでシェルさんも一緒に引っ張られていくのを待ってもらうために私とルラがシェルさんを引っ張ったんですが一緒にあの暗い空間に入り込み途中で手を離してしまいイージム大陸に飛ばされました」
私は今までの経緯を事細やかに話すとコクさんは一つ一つ確認するかのように聞いて来た。
「このお茶美味しいぃ~、お菓子も~」
「ルラ、あんたよくお茶なんか飲めるわね……」
ちゃんと話を聞きたいと言う事でコクさんがクロさんと言う執事のおじさまとクロエさんにお茶を用意するように命じると、あれだけぼおぼろであったここを一瞬で修復してお茶のテーブルと椅子を出し、お茶会が出来る準備をしてしまった。
コクさんは私の話を聞いてからお茶を一口飲んで、大きくため息をつく。
「これで大体の理由がわかりました。彼女、赤お母様が覚醒されたのですね…… 確か転生して二十年ほど経っていたので今回は覚醒しないで済むと思っていたのに…… これは誤算でした。しかし、あなたの話を聞く限りその覚醒はすでに半年以上前の事ですね? シェルと一緒のお母様は既にジルの村に到着していて覚醒した赤お母様と会っているはず。なのにこちらにいたお母様まで慌ててあちらに行こうとするなど一体何が……」
「あのぉ~、変なこと聞きますがなんでエルハイミさんが『お母様』なんですか…… まさかコクさんってエルハイミさんの娘さんなんですか?」
どうしても気になってしまい私はそう聞くとコクさんはこちらを見て嬉しそうに言う。
「お母様は私の愛する尊きお方! お母様の魔力をいただいたおかげで愛するお母様と同じ容姿でこの体が再生できたのです。もうこれは運命。お母様は私の全てなのです!」
うっとりとそして自分で自分の腕を抱き、自分の顔を撫でるコクさん。
どうも理解できず他の人を見ると執事のクロさんが説明をしてくれる。
「黒龍様は以前そのお身体を亡者の王リッチに侵食され、仕方なく再生の秘術で新たなお身体になるはずでしたが、主様の膨大な魔力供給と魂の隷属のせいで今のお姿になられたのです。主様をお母上と敬愛するのはそれが故です」
クロさんがそう説明すると隣にいたクロエさんがこぶしを握ってわなわなと悔しそうにする。
「黒龍様が主様にいいようにされると言うのが悔しいでいやがります」
「クロエ、それは違います。いいようにされるのではなくされたいのです。ああぁ、お母様に赤お母様同様に愛されたいです」
えーと、エルハイミさんって同性愛の方?
シェルさんだけでなくコクさんも手籠めにしているの??
「エ、エルハイミさんってもしかして女性が好きなの?」
「あー、そう言えばその昔ガレント王国のティアナ姫って人と伴侶になっていたって聞いたわね。確かその姫様って何度も転生していてその都度エルハイミさんと添い遂げているって話だったわね?」
カリナさんが思い出したかのようにそう言うのを聞きながら私はやはり関わってはいけな人たちに関わってしまったのではないかと思い始めているのだった。
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