4-16ミスリルゴーレム
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
何あのメイドさん!?(リル談)
「リル、ルラ逃げなさい!! 私たちが足止めする!!」
カリナさんは大声でそう言って私たちを先に逃がそうとする。
しかし私やルラは既にチートスキルを使う準備をしている。
「ルラ、あれの脚を消し去るわ、足止めする!」
「分かった、じゃあ倒れたら仕掛けるね!」
既にカリナさんやトーイさんにザラスさんはミスリルゴーレムに対して牽制の攻撃を仕掛けている。
しかしそんな攻撃は全くと言って良いほど効いていない。
ミスリルゴーレムはその太い腕を振って木々をなぎ倒しながらトーイさんやザラスさんを攻撃している。
しかし二人ともネッドさんの防御魔法を受けながらうまく距離を取ってその攻撃を避けている。
と、二人が距離を取った。
「チャンス! 『消し去る』!!」
私は腕を伸ばしイメージしていた通りミスリルゴーレムの右足の足首から下を消し去る。
すると踏み出した足が無くなってミスリルゴーレムは見事にその場に倒れる。
どバッターんっ!!
「何っ!? ゴーレムが転んだ!?」
「チャンスだカリナ、逃げるぞ!!」
「木の根にでも躓いたか? とにかく逃げろ!!」
前衛で牽制をしていた三人はすぐに踵を返してこちらに来る。
それと同時にルラが飛び出しミスリルゴーレムに飛び掛かる。
「ちょ、ちょっとルラ!! 何やってるの、逃げるわよ!!」
「うぉおおおおぉぉぉっ! あたしは『最強』!!」
そう叫びながら起き上がるミスリルゴーレムに拳を叩き込もうとするルラ。
が、次の瞬間に聞こえる声に慌ててその拳を引いてその場から飛び退く。
「ドラゴン百裂掌!!」
どががががががががっがっ!!
それは黒い疾風だった。
まるで黒い流星が飛び交うかの如く無数の黒い軌跡がミスリルゴーレムを襲う。
そしてその連打が重そうなミスリルゴーレムを天高く跳ね飛ばし最後にその胸に輝くクリスタルをつかみ取り砕く。
パキーンっ!
どだぁあああぁぁぁぁん……
とん。
真っ黒な黒髪をさらさらとなびかせ、短いスカートを翻しながらそのメイドさんは空から降り立つ。
右手の砕かれたクリスタルを手放し地面にパラパラと落としながらこちらに振り向く。
その瞳は真っ黒で白い肌に奇麗に映える。
美しい顔立ちの私たちと同じくらいの歳に見える少女はつまらなさそうに私たちに話しかけて来た。
「怪我は無いでいやがりますか?」
「え、あ、えーとケガは無いけど……」
一番近くにいたルラは呆然と彼女を見ている。
「ルラっ!」
私は慌ててルラの近くに行く。
「ふん、こんな所にエルフでいやがりますか? ん? そっちはユエバの町のエルフでいやがりますね?」
私がルラのもとに駆け付ける頃にはカリナさんたちもやって来ていた。
「まさかクロエ様が出て来るとは…… なんなんですこれは?」
「……身内の事情でいやがります」
クロエさんと呼ばれたその少女はさらにつまらなさそうな顔をしてカリナさんから顔を背ける。
「カリナ、こちらは?」
「ああ、トーイたちは初めてね。こちらはクロエ様。黒龍様の従者よ。ドラゴンニュートでいらっしゃるの」
「ドラゴンニュート!?」
カリナさんの説明にネッドさんが真っ先に驚きの声を上げる。
しかしドラゴンニュートって何?
「まさか実在していたとは…… 伝説ではジマの国の始祖がドラゴンニュートであったと聞き及んでいます。しかしこんな少女が?」
「そこの魔導士、外見だけで判断するのは無知の証拠でいやがります。見誤れば命を落とす事になるでいやがりますよ!」
ネッドさんがそう言うとこのクロエさんと言う人はいきなり私でもわかる程の殺気を放つ。
「すみません! 我が無知をお許しください!!」
流石に危険を感じてネッドさんはすぐに平謝りをする。
するとさっきまでの殺気はすぐに無くなり何事も無かったかのようにクロエさんはしている。
「それでクロエ様、あのミスリルゴーレムは一体……」
「身内の事情と言ったでいやがります。さっきので最後でいやがります、残骸は好きにしていいでいやがります」
そう言って踵を返して何処かへ行こうとする。
しかしその後姿は何となく苛立っている様だった。
「ドラゴンニュートだなんて、そんなすごい存在がいるんだ。まるでシェルさんみたいだね?」
「ルラっ!」
ぴくっ!?
ルラがそんな事を言うとクロエさんはその場で立ち止まりこちらを振り返る。
「そこのエルフ、今シェルと言いやがりましたか?」
「え? ああぁ、はい」
ルラがそれを聞くとクロエさんはこちらにずかずかとやって来て聞く。
「あのバカエルフは今どこにいやがりますか? それと一緒にいた少女は!?」
何となく鬼気迫る迫力でルラに詰め寄る。
それも鼻と鼻がくっつきそうな位に顔を近づけ聞いてくる。
「いやぁ、あたしも分からないです。あたしたちシェルさん掴んでたらこっちに飛ばされたみたいで」
流石にルラも苦笑いしながらそう言うとクロエさんは今度はこちらを見る。
「そっちのエルフ、見た所このエルフと同じ顔でいやがります。双子か何かでいやがりますか、お前も同じでいやがりますか?」
「えっ? ああ、はい、そうです。その子、ルラの姉のリルです」
「それであのバカエルフは何処へ行ったか知らないでいやがりますか?」
何なんだ、何なんだ!?
このクロエさんって人、やたらとシェルさんの行方を知りたがっている?
まさか、さっきのゴーレムみたいにシェルさんを!?
「あ、あのぉ~、一体全体シェルさんに何の用なんですか?」
「あのバカエルフが主様と一緒であるなら何故こちらの主様があんなに取り乱しているのか説明をさせるでいやがります。一体何が起こっているのか私も知りたいでいやがります!!」
えーと、なんかだいぶ込み入った話になりそうなわけ?
イライラと腕組みをしているクロエさんの前で私たちは苦笑をするしか無かったのだった。
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