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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第四章:帰還への旅
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4-15魔物たち

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


怪獣大戦争だぁ!(ルラ談)


 それは想定を超えていた。

 魔物たちは確かに何かに怯え、そしてそれから逃げるかのようにこちらに向かっていた。



「お、おい、マンティコアじゃねーか!!」


「こっちからはコカトリスが逃げて来ているぞ!?」



 既に何度か魔物と遭遇しているけど、そいつらは私たちを気にも留めないで素通りして逃げて行く。

 それもカリナさんたちから聞く限りかなりの強い魔物たちらしい。



「なんなの? こんな事初めてよ。こっちへ来て長いけど、こんな騒ぎは七百年前の『鋼鉄の鎧騎士』戦争以来よ!?」



 弓を構えて警戒はしているけどあまりの異様さにカリナさんは驚いている。

 そしてちょっかいを出さない限り魔物たちは逃げる事を優先して私たちを素通りしている。



「本来魔物たちは自分の縄張りを持ちそしてそこで生活をしている。それが縄張りを捨ててまで移動するとは…… この先に一体何が有ると言うのです?」


「それが分からねえぁから俺たちに依頼が来たんだろ? しかし、これってやっぱり迷宮の強い魔物が地上に出てきたって事かな? この感じ、ミノタウロスよりずっと格上としか思えんな……」


 ネッドさんとトーイさんはカリナさん同様に杖を構え、剣を抜いてはいるものの襲われる様子が無いので動きを止めている。



「行ったか…… 群れでは無いし個々は強くても町の防壁を崩す程では無いな。カリナどうする?」


「先に行きましょう。ここから迷宮までは歩いてもそれほど遠くはない。いずれその原因にぶち当たるわ……」


 カリナさんは更に緊張した表情でそう言い、矢を筒に戻す。

 そして私たちに振り返り言う。



「リル、ルラ。今回の相手は想像以上にヤバいかも。いい事、少しでも危ないと思ったら絶対に逃げなさい。分かった?」


「カリナさん…… 分かってます、大丈夫ですよ」



 私はそう答えながらルラの手をぎゅっと握る。

 もしもの時は私たちの秘密の力を知られてもカリナさんたちを助けなきゃいけない。


 その為のチートスキルだ。


 私たちは更に緊張をしながら先を進むのだった。



 * * * * *



 警戒をしながら翌日も先を進むと今度はほとんど魔物に出会わなくなった。



「どうやら逃げ遅れた魔物以外はみんないなくなっちまったようだな?」


「まったくだ、このイージム大陸で魔物に出会わなくて道を歩けるとはな」


「他の大陸ではこれが普通らしいですね?」


 

 前を歩くトーイさんやザラスさん、ネッドさんはそんな事を話しながら歩いている。

 確かに移動中に魔物に襲われないって言うのは楽でいいけど、本当にこのイージム大陸ってとんでもない所だ。



「にしても、静かすぎるわね…… 鳥や小動物の気配さえなくなっている」


 カリナさんは周りの様子をうかがっている。

 言われてみれば鳥や動物の気配がない。


「これってそれだけヤバいのがいるって事ですか?」


「分からないわ…… 千年前には『女神の杖』って言うアイテムのせいでこのイージム大陸全体に風の精霊が動きを封じられるって事もあったけど、今回のはそう言ったのとは違うわね……」


 カリナさんはそう言いながら道の先を歩いていたけどふいに止まり長い耳をぴくぴくさせる。



「トーイ、ザラス、ネッド! なにかいる!!」



 カリナさんが警告をしたと同時に向こうの森の方で爆発でもしたのではないかと言う程の爆炎が上がる。



 ぼぉおおおおぉぉぉんッ!!



「何あれ!?」


「ドラゴンでも出たか!?」


「あれが原因か!?」


「皆さん、注意してください! 行きましょう!!」



 カリナさんを先頭に皆さんも口々にそう言い走り始める。

 私やルラもそれに続き走り始めるのだった。   



 * * *



「こんな所にヒドラがいるだと!?」


「イージム大陸にヒドラだなんて……」


「ヒドラは本来は南にいるのですがあれだけの頭の数、かなりの年を取っている個体のようですね。強敵です、下手をすれば地竜にも匹敵しますよ!!」



 爆炎が上がったそこへ駆けつけると大きな体に何本もの頭を持つトカゲの様な化け物がいた。

 初めてこちらに飛ばされた時に出会った地竜ほどではないけど、それでも大きな体で揺らめく首から何度もある所へ向かって炎を吐き出している。



「問題はヒドラよりその向こうにいるやつよ…… 何あの銀色のゴーレムは!!」



 カリナさんはヒドラが攻撃しているその先を見ている。

 言われて私たちもそこを見ると身の丈四、五メートルくらいある銀色の石像みたいのがいた。


 そしてそれに気づいたネッドさんが驚きの声を上げる。



「まさか、あの色、そしてヒドラの炎をものともしないとは…… 間違いない、あれは大迷宮の地下深くを守るはずのミスリルゴーレム!! 太古の竜、黒龍の居城を守る守り人です!!」


「ミスリルゴーレム? なんでそんなものがここにいるのよ!? まさか黒龍様に何か有ったって言うの!?」



 カリナさんはネッドさんのその声に目を見開き聞き返す。

 しかしネッドさんは首を振り、そして言う。


「分かりません。何が起こっているのか全くと言って良いほどわかりません。ただ、本来ミスリルゴーレムは地下深くの黒龍の居城を守っているはず。それが地上に出て来ているとは…… あのミスリルゴーレムを倒すなど並みの魔物では歯もたたないでしょう……」


「するってぇと、あれが原因で魔物たちは縄張りから逃げ出しているってのか?」


「こりゃぁ、かなりの面倒事だな。しかしあのゴーレムなんでこっちに向かっているんだ?」


「ゴーレムは単純な命令しか聞けません。おそらく何らかの理由で地上に出て来て近くにいる者を排除するよう動いていたのでしょう。だからたまたまこちらにいた魔物に反応してユエバの町の方へ来たのでしょう……」


 ネッドさんのその推測に呼応するかのようにミスリルゴーレムはヒドラに襲いかかり、吐き出す炎をものともせずにヒドラの頭を数個潰してゆく。

 勿論ヒドラもそれに対抗して首を巻き付けたり至近距離から炎を吐き出したりしているけど全くと言って良いほど効いていない。



「うわぁ、あの怪獣の潰された頭が治っていくよ!!」


 怪物たちの戦いを見ていたルラが指さしそう言う。

 見れば確かに潰された頭が切り落とされ新しい頭が生えて来る。


「うわっ、きもっ!!」


 それを見て思わず私はそうつぶやいてしまう。



 だってしおしおに茶色くなった頭が切り落とされ、断面から新しい頭が生えるんだもん。

 目の前でそんなの見せられれば気持ち悪いって!



「駄目だな、ヒドラが押されている。本体である体が攻撃されているぞ!」


「参ったな、あんなのに勝てる自信ないぞ?」


「馬鹿言ってるんじゃないわよ、あんなのと一戦するつもりは無いからね? とにかく原因があのミスリルゴーレムならその事を町に伝えて対策を……」



 ばきっ!


 どぉおおおおぉぉん!!



 カリナさんがそんな事を話していたら殴り飛ばされたヒドラがこちらに飛んで来た。



「うわっ!」


「きゃぁッ!!」



 ヒドラが飛んで来て近くに転がるから砂埃や砂利が飛んでくる。



「ちっ! まずいぞ!!」


「ゴーレムに見つかったか!!」


「防御の魔法をかけます!!」


「牽制しながら引くわよ!! ゴーレムは脚が遅いはず、隙を作って離脱するわよ!!」


 

 ヒドラはどうやらさっきの一撃でもう動けない様だった。

 しかしその近くにいた私たちにミスリルゴーレムが気付き、こちらに向かってきている。



 私とルラは顔を見合わせ秘密の力を使う準備をするのだった。



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