4-8ユエバの町へ
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
お”姉ぢゃぁんっッ!!!!(ルラ談)
「そうするとあのシェルのせいでリルとルラはこんな所へ飛ばされたの?」
私はカリナさんたちに助けてもらって急ぎキャラバンが襲われた方へ向かっていた。
そしてその間に簡単に今までのいきさつを話し、向こうでイザンカから来ていたキャラバンがグリフォンの群れに襲われている事を伝え、ルラと合流する為に急いで向かっている。
カリナさんは走りながら嫌そうな顔をしている。
今回はだいぶ端折って「シェルさんが村に来てエルハイミさんが慌てたらここに飛
ばされた」と言ったら「それ以上言わなくてもいいわ…… ファイナス長老から行方不明の双子の姉妹の話は聞いてたけど、またシェルなのね……」とだけ言われた。
本当はもう少し訂正するべきだったけど、今は急がなければならない。
「こっちです!」
ルラの事だから心配はないと思うけど、キャラバンの商隊の人や護衛の人は何人か私同様連れ去られてしまった。
ネコルさんたちも散り散りに逃げ出したし、残っている人はいないと思うけど……
「見えた! あれね!?」
そんなこと思っている私にカリナさんは弓を構えてその場で止まる。
そして仲間の人たちに警戒するように言う。
「静かすぎる、グリフォンの群れはもういなくなったの?」
「いや、何だこの殺気…… ものすごいプレッシャーだ……」
トーイさんは私たちに追い付き用心深く周りの様子をうかがう。
ザラスさんもネッドさんも同じく緊張した顔で周りの様子に注意を払う。
と、カリナさんは正面に向かって驚きの声を上げる。
「何なの? これって怒りの精霊が踊りまくっている? まさか、狂戦士バーサーカー!?」
カリナさんはそう言ってその先を見ると一人のエルフの少女が血まみれで何かを引きずってこちらに歩いてくる。
私はそれを見て思わず走り出す。
「ルラっ!」
「えっ? お、お姉ちゃん!?」
それは間違いなくルラだった。
私は汚れるのも気にせず血だらけのルラに抱き着く。
「ルラ! 何処か怪我したの!? 大丈夫!!!?」
「お、お姉ちゃんこそ大丈夫なの?」
瞳をぱちくりしてルラは私を見る。
そして手に持っていたグリフォンの死骸を離しおずおずと私の背に手を回し大泣きを始める。
「ふぇえええええぇぇぇぇんっ! よがったぁーっ、お姉ちゃんが無事でよがっだぁーっッ!!!!」
「え、えっ? ル、ルラ!?」
そのあまりの乱れっぷりに驚く私だったのだ。
* * * * *
「ふーん、あなたがルラなのね? 私はカリナ、渡りよ。どう落ち着いた?」
ひとしきり大声で泣いていたルラはどうにか落ち着きを取り戻し、血と涙で汚れた顔を私に拭いてもらい何とか泣き止んだ。
正直びっくりした。
ずっとルラとは一緒に居たけどここまで感情むき出しで取り乱したのは初めて見る。
「ひっく、はい、あたしルラです」
「ルラ、もう大丈夫だから。それよりキャラバンの皆さんは?」
ずっと私に抱き着いているルラの顔とかを更に手拭いで拭いて私は聞く。
するとルラは首を横に振って小さな声で言う。
「分かんない。お姉ちゃんを取り戻したかったから、それに夢中で……」
どうやら無我夢中だったので周りの様子は分からない様だった。
「しかし、これは一体……」
トーイさんたちは襲われたキャラバンの近くまで行って絶句している。
そこには何十と言うグリフォンの死骸が転がっていた。
それはどれもこれも撲殺されたようなモノから酷いモノは何かもの凄い力で殴られ体が飛散したものまで。
「さっきの殺気はまさかこのエルフの嬢ちゃんからか?」
「まさか、あれほどの殺気なんて俺は初めて受けたぞ!?」
トーイさんとザラスさんはグリフォンの死骸を見ながら首をかしげてルラを見る。
ルラは私に体の汚れを拭かれている。
「あの怒りの精霊たちが一瞬でいなくなった。狂戦士と言う訳では無さそうね? ルラ、もしかしてこれってあなたがやったの?」
カリナさんは私たちとグリフォンの死骸を見比べながら聞いてくる。
するとルラは小さな声で答える。
「護衛の人たちも戦っていたけど、良く分かんない。あたしはお姉ちゃんを追いかけるのに夢中で……」
それを聞いたカリナさんはため息をついてからネッドさんを呼ぶ。
そして私たちに【浄化魔法】をかけるように言う。
「そうですね、このままでは可哀そうですね。【浄化魔法】」
ネッドさんの【浄化魔法】がかかって私たちの身体の汚れが一瞬で消える。
それだけでは無く着ている服も洗いたてのような感じだし、肌の感じもお風呂に入ったばかりのようにサラサラになる。
「うわっ凄い!」
「でしょう? ネッドにこの浄化魔法だけは教えてもらいたいくらいよ、特に女の身としてはね」
そう言ってカリナさんはにっこりと洗う。
私は奇麗になった自分とルラを見てからカリナさんに言う。
「本当にありがとうございます。いろいろと助かりました」
「いいのいいの、でもトランはどうしたのよ? あなたたちの保護者になってたはずなんじゃ……」
カリナさんにそう聞かれ私は一瞬息を飲む。
でも伝えなければならない。
多分カリナさんは渡りのエルフだから風の精霊で村のみんなにも連絡が取れるはず。
私は震える唇を開き、その事実を言う。
「トランさんは、トランさんは死にました…… 迷宮の奥深くで見つけた隠し扉の先にいた古代の守護者にやられて……」
「トランが? そう…… 残念だわ……」
そう言いながらカリナさんは目をつぶりトランさんの冥福を祈る。
しばしそうしていると向こうからトーイさんたちが戻って来た。
「カリナ、だめだな近くにはもうこの商隊の連中はいない様だ。かなりの人数がやられている」
私たちが話している間にトーイさんたちはキャラバンの様子を見て来てくれてたようだ。
そしてどのキャラバンか確認をし終え商隊の紋章の入った旗を持ってきた。
「ずっとここにいる訳にもいかないだろう。ユエバの町に戻ろう。このキャラバンの事も伝えなければならないしな」
そう言ってトーイさんはその旗をしまう。
私たちはカリナさんたちとキャラバンの次の目的地だったユエバの町に向かう事になるのだった。
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