4-6街道の魔物
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
え”っ!?
まじっ!!!?(リル談)
キャラバンの進行は途中で魔物がしょっちゅう出たけど順調に進んでいた。
「ユエバの町?」
「そうだよ、冒険者の街とも呼ばれていてね、近くにはあの大迷宮が有るんだよ」
今商隊が目指しているのは途中にある町、ユエバの町。
目的のドドス共和国に行く間にはいくつかの町や村にも立ち寄る予定なんだそうだ。
私たちはネコルさんにそう教えられる。
するとルラは興味を持って聞く。
「冒険者って、もしかしてレッドゲイルよりいろいろな人がいるの?」
「そうだね、あそこは大迷宮があるおかげで常に冒険者が集まっているからね、もしかしたらルラちゃんたちと同じエルフ族の人もいるかもしれんよ」
ネコルさんはそう言って笑う。
しかしもし本当にエルフの人がいるならば助かった。
私たちの事を村に伝えてもらえるし、トランさんの事も……
私がそんな事を思っているとキャラバンの前の方が騒がしくなる。
また魔物が出たのかと思っていたらなんかいつもと違う?
「まずい! グリフォンの群れが出た!! あいつら繁殖期で群れごと動いているみたいだ!!」
荷車を動かしていた商隊の人が私たちに何が起こったか伝えて来てくれた。
「グリフォン?」
「何だって!? グリフォンの群れだって!!!?」
聞いた事の無い魔物の名前なので首をかしげているとネコルさんが大慌てになる。
それどころか同席していた皆さんも同じだった。
「ネコルさん、一体どうしたって言うんですか?」
「リルちゃん、グリフォンが群れが出たなんてここ数十年聞いた事が無い。もしそれが本当ならこのキャラバンだって危ないぞ! グリフォンは一体でもかなり手強んだ!!」
ネコルさん他、皆さん自分の荷物を掻き寄せ背中に背負う。
まるで何時でも逃げ出せるかの如く。
そんな様子を見てルラは私に言う。
「お姉ちゃん!」
「まってルラ、もう少し様子を見よう」
ルラは立ち上がり飛び出そうとするのを私は止める。
もしここでルラが出て行って「最強」のスキルを使えばグリフォンを追い払えるかもしれないけど、少人数の時とは違う。
私とルラだけなら何とでもなるだろうけど五十人近い人たちを守りながらだなんてとても出来る事ではない。
そう思って様子を見ていると騒ぎは更に大きく成ってゆく。
するとネコルさんは私たちに向かって言う。
「リルちゃん、ルラちゃん悪い事は言わない。もし危ないと判断したらキャラバンから逃げ出すんだ。グリフォンは肉食だから下手をすると食べられてしまうぞ!!」
ネコルさんは言いながら荷車の隙間から外の様子を見る。
そして他の皆さんも同様にその様子を固唾を飲んで見守っている。
しかし、しばらくすると皆さん青ざめて騒ぎ始める。
「まずいぞ! 護衛の人間が何人かやられた!!」
「おい、商隊も防御の陣形を崩され始めたぞ!!」
「やばい、俺はキャラバンから離れるからな!!」
口々にそう言いながら荷車から飛び出し始めると、商隊の人たちも大声で「逃げろっ!!」と伝えて来る。
「お姉ちゃん!!」
「うん、ルラ行くよ!」
私とルラは荷車から飛び出し、守りの陣形が崩れ始めたその先を見る。
すると上半身が鷲で下半身がライオンみたいな大きな化け物が何匹も護衛の人たちと戦っていた。
「あたしは『最強』!」
ルラはすぐにチートスキル「最強」を使って今まさにその鷲の爪で引き裂かれそうになっている護衛の人の前に飛び出しグリフォンを殴る。
ばきっ!
『ぴぎぃいいいいぃぃぃっ!?』
ルラの一撃に大きな巨体を吹き飛ばされ向こうの林に飛んでい行く化け物。
「大丈夫ですか!?」
「あ、え? グリフォンは!?」
私も慌ててその人の所まで行って助け起こすと護衛の人は周りをきょろきょろ見てぎょっとする。
あの化け物、グリフォンが更に空から降りてきたからだ。
「ひぃいいいぃぃっ! あんなにいやがる、だめだ、逃げろっ!!」
「え、あっ!?」
護衛の人はそう悲鳴を上げて私を残して逃げ出すがちょうど空から飛んで来たグリフォンに捕まれ空高く飛び去ってしまった。
「このぉっ!!」
ばきっ!
どかっ!!
ルラは並寄るグリフォンを次々に殴り飛ばしているけど流石に数が多い。
そして護衛の人たちは悲鳴を上げて逃げ出し始めている。
勿論商隊の人たちも。
ひひぃ~んっ!
馬の悲鳴まで聞こえて来てそちらを見ると馬がグリフォンに捕まれ空高く飛び去っていた。
既に護衛の人も商隊の人も、ネコルさんたちも逃げ出している。
そんな中ルラがグリフォンと戦っているからみんな散り散りに逃げられる。
中には不幸にもグリフォンに捕まってしまう人もいるけど、もうこのキャラバンはだめだ。
「ルラ、もういい! 私たちも逃げよう!! みんなもう逃げだしているよ!!」
「でもまだ襲われている人もいるよ!」
ばきっ!
ルラはそう言って逃げ遅れている人を助けている。
と、そんな様子を見ている私の上に黒い影がのしかかてくる。
「え!?」
驚き見上げればいつの間にか私の真上に一匹のグリフォンが空から舞い降りて来ていた。
「お姉ちゃん!!」
「うわっ、きゃぁああああああぁぁぁぁっ!!」
ルラが叫んでこちらに来ようとしても他のグリフォンが邪魔をして近寄れない。
私は空から舞い降りて来たグリフォンにあっけなく捕まり一気に上空へと飛び上がる。
「お姉ちゃん!!!!」
「ルラぁっ!!」
ルラの叫び声空しく私はグリフォンに捕まって空高く飛んでゆくのだった。
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