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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十六章:破滅の妖精たち
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16-19先生

女神エルハイミにより正気を取り戻したエルフの双子姉妹リルとルラ。

秘密結社ジュメルの野望に操られ加担していたが、女神によりその正気を取り戻す。

そして自分の犯した罪に後悔しながらも前に進もうとするリルとルラ。

果たして彼女らはどうなるのか?


そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


 私たちは先生と呼ばれているアインさんに会いに行く。



「この先が学校ですじゃ。この学校が始まってかれこれ七百年くらいは経つと思われますのぉ」


 ラディンさんに連れられたそこは広場から少し離れた山が切り崩された場所にあった。

 いや、山が切り崩されたと言うか、すっぱりなくなっていると言うか。


 ちょうど村を見下ろすような場所にあるここはやっぱり断崖絶壁に面した造り。

 正直、ここから落ちたら命は無いような場所に思う。


 と、崖を上るように前を歩く獣人の少年が足を滑らせる。



「あっ!!」



 私が声を上げた瞬間彼は真っ逆さまに崖の下へと落ちて行く。



「ラディンさん! 子供が!!」


「ああ、足元をちゃんと見て無かったじのゃなぁ。ま、ここでは日常茶飯事ですじゃ」



 いやいやい、いくらこんな場所でもこれが日常茶飯事って!!



「助けに行かなきゃ!!」



「お姉ちゃん、あの子上って来たよ?」


「へっ?」


 ルラに言われそっちを見るとその男の子は平然と崖を上って来る。

 しかもロッククライミングみたいに足場を見つけるとそこから上に飛び上がるかのように!!



「たいていの子は谷底に落ちる前に何らかの方法で崖に足場や突起を見つけああやって上って来るのですじゃ。稀に谷底に落ちてもかすり傷程度で済みますから、軽く手当てしてまた昇ってきますので心配ありませんのじゃ」


「い、いや、この崖どう見ても谷底が見えないんですけど……」


 下を見るとびゅっと風が吹き上げて来る。

 スカートが翻っちゃうのを片手で押さえながら足場の少ないこの道を歩くのはちょっと怖い。

 いくらエルフ族は身軽とはいっても流石にこの高さから落ちたら死んじゃう。


「もうじき着きますじゃ」


 しかしそんな私たちにラディンさんは何事もないかったように振り返って言うのだった。



 * * *



 そこはそこそこの広さがある学校だった。

 学校と言うか、何処かの田舎の分校よろしく、小さい石造りの校舎があってその奥に住居らしい家がある。

 校庭と言うか、広場みたいな場所はあるけど、山を切り崩したように意外と広い。

 その先にはなだらかになっていて、山頂のような場所に繋がっていた。



「今日の授業は終わりのようですな。ちょうどいい、アイン先生は多分あちらですな」


 ラディンさんはそう言って住居の方へ向かう。

 と、住居の前でさっきの子供とやや細みながらもしっかりと筋肉のついた男性が上半身裸で薪を割っていた。



「アイン先生、お久しぶりです。今大丈夫ですかな?」


「ああ、ラディン。よく来たな。ちょっと待っていてくれ。パルム、これをペグに渡してくれ」


「うん、分かった先生。それじゃ俺行くね!」


「ああ、気を付けて帰るんだぞ」


 そう言って先程の少年はアインさんに何か渡されたものを背中に背負って先程来た道を駆けて行く。

 ちらっと見た感じまったくケガもなく平気の様だった。



「待たせたな、ラディン。ん? そちらは??」


「あ、私リルと言います。こっちは双子の妹ルラです」


「こんにちは~! ルラだよ!!」


「エルフの客人とはな、俺はアイン。この村で指導をしている者だ」


 そう言ってアインさんは手を差し出す。

 私はその手を握り返し握手する。

 しかしルラは握手した瞬間顔がこわばる。


「アインさんって、強いよね?」


「ん? まぁそこそこにはな。だがこの村には俺以上に強いやつは沢山いるぞ」


 そう言って優しく笑う。

 ルラは手を放してから私を見て言う。



「お姉ちゃん、この村ってほんとおかしいよね? あたしも分かっていたけどみんなものすごく強いし、なんか変なんだよね」


「変?」



 ルラのその言葉に私は首をかしげる。

 変と言うか、凄い人が多くは感じる。

 ラディンさんの奥さんだって無詠唱で魔法使ってたし、さっきの少年だって。



「それで、どんな要件だ?」


 アインさんはラディンさんに向かって聞く。

 するとラディンさんは私たちに視線を向けて言う。


「いえね、シェル様からこちらのリル様とルラ様がしばらくこの村に滞在するので面倒を見るように言われましたのですじゃ。それでアイン先生の事を話したら是非とも会ってみたいと」


「そうか……」


 アインさんは私たちを見てちょっと目線を泳がす。



「あの、アインさんってシャルさんを知ってますよね?」



 私がそう言うとアインさんはびくっとなって額に脂汗を溜め私から視線を外す。

 これって確信犯だな。


「シャルさん、アインさんが迎えに来てくれる事ずっと待ってますよ」


「あー、その、なんだ。俺にはまだ使命が残っていてだなぁ……」


 更に額に脂汗を流す。


「でも、もう七百年も待たせてるんですよね?」


「うっ……」


 アインさんはさらにビクッとなり完全に顔を背ける。



「アイン先生?」


「いや、ラディンにも以前話をしただろう、シェル様の妹君の事だ……」


「ああ、エルフの村に行くには女神様への恩返しが終わらないといけないと言うあれですな」


 ラディンさんに言われアインさんは渋々そう言う。

 しかし、女神様への恩返しとは?


「あの、エルハイミさんへの恩返しって?」


「あー、まあその、なんだ。俺もこっちの世界であの方に助けられたんでな。この世界でせめてもの罪滅ぼしだ。俺も望む温和で平穏な日々の為にな」


 そう言うアインさんお表情はなんか優しかった。

 うーん、まあこう言う顔されたらシャルさんの事問い詰められそうにないなぁ。


「シャルさんアインさんが迎えに来るまで絶対にここへ来ないって言ったよ~。あ、でもアインさんの風のメッセンジャー来る時は凄く嬉しそうだった。でもシャルさんの事全然言ってくれてないから少し怒ってたよ~」


 私はそう思っているとルラがシャルさんの事暴露した。


「う、うむ…… 分かってはいる。だからさっきっ届け物を頼んで持って行ってもらった。シャルと俺とが出会ってちょうど七百年目なのでな……」


 そう言ってさっきの少年が走って行った方向を見る。

 うーん、何だちゃんとシャルさんの事も気に掛けていたんだ。



「そ、それでリルとルラは俺に何を聞きたいんだ?」


「ああ、そうだった。じつは私の親友をこのジルの村に転生する事を進められたんです」



「ほう」




 私のその言葉にアインさんは目を細めるのだった。



面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


*すみませんが、今後当分の間は土、日曜日の更新は停止させていただきます。

うちの嫁さんの父親が病院に行く事となり、介護等で忙しくなり小説を書いている時間が取れそうにありませんので。

ご理解の程、どうぞよろしくお願い致します。

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