16-10強きモノ
心を捕らわれ悪の色の染められた双子のエルフ、リルとルラ。
世界を破滅に導く秘密結社ジュメルに操られ、協力する二人は世界を滅ぼす事が出来るチートスキルを持つ。
この世界の行方は?
二人はこのまま悪の色に染まってしまうのか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
「赤竜を『消し去る』!」
私は手をかざし、目の前の赤竜を消し去る為にスキルを使う。
既に認定してそして力ある言葉も使った。
あの駄女神が私にくれたチートスキル「消し去る」は何でも消し去る事が出来る。
そう、たとえ太古の女神殺しの竜でさえも。
「くっ、これは!?」
「な、なんで消えないの!?」
しかしおかしい、目の前の赤竜はすぐすぐ消え去る事もなくその姿がうっすらと薄くなるだけだった。
でも流石にその場で膝をつく。
「くぅ、あたしの存在が消えかかっている。なにこれは!?」
「リル、どう言う事これは!?」
「分からない、私は確かにスキルを使った。現に赤竜は消えかかっているわ!」
そう私のスキルは発動している。
しかし目の前の赤竜を完全に消し去ることが出来ていない。
しかもその姿が薄く成ったり元の状態に戻ったりを繰り返している。
「くぅううううううぅぅぅぅっ! 助けてエルハイミ母さん!!」
しかしここで赤竜が叫ぶかのようにそう言う。
膝を落し、そしてとうとう四つん這いになって苦しんでいる。
と、それは不意に現れた。
「まったく、忙しいというのにどうしたというのですのセキ?」
「「「!?」」」
聞こえてきた声は間違いが無い。
それはこの世界の女神。
そう、エルハイミさんだった!!
「あら? セキがこんなに苦戦するなんて…… って、あなたたちリルにルラ!?」
「ふむ、セキが泣きごとを言っていると言うからついて来てみれば」
「あら、本当ですわ。あなたたちはリルとルラでは無いですの」
振り返ればそこにはエルハイミさんとシェルさん、そして黒龍のコクさんまでいた。
「エルハイミ母さん、あたしが消えちゃう! 何とかして!!」
「はいはいですわ。あら、本当ですわねこちらの世界にいるセキの部分が消えかかっていますわ。危ない所でしたわね、異空間にひっかっかっていなければ全部消えている所ですわ。とりあえずセキを再構築してですわ」
そう言ってエルハイミさんは手を振ると苦しんでいた赤竜が元の姿に戻ってその場に座り込む。
「はぁ~、危なかった。あたしがこっちの世界と異空間の間に挟まっていなければ全部持っていかれる所だった」
赤竜は完全に元の姿に戻っていた。
「な、なによそれ!? リルの力が効かない!?」
額の汗をぬぐいながらそう言う赤竜にアリーリヤは驚愕する。
それもそのはず、「あのお方」の力を受けている私のスキルが効かなかったのだから。
「そんな、私のスキルが効かないだなんて……」
「いやいや効いてたわよ。正直こっちの世界のあたしは消えかかってたんだから。あっちの異空間のあたしが無かったらあんたのスキルで消えてたわよ」
赤竜はそう言いながら私を見上げる。
「くそっ! リル女神を、あいつを消し去るのよ!!」
「そ、そうだ! エルハイミさんの力を『消し去る』!!」
アリーリヤに言われて世界の矛盾の根幹である女神エルハイミさんの力を消し去る。
するとエルハイミさんは私のチートスキルの効果について気付いたようだ。
「あら? 凄いですわ、私の力を消し去るだなんてですわ。でも、それだと女神のお仕事が続けられないので困りますわね。仕方ありませんわ、お力を借りますわ」
エルハイミさんはそう言って目をいったん閉じてそれから瞳を開くと碧眼の瞳が金色に輝いていた。
「同調!? なんで今更??」
それはユカ父さんに習った「同調」に似ていた。
しかし次の瞬間まるで防風でも吹き荒れるかのようにエルハイミさんから存在の力が噴き出る。
思わず手で顔を隠しその存在の暴風が吹き去るのを待っていると口調の変わったエルハイミさんが話始めた。
『ふむ、端末に言われ来てみればなんだこれは? ああ、お前は……その魂の色はそうか、あの娘か? どうだこの世界は楽しんでいるか? お前たちの行動は我を十分に楽しませてくれているがな、はははははっ!』
「な、なに? エルハイミさんが……」
「くっ、なんでリルのスキルが女神にも効かないのよ!?」
圧倒的な存在感を示すエルハイミさんだったけど、何か違う。
そう、これは以前ルラの中に現れたあの駄女神に似ていた。
しかし口調が違う……
『さて、この端末に請われて力を授けるがお前たちはどうだ? 楽しんでいるか?』
「エル……ハイミ……さんじゃなくてあなた駄女神?」
『ほう、そう言えばお前たちに会った時はこの女神の姿を借りていたのだな。そうだ、お前の言う駄女神だよ、はははははっ!』
口調も違えばなんか性格も違う。
これが「あのお方」とか言うやつの本性なのだろうか?
私は駄女神にである「あのお方」に言う。
「だったらこの世界を変えて! エルハイミさんの我が儘だらけでみんな困ってるのよ!?」
『ふむ、この端末がそんな事をしているのか? しかしこの世界はこの端末に任せている。我はそれを見るだけだ。後の事はこの端末と話すが良い』
「そんな!」
そう言うとエルハイミさんから圧倒的な存在感が消える。
そして瞳の色がまた碧眼へと変わる。
「ふう、流石に『あのお方』のお力ですわ。リルのスキルは私の女神の力を消し去ってしまいましたわ。でも私は『あのお方』のこの世界での端末ですのでこの世界を管理する為にまたお力をいただきましたわ。残念ですがリルのそのスキルはもう私には効きませんわよ?」
「なっ!?」
エルハイミさんはまたいつも通りの口調に戻り、どうやらエルハイミさん自身に戻ったようだ。
あの駄女神、私の願いを聞き入れず消えてしまった。
残ったエルハイミさんと話をしろだなんて。
「何なのよ、何なのよ! 私には何も力をくれない癖に、何なのよっ!!」
アリーリヤはそう言ってエルハイミさんに向かって魔法を唱え攻撃をする。
それは炎の矢であったり、氷の矢であったりとできる魔法を全て叩き込んでいる。
ぼっ!
ぼしゅぼしゅぼしゅっ!
きんっ!
ばしゅばしゅばしゅっ!
しかし全ての魔法はエルハイミさんには届かない。
「え~と、あなたはどなたですの? 何故私を攻撃するのですの?」
「黙れ女神! 貴様のせいで私は、私はこちらの世界に転生してもずっとずっと不幸のままだったんだ! どんなに努力してもどんなに頑張ってもお前に会う事さえできず、毎回不幸なまま死んでいった! だからお前を倒す! 私の幸せの為、お前を倒すんだ!!」
「アリーリヤ、いえ、静香もう!!」
まるで修羅のようにエルハイミさんに攻撃をかけるアリーリヤに私は抱き着きやめさせようとする。
しかし私は鎖を握られ命じられる。
がしっ
じゃらっ
「リル、あいつを消し去れ!」
「静香…… エルハイミさんを『消し去る』!」
アリーリヤに言われ私はチートスキルを発動させるも、認証で阻害されてしまう。
それは何度やっても同じでエルハイミさんに対してだけは私のスキルが使えない。
「何やってるのよ、愛結葉!!」
「ダメ、静香! 私のスキルが通用しないの!!」
「くっそぁおおおおおおおおおぉぉぉぉっ! 目の前に憎き女神がいると言うのにっ!!」
アリーリヤは私の鎖を手放し、素手でエルハイミさんに飛び掛かる。
「死ねぇっ! 女神ぃっ!」
「させません、お母様には指一本触れさせません」
「あたしのエルハイミに何するのよっ!!」
ばきっ!
ばたっ!!
しかしそこにコクさんとシェルさんが割って入ってアリーリヤを弾き飛ばす。
アリーリヤは簡単に弾かれその場で倒れる。
「えっと、まずはお話をしましょうですわ。あなたは誰ですの? それにこの状況は一体どうなっているのですの?」
エルハイミさんは相変わらず自分のペースでそんな事を言い出すのだった。
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うちの嫁さんの父親が病院に行く事となり、介護等で忙しくなり小説を書いている時間が取れそうにありませんので。
ご理解の程、どうぞよろしくお願い致します。




