16-9赤竜のセキ
心を捕らわれ悪の色の染められた双子のエルフ、リルとルラ。
世界を破滅に導く秘密結社ジュメルに操られ、協力する二人は世界を滅ぼす事が出来るチートスキルを持つ。
この世界の行方は?
二人はこのまま悪の色に染まってしまうのか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
神殿の入り口の破壊された扉から真っ赤な長髪にこめかみの上に二つづつトゲのような癖っ毛を生やし、うらやましいくらいの大きな胸を揺らしたどことなくエルハイミさんに似ている凄い美女が出て来た。
しかし彼女の頭上には二本の角が生え、腰の後ろにはどうやら爬虫類のような尻尾が見え隠れしている。
「あなたが赤竜ね? 初めまして私は秘密結社ジュメルの七大使徒の一人、アリーリヤよ。 残念ながらあなたにはここで死んでもらうわ、さようなら。ルラ!」
「あたしは『最強』! はぁっ!!」
しゅっ!
すっ……
「えっ!?」
「うーん、なんかこのエルフ私より強いな? しかもエルハイミ母さんみたいな感じがする。でもまだまだ若いわね?」
ぱんっ!
どガーンっ!!
あり得ない事だった。
ルラがチートスキル「最強」を使って赤竜とされるこの女性に拳を突き立てたのにほとんど薄皮一枚で避けられそこへカウンターのような平手が出て来てルラを吹き飛ばす。
「なっ!? ルラ、何やってるのよ!! くっ、【絶対防壁】!!」
がんっ!
アリーリヤはそう言って絶対防壁を展開展開する。
それと同時に赤竜の拳が絶対防壁にぶつかるも、アリーリヤは絶対防壁ごと吹き飛ばされる。
「アリーリヤ!!」
「ふん、手加減はしてやったから帰る事ね。そうすれば見逃してあげる」
赤竜はそう言ってニヤリと笑ってこちらを見る。
私はすぐにアリーリヤに駆け寄って助け起こす。
「げほげほ、【回復魔法】」
「アリーリヤ、大丈夫?」
私がアリーリヤを助け起こしているとあちらに吹き飛ばされたルラもやって来る。
「つぅ~、流石赤竜。でも次はこうはいかないよ! あたしは『最強』!!」
ルラはそう言って再びスキルを使って赤竜に飛び込んで行く。
「ふむ、これだけの力。そうするとあなたたちがシェルたちが言っていた双子のエルフかな? でもなんでジュメルなんかに手を貸してるの? っと、甘いわね。力もスピードも私より上なのになってないわね」
ぱんぱん
スルリ
ボンっ!!
「ぐふっ!」
赤竜はそんな事を言いながらやはり紙一重でルラの拳を避けてルラの腕をぱんぱんと組手をする如く弾きながらするりと懐に入って来て掌底を打ち込む。
ルラはそれをもろに喰らってしまい、また吹き飛ばされる。
「はぁはぁ、何なの? ルラのスキルは赤竜を越えてるはずなのに!」
アリーリヤはそう言って赤竜を睨む。
確かにおかしい、ルラの力は対象相手に対して必ず少し上を行くはず。
だったら今は対象相手が赤竜なのだからそれよりは強いはず。
なのにルラは二度も赤竜に弾き飛ばされている。
赤竜は何歩か神殿から歩み出て止まる。
「さて、あたしは朝ごはんがまだなんで終わりにしない? お腹すいて来たから今引き上げるなら見逃すわよ?」
そう、なんて事無い日常会話でもするように言う。
が、その瞬間上空から影が降って来る。
「やっちゃいなさいヤツメウナギ女!」
ぐわっ!
「はぁ? なに、あんたまだ生きてたの?」
漸、漸っ!
がきーんっ!!
「あら? 前より強いじゃない?」
イリカに命令されて赤竜を襲ったヤツメウナギ女さんの爪を同じく伸ばした爪で受け止める赤竜。
しかも身長の三倍以上はあるだろうヤツメウナギ女さんを微動だにせずに赤竜は受け止めている。
「でも女神殺しの私には効かないわよ!! 【煉獄相竜牙】!」
赤竜がそう言った瞬間、赤竜の爪から炎が燃え上がる。
そしてその炎は一気に燃え広がりヤツメウナギ女さんを炎に包む。
『ぐぅぎゃぁああああぁぁぁぁっ!!』
「ヤツメウナギ女さん!!」
炎に包まれたヤツメウナギ女さんは炎に包まれ地面を苦しそうにのたうち回っていたが、イリカの魔法でもその炎は消す事が出来ず、やがて動かなくなってしまった。
「なんてやつ……」
「ふう、これで分かったでしょう? まだ続ける?」
アリーリヤがそう唸ると赤竜は涼しげにそう言う。
この赤竜、黒龍のコクさんより強い?
「くっそぉ~、なんであたしの拳が届かないんだよ!」
「あら、手加減はしたけどあれを喰らってまだ立てるの?」
ルラも復活してこちらにまた来る。
そして赤竜と対峙してにらみつける。
「あたしは『最強』なんだ、なのになんであたしの拳が届かないの!?」
「若いわねぇ~、あんたいくつ? 外に出ているエルフだから二百歳は超えてるだろうけど……いや、もっと若く見えるわね?」
「あたしは十七だよっ!」
ばっ!
ぱしっ、くるり、ひょい!
「わっ!」
ルラは言いながら蹴りを入れるも赤竜はそれをまたも手でぱしっといなしながらルラの体勢を崩し、足を払う。
ルラはそれに簡単に足元をすくわれて宙に浮く。
「力とスピードが上でも経験が足らなすぎる! そんなのではあたしは倒せないよ、お嬢ちゃん!!」
どガーンっ!!
「ぶふっ!!」
宙に浮いたルラは防御をしようとしたもののくるりと後ろを向いた赤竜の尻尾が別の角度から襲いもろにそれを喰らう。
そして地面にたたきつけられ大地をへこませて静かになってしまう。
「ルラっ!」
「嘘でしょ? ルラが赤竜にやられた?」
ルラは赤竜に踏みつけられたまま動かない。
「ま、軽い脳震盪でも受けたんでしょ? あたしの尻尾を喰らっても傷一つないだなんてやっぱこの子凄いわよ? 普通なら叩かれた瞬間に身体が吹っ飛び四散するのにね」
赤竜はそう言って私たちを見てニヤリと笑う。
ルラもヤツメウナギ女さんもこの赤竜に歯が立たない?
そんな!
「リル、私が隙を作るわ。だからあいつをあなたの力で……」
「アリーリヤ……」
信じられなかったけど、今目の前にいる赤竜は今まで出会った中で確実に一番強い。
こうなれば後は私のチートスキル「消し去る」で赤竜自体を消し去ってしまうしかない。
「ふう、赤竜がここまでとは思わなかったわ。そう言えばまだ名前を聞いてなかったわね?」
「あら、そうねあたしはまだ名乗ってなかったっけ、あたしはセキ。赤竜のセキよ!」
「そう、ならばその名前は我らジュメルが永遠に刻んでおいてあげましょう、素晴らしく強かった竜としてね! 喰らえ、【竜切断破】!!」
アリーリヤは「賢者の石」を光らせ魔法を放つ。
「あら凄いじゃないの? その魔法使える人なんてあたし数えるくらいしか見て無いわよ? でもあたしには効かないわ!!」
そう言ってアリーリヤが放った光る刃を赤竜は両方の爪を伸ばし炎を上げながら受け止める。
ギャリギャリ!
ばきんっ!
ぱぁっ!!
受け止めたその光る刃をその爪で粉々にして霧散させる。
そしてふっと笑ってアリーリヤに迫る。
「赤竜を『消し去る』!!」
だがここで私のチートスキルが発動をするのだった。
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うちの嫁さんの父親が病院に行く事となり、介護等で忙しくなり小説を書いている時間が取れそうにありませんので。
ご理解の程、どうぞよろしくお願い致します。




